積雪期バリエーション@西穂高岳西尾根
積雪期バリエーション@西穂高岳西尾根
日時:2019年2月1日(金)夜発~3日(日)
メンバー:K川 Sモア Y崎 他1
2日:06:58新穂高温泉バス停-08:19穂高平小屋08:24-11:40.1946 11:50-16:32 2400m宿泊地C1
3日:04:48C1-05:40第1岩峰06:20-07:50ジャンクションピーク08:00-08:50第2岩峰-09:54西穂高岳10:14-10:55ピラミッドピーク-11:19西穂独標-12:01西穂山荘12:29-13:19西穂高口
ルート概要
取付きは地形図で「穂高平」の文字の東(右)ある尾根
.2343のコルと2400m付近のコルは4-5テントが数張張れる。
樹林外は基本的には急斜やアップダウンのある雪稜ルートで2箇所岩峰が現れる。
今回は新雪のラッセルだったため雪稜部分に困難さはなかったが、滑落すれば1000m以上落ちるところもあり、春時期の固い雪やアイゼン団子になる雪質だと難易度は上がる。
第一岩峰(2450m付近)は北側(左手)にトラバースで回り込みルンゼを30mほど直登し尾根上へ出る。
ルンゼ部分でザイル使用。残置ロープもあり灌木の手がかりも豊富。確保支点も灌木。
第二岩峰(2740m付近)
ピークへと続くの急斜の出だし。
岩峰の南側(左手)に回り込んで基部に沿ってトラバースし、雪混じりの10m ほどの浅いルンゼを登る。基本的にホールドスタンス豊富だが最後が立っていたため、念のためシュリンゲで確保しだ。支点はピナクル。メンバーや雪の付き具合ではザイルが必要。
ピーク直下の岩稜(2850m付近)
第二岩峰と似た感じで、岩峰の南側(左手)に回り込んでルンゼを登る。
回り込むところがちょっといやらしいくらいで第二岩峰と比べて難しさもない。残置ロープもある。
取り付きに支点があったので状況によってはザイルを出すことがあるのかもしれない。
足元はスノーシュー&ワカンを使用、新雪が50cmくらいあり特に樹林内の急斜はラッセルに苦労したが、雪が締まっていたら急斜はツボ足のほうが楽かもしれない。
西穂高岳西尾根を企画するのは今回が3度目。去年一昨年は天気が悪く流れてしまった。
今回も当初の週間天気予報では日曜の低気圧の接近で悪くなる予報だったため、木曜日くらいまで決行を悩んでいたが、日を追うにつれて天気展開が遅れ、日曜の午前くらいまでは持ちそうということで思い切って決行を決める。
当初6人くらいだったメンバーも4人となり、ラッセル敗退の噂もちらほら聞く中、木金の降雪でラッセルもありそう、天気も本当にもつか不安6~7割くらいな感じで新穂高温泉へ車を走らせた。
2日 激極ラッセル祭
久々に緊張感のある雪道を越えて新穂高温泉へ到着。
あんまり寒さを感じないなかパッキングを済まし、穂高平に向けて林道を歩きだす。
トレースもあり、ショートカットも交えながら穂高平小屋まで。
予報では午前中曇り予報だが、どっぷりガスで雪も降っていて本当に晴れるの?という感じだ。
牧場跡にもトレースがあり、セオリーどおり小屋裏尾根の一本南の尾根に続いている。
いきなりの急斜だが、トレースに積もった雪も軽くいいペースで標高を上げていく。
気温も高いので汗ばみながらのひたすらコンタ上げ。
12時前に看板のある.1946地点に到着。このペースならコースタイムどおり14時くらいにはテンバに着いて、第一岩峰までトレース付けするなり、酒を飲むなりできるなぁと休みながら話していた。
しかし、トレースが付いていたのはここまで。
.1946地点を出発したあたりはまだよかったが、2040mのゴロゴロ岩を過ぎたあたりから、ちょっとした段差で穴に嵌まったり、急斜面では胸ラッセルになり斜面を崩したり、半ば木登りのような登りを強いられる。
はまっては誰かが前へ、疲れては誰かが前へと総力戦との様相を呈するが、なかなかペースは上がらない。
途中で後ろから2人組が追い付いてきてだんごになって回していく。
天気が回復して見え始めた稜線をゆっくり楽しむ余裕もなく、ようやく2350mのコルのテンバ適地へ。ここは4-5人用テントで2~3張り行けそう。
しかし、明日は天気と時間との戦い。2400m岩峰直下のテント適地に入るべく、最後の気力を振り絞って急斜に挑むが、この最後の50mが本当に登るのが大変で斜面を切り崩して切り崩して30分くらいかけてようやく上へ出る。
コル地形にたどり着き、2350m同様の広さのコル。
今日はここで行動終了。久々にラッセルで疲れ果ててヒラヒラ。
日も沈みかけで冷えて来たのでテントに転がり込む。
温かい飲み物を飲んでほっこり。行動中あまり水分を摂っていなかったのでしっかりと飲む。
今晩のメニューはペミカンカレー。コメも一人1合あってがっつりだが、疲れた体にはスルスル入る。
明日の天気の確認。当初の予報通り朝方は晴れて昼過ぎから崩れる予報。
明日どれくらいのラッセルがあるのか。早デッパで勝負を決めるべく5時発ということで酒もほどほどに8時頃に沈
夜トイレのために外に出ると落ちてきそうな星空だった。
3日 快晴の雪稜歩き
気合の3時おき。朝ごはんはインスタントラーメン。棒ラーメンじゃないのは久しぶり。ニラ入りで美味しい。
テント撤収して予定通り5時出発。天気は良く風もないので暖かい。
今日もさっそく急斜のラッセルからだが、一晩休んだのもあってか順調に進んで第一岩峰にぶち当たる。
スノーシューのまま、セオリーどおり岩の基部に沿って左に回り込んでいくとルンゼが出てくる。
ルンゼは雪を崩すと地面が露出するので、ここで足元をアイゼンに切り換える。
K野きゅんにザイルを引いて登ってもらい、ザイルをフィックス。支点は灌木。
ルンゼ自体は30mほどで残置ロープもあり、木も生えているためホールドスタンスは豊富で安心して登れる。
慣れたパーティーならザイル不要なくらい。
後続はアッセンダー、末端はセカンド確保でスムーズに突破。
そこからは尾根上に出て軽いラッセル交じりで高度を上げていく。
あたりもぼんやり明るくなってきて右手には乗鞍、左手には笠ヶ岳や抜戸岳、遥か後方には白山まで見える。
ジャンクションピークまでは手前のニセピークへの登りを含めて二度と急斜をありラッセルをしながら登っていく。
登っている途中で日の出を迎え、乗鞍や笠が明るく輝く。西尾根なので御来光が見えないのは残念。
美しい雪稜を登ってジャンクションピークに飛び出すと西穂から奥穂、そして槍へと続く稜線を望むことができテンションが上がる。
奥に見えるのは三俣蓮華岳だ鷲羽、水晶だとか言いながら景色を眺めながらしばし休憩。
ジャンクションピークからは2つポコを越える。
2つ目はなかなかに鋭く、越えるのがめんどくさそうなので、右手の斜面から巻く。
雪が吹きだまっていてラッセルが大変。
ヒイヒイいいながらコルに出て進むと西穂ピークへと続く最後の急登となる。
この急登の取り付き部分が第二岩峰。
右手に回り込んでいく岩稜の基部に沿って登っていき、浅いルンゼを登って巻き上がるように尾根上にでる。
ルンゼを抜けるところが少し立っているが、ホールドスタンスは豊富。
念のためピナクルにシュリンゲかけて確保した状態で抜ける。
槍穂を左手に見ながら、青空を突き刺さるように聳える西穂高岳のピークを目指して爽快な気分で登っていく。
遥か彼方には伊吹山も白く輝いている。
ピーク直下にも岩稜が出てきて、第二岩峰同様、右手に回り込んで浅いルンゼを登る。
回り込むところは少しいやらしかったが、ルンゼ部分は簡単。残置ロープもあったがいらないくらい。
取り付きに支点があった。
ここを抜ければピークは目の前、太陽に向かい、一歩一歩進んで山頂に飛び出すと前穂高岳が眼前に飛び込んでくる。
微妙な天気判断に始まり、ラッセルをこなしてファーストトレースで辿り着いた達成感はひとしおだ。みんなでがっつり握手。
ほどなく昨日一緒にラッセルした二人組も登ってきだ。お疲れ様です。
奥穂高から槍、そして双六、三俣蓮華岳、さらに奥には黒部五郎岳だろうか。
別の方を見れば焼岳、乗鞍、霞沢岳、笠ヶ岳、その奥には白山から奥美濃に白い峰が続きポツンと伊吹山が浮かぶ。
どこを見渡しても最高の景色だ。
今日は節分なのでK川が持ってきた豆で、豆まき&豆を食べる。申し分ない。
ピーク写真を撮って下り始める頃には天気も下り坂。
白山のほうからやってきた雲がどんどん空を覆い始め、風も少し出てきたのでそそくさと下り始める。
ノーマルルートはトレースがばっちりで上から見下ろした感じよりは歩きやすい。
ピーク直下の急斜は岩交じりで少し嫌らしいのでバックステップ。
尾根上に岩稜があるようなところは基本巻くように歩く。
ピラミッドピーク、西穂独標と2つのピークはしっかり登らされ疲れた体に堪える。
振り返るとあっという間に西穂のピークは遠くになってしまい、その後ろの空は灰色に。
独標からの急な下りを終えるとだだっ広い尾根となりのんびり小屋に向かって歩いていく。
独標を目指す登山者はやはり多いようで何パーティーかとすれ違った。
だーっと降りて丸山で振り返ると独標、ピラミッド、西穂高が並び、歩いてきた西尾根も全て望むことができて感無量。
ラッセルがやばかったのはあの辺だとか言いながら、西穂山荘へ。
山荘は多くの人で賑わっていて、小屋前の斜面で20人歩行練をしている。プレ冬でここに来るのもありだなぁとか思いつつ、のんびり休憩する。
ロープウェイ駅までは一瞬かと思いきや意外と長い、グリセードを交えながら微妙な登りにちょっとうんざりしながら駅へ。
すっかり曇り空で今にも降りだしそう中、展望台へ上がり西穂高岳と西尾根をバックに下山写真を撮って締めくくり。
春節だからか中国人で賑わうロープウェイに乗り込んで、一気に標高を下ろして車に戻る。
下山後は平湯の森で汗を流し、山岳会の会員オススメの高山の弱尊で激旨カレーに舌鼓を打つ。
高山でK野きゅんと解散し、2月だというのに雨がだだ降りする中を運転して帰京。お疲れ様でした。