アルパイン@北穂高岳東稜&滝谷ドーム中央稜
山行名:アルパイン@北穂高岳東稜&滝谷ドーム中央稜
日程:2024年9月14日(土)~16日(月)
メンバー:K川、Sモア
ルート:
14日 5:41上高地バスターミナル-7:24徳澤園7:38-8:31横尾-9:25本谷橋-10:58涸沢11:32-13:55東陵のコル14:09
-14:44北穂高小屋15:11-15:51北穂高岳・天場15:55-16:43第三尾根T2-17:19北穂高岳・天場C1
15日 9:41C1-9:56北穂高小屋C2
16日 3:42C2-4:10ドームの頭-5:08第三尾根T2-5:40ドーム中央稜1P 6:40-6:40ドーム中央稜2P 7:10-7:10ドーム中央稜3P 7:20
-7:40ドーム中央稜4P 8:40-8:40ドーム中央稜5P 9:20-9:30ドームの頭9:57-10:09北穂高小屋10:30-12:30涸沢ヒュッテ
-13:30本谷橋-14:19横尾-15:06徳澤園15:21-16:56上高地バスターミナル
今夏は、御館様ことMさんが北穂小屋で働いていて、7月にも小屋泊を絡めたキレット縦走をしたところだったが、この機会にクラシックルートの滝谷に行ってみようということになり、大定番のドーム中央稜に挑むことにした。
毎年いろんな沢登りいっているが、アルプスのアルパインルートに挑むのはコロナ前の前穂北尾根以来で久方ぶり。
システムの確認から登攀力確認を兼ねて、8月から小樽赤磐のマルチや、台風の隙間を縫って金毘羅で岩トレ、仕上げに1泊2日で御在所一の壁、前尾根と近年稀に見る練習をこなして当週を迎えた。
初日に東稜、2日目に滝谷ドーム中央稜、3日目に西穂へ抜けるという欲張りプランだったが、直前に日曜日の予報が芳しくなくなる。果たしてどうなることやら。
14日 東稜から北穂へ
何だかんだで仕事が押して、帰りがけに拾ってもらいSAでシャワーを浴びたりして、三連休の混雑を警戒してあかんだなまで。
細切れ仮眠で眠い目をこすりながら4時過ぎくらいバス停に向かうと既に行列ができている。
臨時バスも出て5時過ぎにバスに乗りこんで上高地へ。
こちらも激混みのトイレで用を足して出発。
今日は晴れ予報だが、稜線はまだガスの中のようだ。
河童橋から右岸にわたって迂回しなくてはならず少し面倒臭い。上高地らしくサルたちが迎えてくれると思っていたら、河童橋からほど無い木道の上に人だかりが。
またサルかななんて思っていると、木の上で黒い獣がゆっくり動いたいる。まさかのツキノワグマ。
あまりにも人に近いし警戒してもいない。知床じゃあるまいし困ったクマもいたものだ。
そんなこんなでバーッと歩いて徳沢園へ。
ご多分に漏れず、コーヒーとソフトクリームでモーニング。美味い。
正月にヘトヘトになってたどり着いた横尾から橋を渡り本谷で水浴びをしながら涸沢へたどり着く。概ね5時間半。
横尾本谷しかいったことのないtentyoは実は涸沢は初めてとのこと。
思ったよりもテントは少ない涸沢で一休みして北穂目指して登り始める。いよいよ暑くなってきて汗が止まらなくなってくる。
南稜の取り付き手前からガレ帯に向かってトラバースし、東稜方面に向かう。
トムラウシ山のロックガーデンみたいな感じだが浮石もあるので注意が必要。
二俣になって尾根上に突き上げるガリーの右俣を行く。左股は急なルンゼとなり取り付くのは苦労しそうだ。
とにかくザレと浮石が多く落石には最新の注意が必要。あまりガリーの中には入らず、ガリーの際のまだ岩が安定しているところを繋いで行って尾根上にのった。
尾根上からは横尾本谷や槍ヶ岳、振り向くと大天井や常念などを望むことができて気持ちがいい。尾根に乗ったところの直ぐ先には、いきなり岩の積み重なったような岩稜があるがこれは右側から巻く。
続いてまたも岩が積み重なった岩稜がでてくる。これがゴジラの背。
序盤は適当に登りやすいところを登って尾根伝いに進むことができる。
斜度がなくなると途端にナイフリッジみたいになる。落ちたらアウトだが、ホールドスタンスもしっかりあるので、クライミングをやっているものならノーザイルで行けるだろう。
2年前の11月に雪が積もった状態で尾根上を進むの諦め、左手にのがれたが、尾根上を進まなくて本当に正解だった。
ナイフリッジが終わると進行方向がスパッと切れ落ち、懸垂下降用の支点が出てくる。ここまできてハーネスを履くのも面倒なので右側から巻き降りるとノーザイルでクライムダウンできた。
コルっぽくなってひと息ついて振り返ると確かにゴジラの背っぽい感じだ。
さて、あとは小屋を目指して詰め上がるのみ。とはいえ1日目に一気に3000mまで上げているので、疲れと空気の薄さもあってか結構息切れがする。
ぜぇぜぇいいながら適当に急な岩交じりの尾根上を登っていきひと月強ぶりの北穂小屋に到達。
お館様の姿が見えないと思っていたら、東稜からくるのが伝わっていなかったみたいで、ピークで待っていてくれていたようだった。すみません。
わいわい再開を喜んだりジュースをいただいたりしながら過ごす。小屋泊まりは明日なので今日は南稜のテン場へ移動。
下の方に行くのは面倒なので、ちょっと狭いが尾根上に近いところにテントを張る。
さて今日はこれで終わりではない。そこそこみんな迷い勝ちの滝谷ドーム中央稜の取り付きを偵察に行く。
南峰・ドームを越えて最初の鎖場を下ろしたところから、ドーム方向に伸びる踏み跡を辿る。
この踏み跡、ガリーを横切りながらジグを切って下降していくのだが、2回目のガリーを横切って中央稜によった時に、そのまま中央稜方向に進むような踏み跡があるが、これには入らず、折り返して中央稜に沿ってガリーを下降していく。
正しい方に進むとケルンが2つでてくる。1つ目はそのまま踏み跡を辿り、2つ目が出てくるところはガリー・尾根ともに急になり、ちょっとどこを下降するか迷うが、尾根上に乗り切らずケルンのちょっと先を探すと、尾根上左手に急なルンゼがあり、そこを下ろすことができる。ここまでもそうだが落石には本当に注意が必要。
ルンゼを下ろしきるとはっきりとした踏み跡が、右手に向かって伸びている。背の低いハイマツの中に続く踏み跡でトラバースしていくと、はっきりとした尾根地形になり、ケルンが出てくる。ここを尾根にそって下ろしていくと、記録でよく見るピナクルが出てきて、その手前で尾根をのっこすと、これまた記録で見慣れた懸垂下降用の支点に辿り着くことができる。
スムーズに懸垂下降支点までたどり着くことができて一安心。登り返してテントに戻ると5時過ぎ。さすがに疲れたし眠い。軽量化のためフリーズドライのシチューと粗食だ。
明日午前中天気が持てばドーム中央稜に挑戦したいところだが天気予報は厳しそう。
とりあえず3時に起きてみることにしてシュラフにもぐりこんだ。
15日 無常の雨、小屋Stay
なんか日付が変わるくらいから雨音がしだし、3時くらいには風も相まってとてもじゃないけどという感じ。ふて寝していたものの、風雨にさらされテント内はビチョビチョ(古いのもあるけど)。
暖かいもののんだり、朝ごはんの棒ラーを食べたりもしたが、どうにも不快指数がMAXになってちょっと早いかもと思いつつ、テントを畳んで小屋に移動する。
乾燥室でいろいろ干させてもらい10時過ぎくらいから小屋の食堂でまったりさせてもらう。すでに今日泊まるグループが何組かいる感じ。
ちょうど受付を済ましたあとに御館様が休憩になったのでプチ宴会。
午後は昼寝したり、山渓読んだりしたりと思い思いに過ごす。依然として雨はザンザン降りだが夕方の天気予報では明日の午前は晴れ間が見込めるとのことで、早デッパでドーム中央稜を登攀し、その日のうちの下山を目指すことに。
そうと決まれば気合も入り、晩御飯もおかわりしてエネルギーを充填。食後はほどほどにと思っていたが関西から来ているという方々と話が盛り上がり消灯と共に沈。
まだ雨音はしているが、どうなることやら。
16日 充実の登攀
3時すぎに起床。なんか北穂小屋にいるはずなのに目を覚ましたら下界に逆戻りみたいな夢をみたが、ちゃんと小屋の布団の上で一安心。
昨日のうちにパッキングは済ませていたので身支度を済まし、3時40分に小屋を出発。
日付が変わるくらいに雨音止んでいて、がスってはいるものの、涸沢方向の灯は見え回復傾向か。岩も濡れているが岩質のせいもあってか滑る感じではない。
一昨日と同じようにドーム先の鎖場から踏み跡に入り、スムーズに懸垂下降支点まで。
早速セッティングしてザイルを投げる。まだ真っ暗で奈落に向かって下降するような様相で、ビビってバックアップを取って下降する。記録にある通り、25mでちょうど踏み跡に降り立つ。
そこから右手に歩いていきT2に登り上がると記録で見慣れたドーム中央稜の取り付きにたどり着いた。
概ね1時間半。ここまではスムーズにこられた。
明るくなるまで、いただいた弁当を食べたりして過ごす。おにぎり2つに唐揚げなどのおかずで腹ごしらえはバッチリ。
すっかり天気も良くなり、迫力の滝谷からキレットと槍、広がる雲海とロケーションも最高だ。笠が雲海から顔を出したくらいに準備も完了。
多少濡れてはいるが岩質もあってかフリクションが効くのも確認して登攀開始。
1ピッチ目対策もあり、リードは空身、フォローが全荷で登る。
1ピッチ目 samoaリード(IV+)
概ね階段状のジェードルから上部は狭いチムニーになり、その一番奥からチョックストーンの先の穴をくぐり登ると終了点。中間支点は残置ハーケンや残置スリングと豊富にある。終了点はステンレスボルト(支点は以降ずっとそんな感じ)
話には聞いていたがとにかく狭い。顔の方向を変えようにもヘルメットが引っかかるくらいで、ギアラックをハーネスに吊るす。
チムニーの一番奥までいくと、ホールドスタンスが多いのでそれを頼りに体を上げていく。スタンスに足を上げにくいところがあるので、全身ジャミングで喘ぎ登りながら足を上げて抜けていく。めんどくさいが落ちる気は全くしない。
フォローのザックはチムニーに入る手前で一方のザイルで引き上げ。微妙にひっかかるので、フォローが少し登りながら押し上げて突破。
トポではⅤとあるが、全身を使った泥臭い登りに慣れているとそこまで難しく感じない印象。
tentyoを確保している間に2人組のパーティが懸垂して降りてきていた。
2ピッチ目 tentyo (IV+)
フェースにいかにも登りやすそうな薄い凹角が右上に伸びているが、1段上がったところからカンテを回り込んで残置ハーケンを辿っていくのが正解。
終了点の直下2m、ホールドを頼りに左上した先にあるフェースがホールドスタンスともに浅く緊張する。
慎重に体を上げて右上のガバを掴んで突破。
なんか御在所一の壁右ルート左ルートのおさらいみたいな感じA0してしまえば楽勝だろう。
3ピッチ目 samoa(Ⅰ)
記録通りのほぼ歩きのピッチ。ノーザイルでも行けるが、ザイル畳んでコンテで行くのも面倒なのでスタカットっぽくいく。
リッジ伝いに歩いて、4ピッチ目にぶち当たったところで一段落したが、実際の4ピッチ目の登攀開始はもっと左手のほうに進んで1段岩壁を上がった小テラス。そこにボルトの終了点もある。
そんなこととは露知らず、岩壁にぶち当たったところで休んでいると「おーい!」と声が聞こえてくる。声のする方を見ると北穂山頂に小さい人影が。
今度は「M野でーす!」と聞こえ、声の主が御館様だと認識でき、こちらからも「おーいっ!」と大きく手を振る。すると向こうからも「おーい」と手を振り返してきた。なかなかエモい感じだ。
ひとしきりコールを送りあって、一息ついたところで登攀再開。
4ピッチ目tentyo(Ⅳ)
記録でもどこを登るか迷いがちな4ピッチ目。我々も登り始めでルート探しに少し迷う。後から記録を見返しても諦めたフェースも登った凹角もどちらも正解みたいだ。
古い残置ハーケンが2本打ってあるところが開始点かと思い登り始めたが、フェースにぶち当たった当たりで、ザイルの流れが悪いのと、フェースとその上部のチョックストーン部分が難しそう。
tentyoが自分の少し下に前述の小テラスのステンレスボルトの終了点を見つけたので、samoaもそこまで上がって仕切り直し。ボルトの右手のほうにある凹角に沿って登っていくのがハーケンも続いてルートっぽい。
1ピン目が少し遠いのでカムでとる。
凹角から張り出し気味の岩に当たったところから左のフェースっぽいところを上がり、左上に伸びるクラックに沿って登る。最後のテラスに出るところは少しボルダームーブ。テラスを左手に進むと終了点。
フォローで登る前に後続が追いついて来たので聞いてみると涸沢から上がってきたとのこと。お疲れ様です。今日は前日の天気、午後からの悪天予報もあってか、2パーティーのみで、のんびり楽しめる。
5ピッチ目 samoa(Ⅳ)
いよいよ最後のピッチ。チムニーを登っていき、ぶち当たったハング気味のところを左手に出て超えていく。
チムニー部分はなんもだが、1箇所ピンか遠いところがあったのでカムで取った。
核心の小ハングは記録通りハーケンがいっぱい打ってある。安心感もあるがどの方向にも登れそうで少し迷う。
結局クラックに右腕を突っ込みジャミングをしながら体を上げていくと右手にガバホールドが見つかる。
それを頼りに足を上げていき、左の方に出ていく。
右足は壁で突っ張りながら、手は向き的にもガバと言うほど良くはない中、左足のフリクションを利かせながら登り上がる。
抜けた勢いで尾根上緩くなった所まで行って、ビレイ解除&ザイルアップしてしまうが、核心抜けたすぐの所にボルトの終了点があったので取り直して、フォローの確保。tentyoも順調に核心を抜けて登攀終了。
久方ぶりにアルプスの絶景の中のクライミングで、本ちゃんはそれこそが醍醐味というのを思い出させる、気持ちのいいクライミングだった。
平らなところでザイルを畳んでドームの頭で記念撮影。うーん最高。満足感に浸っているとガスも増えてきたので小屋に帰る。ドームの頭から縦走路に下ろすところは落石注意。
バーッと北穂を登り返し、小屋にたどり着くと先程山頂から呼びかけてくれた御館様が出迎えてくれた。御館様がいなかったらこの山行の企画もなかったような気がするし、本当に感謝。炭酸飲料で喉を潤し気分は爽快だ、
預けていた荷物をまとめて、御館様と記念撮影して小屋を後にする。次はクラック尾根とかから辿り着けたらいいな。
重い荷物に切り替わり、今日3度目の北穂高岳山頂。
ちょっとガスが取れてドームを望むことができるという素敵なプレゼント。ありがとうございました。
実は初めての南稜を噂のハシゴや鎖場をこなしながら下っていく。取り付きでは東稜を望むことができて粋な計らい。
涸沢に降りる途中でもガスの中に浮かび上がるような前穂が見えたりと、ドピーカンという訳では無いが見たいものは全部見えたといったところ。
時間があれば、パノラマ新道をとも思ったが流石に時間が厳しいのでまたの機会に。来た道を戻って上高地をめざす。
暑い中、ゔぁーと下るだけかと思っていたが、徳沢園のソフトクリームの誘惑に負けて一休み。
気を取り直して、バスに間に合うように最後の方は急いでバスターミナルに着く頃には足が棒になっていたが、いい充実感、いつも通り平湯の森で汗を流して京都への帰路に着いた。
この間、小樽赤岩や金毘羅、御在所一の壁、前尾根で練習したが、ルートを間違えなければ、前尾根を確実にリードできる実力があればそんなに苦労しないように思える。御在所一の壁のⅤ級ルートと比較すると、核心とそれ以外のメリハリはハッキリしている印象でした。