積雪期縦走@表銀座途中敗退(水俣乗越手前まで)

山行名:積雪期縦走@表銀座途中敗退(水俣乗越手前まで)
日程:2024年1月1日夜発~1月6日
メンバー:T柳、K川

ルート:

1/2 宮城ゲート→(燕岳At)→燕山荘C1

1/3 C1→大天井岳→大天荘C2

1/4 C2→大天井ヒュッテ→牛首展望台→赤岩岳→赤岩岳先稜線上C3

1/5 C3→西岳→西岳ヒュッテ→西岳先コル→槍沢→横尾山荘C4

1/6 C4→上高地

今年は年末はいろいろあって珍しく仕事納めまで職場にいたり、親せきと過ごしたりで年明けからの山行。去年も少し計画を考えていた表銀座から槍ヶ岳を目指すことに。2日夜は燕山荘も予約できたもののそんに良くなさそうな天気予報にヤキモキしながら元日におせちを食べたりして、地震にびっくりしながら車を走らせ宮城ゲートへ

1月2日 一気に燕岳はしんどい
宮城ゲートの駐車場は車がたくさん停まっていて燕山荘の賑わいが伺える。
長期山行らしい肩にずしりと来る荷物を背負って全く雪のない道を歩いて中房温泉へ。
3時間ちょいで中房温泉へ。この辺りで上から降りてきたであろう登山者たちと多くすれ違う。一気に行かず、ここでテントを張って上がるという形もあるようだ。

ここからはなんといっても北アルプス三大急登である合戦尾根。第一ベンチくらいまでは楽勝と思っていたが、富士見ベンチから合戦小屋まではさすがの急登でぜぇぜぇいいながら登る。

合戦小屋から上は樹林外となりようやく槍も見えてきて気持ちいいのだが、一気に高度を上げたのと9時間に及ぶ行動もあってかへとへとになりながら燕山荘に辿り着く。

日の入りまで時間もないのでザックを玄関に置かせてもらっていそいそと燕岳ピークへ向かう。
ザックもなくなったというのに登りはペースがそこまで上がらない。体力不足を感じながらほどなく燕岳のピークまで。なんだかんだで初めて。
北を向けば先日いった爺ヶ岳から伸びる後立、その左には剱・立山、振り向けば目指すべき槍が斜陽に染まり始めていていい感じだ。
もう少しゆっくりしていたいが、日没まで小屋に戻るべくピーク写真を撮ってそそくさと下る。

メガネ岩やイルカ岩を横目に小屋に辿り着くころにちょうど日の入りとなり双六あたりに夕陽が沈んでいく。雲が少なく焼けなかったが相も変わらず美しい時間だった。

小屋に入って手続きを済ませ荷物の整理をしているとほどなく晩御飯となった。
食堂は6人掛のテーブルが10以上という感じなので80名くらいの宿泊者がいる感じだろうか。出てきたハンバーグや名物オーナーである赤沼さんのお話をおかずに、ご飯やみそ汁を満足するまでお替りさせていただく。

日航機が燃え盛る衝撃ニュースを見たりして、布団にくるまってぬくぬくで沈。
明日は午前の天気が持つうちに大天荘へ移動だ。

1月3日 予定通り大天荘へ
5時半起床。
朝御飯は焼鮭を中心にしたオーソドックスな感じ。とりあえず今朝もご飯とみそ汁をたっぷりといただく。
そそくさと準備して、朝陽が登り始めるのを横目に出発する。
今日は低気圧の接近のため、すでに空は曇りがち。大きく崩れる前に大天荘を目指す。

登山道も分かるくらいの雪の量で順調に進んで行き蛙岩へ。
巻けた方が楽ということで少し見てみたが、どちらも急だったのでセオリー通りに真ん中の穴を突破することに。
ザックが邪魔なので途中で下ろして手渡しする。岩と雪の隙間にストックなんかを落としたら回収できなさそうなので無駄に緊張した。

単独の方とすれ近いながら進み、切通し岩へ。下りに鎖場があるくらいで特になんも。
大天井のトラバースルートは雪で埋まっているため、レリーフは見当たらなかったが喜作レリーフ当たりまで上がって、尾根上を登り詰めて大天井岳へ至る。
後立や剱立山はもちろん槍穂も厚い雲に覆われいよいよ悪化という感じになってきた。
そそくさと大天荘に移動し、冬期小屋に転がり込む。
テントを立てて13時半くらいなのでうたたねなんかをして過ごす。

夕方の天気予報では明日は朝方は悪そうなものの回復傾向、明後日は晴れるも風は強そうと微妙な感じ。
常念方向へのエスケープ、引き返しなども多いに選択肢としてある状況だが、できる限り頑張ろうということで、水俣乗越を目指して判断することにする。
昨日今日と飽食だったため、ドライフーズのシチューをかき込んで沈。

 

1月4日 大変で大変な赤岩岳
朝ごはんはいつもの棒ラーメン。
未明はうっすら月も見えていたが、出発するころは再びガスガス。それでも回復すると信じて出発する。

まずは大天井岳への登り返し。15cmくらい積もったのか思ったよりも重い雪のラッセル。地吹雪もあって結構ダルい。
とりあえずピークにたどり着き、アイゼンに変えて尾根を辿って大天井ヒュッテを目指す。視界がない、急、岩っぽいところにうっすら雪が積もってるという感じでなかなか面倒。
尾根もハッキリはしていないので時折しっかり方向を確認しながらコロコロ転がるように降りていく。

大天井ヒュッテまで来たらようやく青空も見え始め回復傾向に。
が、目の前に見えている牛首展望台は中々の登り返しだ。
急なところをラッセル混じりでヒイヒイ言いながら登り、途中でスノーシューに切り替えたりしながらピークまで。
そこからの尾根上はところどころ細くなるところもあるので途中でアイゼンに変えた。

ビンボー沢のコルまで辿り着き再びスノーシューに切り替えて赤岩岳へ。200mくらいの登り返しだがやたらでかく見える。
膝下くらいのラッセルを繰り返しながら1段上がり風で雪が飛ばされるところを選びながら歩いていると、ガスが無くなり槍の穂先が見えてくる。穂高の方のガスも取れて気持ちのいい稜線歩きとなる。

.2627の先でアイゼンとバイルを出して1段尾根を上がると雪稜が続く感じになる。
赤岩岳に近づくにつれて尾根が細くなっないき、しまいには岩稜混じりナイフリッジに。

なかなかの緊張感で赤岩岳の手前のポコは登ってみたはいいものの下降が急で、雪も固かったり溜まっていたりするので、慎重にクライムダウンして、常念側のトラバースに切り替える。
こちらもかなり急なので灌木を支点にザイル出す。ランニングを取りながら30m進んだところの木で区切る。

そこから尾根上に上がると赤岩岳のピークとなる。
ゆっくりする間もなくその先の尾根を見るとより細い岩稜がカーブを描きながら続いていてとてもじゃないけど行けないので、再び常念側の微尾根を20mくらいバックステップして、またザイルを出して白い斜面をトラバース。
途中小雪崩を起こしたりしてなかなかテンションが高い。
35mくらいトラバースして、胸ラッセルで尾根上に何とか復帰。

そのあともアップダウンのある雪稜が続いたが、いよいよ時間がなくなってきたので、吹き溜まりを掘り下げてテンバ設営。

ふと視界の端に白いものが…
顔を上げると真っ白いライチョウのつがいが鎮座していた。
メスのほうは体を震わせながら雪にめり込んでいく。
なるほどそうやって暖をとっているのね。
日没の時間となりあたりがいい感じだが、疲れ切っていて楽しむ余裕もなく立てたテントに転がりこむ。

暖かいものを飲んで回復を図りながら明日以降の天気を確認する。
明日は南高北低型で晴れるものの稜線は10~20mの風が吹き、それ以降は冬型が強まり風もさらに増すらしい。

うーん、天気展開も厳しいため今回は水俣乗越から上高地にエスケープすることとに。
なかなか手痛い敗退に、満身創痍の中、少しホッとしたような悔しいような複雑な感じだ。

明日も西岳を超えるというひと仕事があるためペミカンを食べてエネルギー確保。油が染みる。

1月5日 槍沢へエスケープ
朝起きると斜面側に結構雪が吹きだまってきている。
朝ごはんをかき込んで準備をしているうちにどんどん狭くなっていくので、慌てて外に出て除雪をする。横着はするものでは無い。

外に出るとそこそこ風はあるものの快晴。
ちょうど常念から朝陽が登ってきて槍穂を赤く染め上げる最高の時間でスタート。

テンバを出てすぐに鋭いポコが現れる。
朝一で硬くなってい急斜を登って細い雪稜を進む。今日もいきなりこんなんだが、ここを越えると尾根は比較的広くなる。

西岳手前から岩混じりの尾根となるがブッシュも多く特に問題はない。
ビュンビュン風に吹かれながら西岳へ。
槍の稜線も雪煙が舞っていてなかなか厳しそうだ。
とりあえず西岳ヒュッテまで行って風が落ち着いているところでひと休みする。

西岳は恐らく夏道であろう所を西岳から伸びる尾根の鞍部目掛けてトラバースすることに。
そこそこ急なのでステップをしっかり切って時にカニばいみたいな感じでトラバース。ルンゼは白いので横切る時は1人ずつ通過。

途中の微尾根で20mくらいバックステップして、再度トラバースして鞍部に出た。
そこからは急なルンゼを下ろしていく。
前降りだったり時折後ろ向きにしたりひて、微尾根沿いに下ろし、最後はその尾根を回り込んで夏道の水俣乗越へ続く尾根に合流する感じだ。

と、今下ろしているルンゼの下の方が見えてきて、見た目にも緩く槍沢まで下ろしていけそうな感じだ。
地図で見ても行けそうだし、何より水俣乗越まで1つポコを超えるのも面倒くさそうなので、そのまま下降し続けることにする。
途中、カンバが疎らに生えた日当たりのいいところでひと休み。

昨日からそれなりに緊張感の続くところばかりでなんかようやく一息つけた。
ここからは東鎌尾根を携えた槍がよく見える。あー、こうやって眺めると行けなかったのが悔しくなってくる。
南岳からはどこまで高く上がっているのだろうかというよな雪煙があがってはいるが。

急にポカポカの中、スノーシューに切り替えながら沢型を下ろして行き槍沢にでる。
あとはひたすら下ろしていくだけなのだが、適度に積もって日が当たり絶妙に重い雪のラッセルになり、なかなかペースが上がらない。

ひいひい言いながらババ平を超えて、巨岩の迷路沢に惑わされたりしながら、槍沢ヒュッテ辺りまで来るとようやくラッセルも無くなってくる。
橋げたの外されたニノ俣なんかをビクビク渡ったりして横尾にたどり着く頃には昨日と同様ヘトヘトとなっていた。

立派な冬季小屋をありがたく使わせていただく。
水も出ていて別棟に小屋もあって快適。
暖かいものを飲んで一息つくも、水分もエネルギーも使い果たしたのか、なかなか体が温まらない。
今日も油たっぷりのペミカンを食べてようやっと元気が出てくる。
明日はお昼のバスに間に合うように出発することにして沈。

 

 

 

1月6日 下山
起きてみるとうっすら星は見えているものの山の方はドップリガス。
今日で最後となる棒ラーを啜ってのんびり片付けて7時出発。
今日はひたすら歩くだけだが普段あれだけ賑やかなこの道に人が居なくて静かなのはちょっと斬新だ。

徳沢、明神とポイントを通過していく。上高地に近づくにつれて人とすれ違うようになる。
河童橋のところで、長野の山岳救助隊の人と赤岩岳~西岳のルートについてお話を伺う。
やはり雪崩が怖いから尾根上がセオリー、西岳も尾根上懸垂だねとスラスラと出てくるのは本当に流石としか言いようがない。
ネットに記録が少なかったとはいえ下調べ不足も敗退の一因だ。

4日間の疲れかなかなかペースが上がりきらない中、バスターミナルを経て車道を歩く。
大正池なんかも近くであんま見たことないなとか思いながら意外と登り返しが多いことに悪態をつく。
トンネル地帯になってから勢いよく下り、下りに下って中の湯まで。バスの20分前という程よい時間。

思ったよりも混んでいるバスに揺られながら松本に向かい、大糸線で穂高駅、そこからタクシーで宮城ゲートの車を回収。

有明神社のくるま屋でたっぷりのお蕎麦をいただき、初詣。今回とこれからの安全登山をお祈りして締めくくりとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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