沢登り@犀川源流 倉谷川
山行名:沢登り@犀川源流 倉谷川
日程:2023年7月14日(金)夜発~17日(月)
メンバー:K川、K野、S藤、Sモア、他1
ルート:
15日 06:34スタート地点-07:16奥孫林道終点07:24-07:36渡渉点-11:55赤堂山-12:20赤堂山南東コル-15:10倉谷川合流15:02-16:20.513C1
16日 05:00C1-05:45 5段12mF下-06:505段12mF-07:008mF下-09:108mF上11:10-2条10mF-13:5015mF下-14:5015mF上-
15:30 3段10m下-17:10 3段10m上-18:00.1013 C2
17日 05:00C2-08:101280m二股08:20-09:10稜線-09:50見越山10:10-12:13赤摩木古山12:29-13:04大門山分岐13:05
–14:09ブナオ峠14:30-16:59下小屋-17:57ゴール地点
最近は雨に悩まされることも多い7月の三連休。
数年前に地形図を眺めながら、ふと気になった両白山地の最北部とも言えるあたりから金沢に流れ出る犀川源流部の倉谷川と二又川。
倉谷川は日本登山体系に『白山屈指のゴルジュ』とある。
二又川には、金沢市民にはお馴染み?の犀滝があるようだ。
生憎犀川ダムまでの道もかなり手前で通行止めとなっており、アプローチも悪いためネットの記録も少ない。
これは…おもしろい沢登りができそうやん、ということで昨年も同じ三連休で、倉谷川から二又川への周遊を計画したものの、あえなく天候不良で流れてしまった。
今年もしんどい沢を笑顔で付き合ってくれる悪友メンバーに期待の新人を加え、犀川源流部に挑む。果たしてどうなる事やら。
祇園祭の熱気に湧く京都を20時に出発し南砺市を目指す。
この数ヶ月スウェーデンロングトレイル→瞑想合宿→スペイン巡礼の道をこなしたと言う、相変わらずプロアクティブなTひろさんの話を聞きながら、福光の道の駅でC0。
15日 アプローチからして大変
朝にはちょっと前まで仕事でフランスに行っていたというK野きゅんも合流。
県道52号線を進み、刀利ダムのさらに奥、小矢部川375m橋の手前に駐車する。
犀川ダムからのアプローチのほうが美しいが、こちらから入山するとブナオ峠からエスケープができるようになる。
小矢部川の支流を遡行し、赤堂山あたりからのっこして倉谷川に入るべく林道を歩いていく。
当初は赤堂山の南東側に詰め上がる予定だったが、直前に地元山岳会の刈払い道で赤堂山まで行けるということが分かり、そちらを使おうということになる。
しかし、徒渉点から先で道をロスト(恐らく徒渉点から下流側に道が続いていた)し、予定していた沢では無いが、そのまま沢を詰めることにする。
沢自体は岩盤質で小粒な沢だったのだが、詰めのブッシュとドロドロ急斜面に悪戦苦闘する。
言葉にすると簡単だが、豊かな植生が全て自分たちの方を向き、地味にsamoaは5mくらいずり落ちたりと本当に大変。小滝で軽くロープを出すこともありながら、2時間ロスして赤堂山に到着。
稜線ははっきりとした道が着いているが、赤堂山に上がってくるという刈払い道は見つけることができなかった。
当初の予定通り、赤堂山南東側のコルまで行き下降を開始。
ほどなく沢型地形を捕まえたかと思ったが、850m付近の斜度が緩いところで湿地帯のようになり沢型を見失う。
???、ササとヤマブドウの蔓に阻まれながら何とか沢型を見つけ直すことが出来たが、不思議な地形もあるもんだと思いながら、下降を続ける。
記録にもあったが、下降沢は赤い岩盤が優先し、時折つるんとしたとても綺麗な赤かったり、赤みがかった白い石を見ることができる。どうやらメノウのようだ。
沢自体も何もないわけではなく、時折でてくる3~6mくらいの滝を巻いたり、クライムダウンしながら下ろしていく。
なんだかんだで3時間くらいかかってようやっと倉谷川へにたどり着く。
スタートラインに立つまでに8時間もかかってしまった。
最大の核心である第1ゴルジュに挑むには到底時間も余裕もないので、.513二股の手前でテンパることにする。
5人だと設営や薪集めも早いなぁと思いつつ、焚火を点火してうだうだ。
Tひろがミニ鉄板を持ってきていて、いろんなつまみを焼いてみたり、S藤さんの持ってきた巨大マシュマロをあぶったりする。
晩御飯はS藤さん作のツナ親子丼。ツナと玉ねぎたっぷりでおいしい。
ちなみにS藤さんは誕生日だったらしい。言っといてよと思いながら、この状況を最高の誕生日だと言い放つ逞しさに感動を禁じ得ない。
明日はどのくらい進めるのだろう。登山体系にあった「白山屈指のゴルジュ」という文言に楽しみ4割、不安6割といった感じで5時出発を決め込み沈。
16日 圧巻のゴルジュとの大格闘
3時起床。焚火を再点火して朝ごはんはTひろさん作の焼きベーコン&ヨーロッパポン菓子入りのラーメン。うまい。
予定通り5時出発。
ほどなく記録の写真でよく見る第1ゴルジュ入口の滝にたどり着く。登山体系の5段12mの滝だ。
やはりというか、写真では伝わらない規模と迫力だ。
とりあえず近くまで行って迫力をひとしきり体感してから巻きルートを探す。
記録では左岸から2つの滝を高巻いて沢型を懸垂とあったが、草付の岩壁のどこを攻めるのだろうといった感じだ。
右岸に目をやるとこちらは灌木を使って登っていけそう
地図を見ても、尾根をのっこす形で向こう側には行けそうということで右岸を選択。
足元は滑りやすいが順調に高度を稼ぎ、適当なところで尾根を越え、滝を2つ越えているのを確認して沢身へ。
最後が急だったので懸垂する。
再びゴルジュを進んでいく。水量が多い訳ではなく基本歩き。
続いて8mの滝にぶち当たる。いい滝だが取り付く島もないのでこれも巻き。記録通り右岸からとりかかる。
少し戻って灌木を頼りに泥壁を強引に登りリッジに乗る。泥壁は滑りまくるのでザイルを出す。
リッジを少し登って灌木混じりのスラブのトラバース。
最初は灌木を掴みながら行けるが、後半8mくらい灌木がないので慎重にこなす。
トラバースからみるともう1つ釜持ちの8m滝が懸かっているのが見える。こちらも中々の迫力だ。
終了点からさらに5mくらい行ったところから、灌木を支点に2つ目の滝上めがけて懸垂し沢身に降りるのだが、ここで大事件。
2人目のTひろさんが下降中に捨て縄が灌木からすっぽぬけ1mほどテラスまで顔を打ちながらずり落ちる。急になる手前だったからよかったもののあと数m先だったら大事故になるところだった。
バックアップも含め支点を取り直して、全員下降してからゆっくり休憩を取りながら反省会。
状況を整理し、複数で支点確認することを含め、速さよりも確実性をもってこの先進めることを確認する。
登攀で懸垂が一番事故が多いことを思い知らされる形となってしまったが、大きな怪我がなく本当によかった。
気を引き締め直して遡行再開。大きな滝は無いもののゴルジュ地形が続き、支流がすだれ状の滝となって降り注いだりと、晴れているのも相まって美しい。
日向ぼっこしているアオダイショウさんを冷やかしたりしながら、左岸が崩壊地になっている滝を軽く巻いて進んでいくと、2条10mの滝に行きつく。
明るくかつ、迫力のある滝でみんなで写真を撮る。これは右岸から簡単に登ることが出来た。
小滝をいくつかこなして行くとゴルジュの幅が狭まり、淵が優先する感じになる。2つめのゴルジュ。
最初の淵はへつりだけでは突破できず、出口の段差の流れも強かったため、ロープで引っ張ったりもして突破。
その後も出てくる段差をへつったり、つっぱたりしながら越えていく。
ゴルジュの出口付近に流木のかかった4mの滝が出てくる。
流芯は行きにくそうなので、足元がスッポリと抜けたルンゼを登る。
うまいこといけば、ステミングで行けるが側壁が滑るのでロープを出して空身にして、メンバーによってはショルダーして登る。
そんなこんなでかなりの時間をかけながら3つ目のゴルジュへ。
最初の15mの滝は記録でよく見る滝だが、これまた写真で見るより遥かに迫力がある。
セオリーどおり左岸の浅い凹角をKのきゅんリードでザイルを引いてもらう。
立っているのと、微妙に濡れているで中間のホールドが乏しいところが緊張する登攀。
ハーケンを2本打ちながら滝上へ抜けてくれた。支点はカムで取って後続を確保。
準備もできて2番手が登る段になって手前で少し大きな落石の音がする。
自然落石かなと思っていたら、今度は滝下あたりににも小さめの石が落ちてくる。
はて、と思いながら崖の上のほうの草が順々に動いているのが見え、一瞬黒いものが見えた。
これは…と目を凝らしていると草むらの中から1m強くらいのクマがひょっこり顔を出す。K野きゅんの10m上部なので危険はないが、自分は完全に目が合っている感じ。ちょっと可愛いけどどうなるんやろと思っていると、興味を失ったのか、崖上をのそりのそりと歩いて行った。
びっくりしたが、気を取り直して滝にとりかかる。
自分だったら空身でリードにするかな、なんて思いながら末端で登る。
これで核心は概ね終わりかと思って進んでいくが、いくつか滝を越えると大きな釜を持った4つ目のゴルジュに10m級の滝が出てくる。あれま。
しかも滝身は到底登れそうになく、ゴルゴル先生もかなり発達していて、右岸はとりつくしまもない。
左岸は灌木を繋いで上がれそうとはいえ、滝手前で草付の沢型が大きく入り込んでいて、木をつなぐとかなりの高巻きを強いられそう。
ここを行くしか無さそうなので10時間以上行動し疲れている中、焦らず確実にいくことを確認して巻きにかかる。
取り付きやすいところまで戻り、尾根地形を、GPSも見ながら右手斜面が緩くなり、確実に木が繋げるあたりまで、80mくらい登ってトラバースをする。
基本的には灌木を掴んでトラバースできるが、時折足元が悪いので注意が必要。
ご他聞にもれず同じくらいのサイズの滝が2つ続いていたので、その上へ降り立つべく最後は30mザイルを2つ繋げて立木をピンに懸垂下降して巻き終了。
1日に1~2時間の巻きを3回こなすのはなかなかしんどい。
あと少しで.1013二股だがまだ3段の滝が続く。左岸から越えていくが、2段目をへつり気味に行くところが少し悪いと思って一応ロープを出したが、案外すんなり突破。なんか山行中にパーティーの登攀能力も上がっている気がする。
そんなこんなで、13時間かけてやっとこさ.1013二股に到着し行動終了。本当にお疲れ様でした。
いそいそとテンバを設営して、焚火をつけて乾杯。本当に疲れた。
こんな時の晩御飯と言えばペミ。疲れた体に油が染み渡る。引き続き鉄板でウィンナーなんかを炙ったりもする。
沢中だというのに空が開けていて、新月なのもあって満天の星空だ。そんな中、隠しグッズの花火を点火、星空と水面に映る火花に夏を感じて夜は更けていく。
17日 降りるのも降りるので大変
昨日、倉谷川から脱出できなかったため、今日は稜線からブナオ峠経由でエスケープ。犀滝は幻となってしまった。
今日も長いので3時起床5時出発。朝ご飯はK野きゅん作の乾燥野菜たっぷりラ王。甘みが多くうまい。
.1013二股は右股に進む。さっそく3段の滝が登場。微妙に悪いながらも2段目までは登れたが、3段目が登れなさそう。なんてこったい。
懸垂で1段目下まで降りて3段まとめて右岸巻き。発達したゴルジュ地形という訳でもないので、確実に灌木を繋いでまくことが出来る。朝イチにはちょうどいい?くらいの巻きだった。
そのあとも滝がいくつか出てくる。
パッと見登りにくそうなのもあったが、いざ取り付いてみるとスタンス豊富で簡単だったりと順調に進んでいける。
1300mくらいまで来ると大分高度を稼いだ感じとなり、うっすら遠くに海岸線も見えるようになる。
さて、屈曲を過ぎて1280m二股から左へ左へ行って1番近いコルに上がろうと思っていたが、狙っていた沢の1本奥を詰めてしまい、余計に薮をこぐ羽目になってしまう。気温も上がってきて暑い。
汗だくになりながら息も絶え絶えに稜線に転がりでる。
一息入れて、空身で薮がうるさい稜線を見越山目指して歩いていく。日差しはきついが、視界は開けていて気持ちがよい。
偽ピークを越えながら見越山にたどり着く。
近くには奈良岳があり、そこから伸びている県境稜線の先には大笠山が立派な山体を横たえている。
その手前にはどうやったらそんな地形になるのといった大スラブが見える。あの向こう側がオバタキタンなのだろう。
振り返ると富山平野と金沢平野が見え、眼下には遡行してきた倉谷川がある。
見越山自体は1600mちょいの山なのに、そこから流れ出る犀川源流部のスケールの大きさは想像できないものだった。
などと感慨に浸りながら、どこまでも続く山々に両白山地の奥深さと犀滝を目指せないを酸っぱさをみかんとともに噛み締める。
みんなでピーク写真を撮って、気を取り直して出発。下山の道のりも長い。
デポした荷物を回収して時折行く手を阻むブッシュに辟易しながら、アップダウンのある縦走路を歩く。
迫力のある崩壊地を抱えた赤摩木古山を越えて、大門山分岐からブナオ峠を目指す。
分岐からは割ときれいな道となるが、標高を下ろしてきた暑さとここまでの疲労で息切れしながら、舗装路が入ったブナオ峠にたどり着く。
夏空の下、ザックの上にひっくり返ったり、道に横たわったり、思い思いに休憩をする。
ちなみにこれから下山する方は舗装路ではなく、うっそうと草木が茂っている富山側だ。道は土砂崩れや崩壊で荒れているという話だったが、行ってみてどっこい、地獄はここからだった。
荒れているどこか廃道で、ブッシュが繁茂し、あっても踏跡、崩壊地や土砂崩れしている所ではそれも途切れて、落石で足元が悪い、切れ落ちている所は滑落も怖い。
ブッシュは灌木もあれば、イラクサやアザミが優先しチクチク衣服を貫通してきて、場所によってはクズなどのツタ植物と相まって進めない。木本でもない植物で進めなくなったのは初めての経験だ。
疲労も限界の中でのこれまでにない悪路は本当に極く黙々と歩くしかなかった。
いつまで続くのかと思われた悪路もピンクテープの目印しかない、山の登山口でくるとやっとこさいわゆる林道と呼べるものになってくる。
あとはひたすら歩くだけ。おしゃべりしたり、歌を歌ったりしながら道を下ろしていき、18時くらいに入山地点に辿り着く。今日も昨日に引き続き、13時間行動。
本当に疲れた。計画を完徹はできなかったものの、総力戦での倉谷川の遡行は、沢登りの醍醐味が存分に詰まったもので、非常に満足のいくものとなった。
桜が池温泉で汗と疲れを流し、疲労感と充実感の余韻に浸りながら、暮れなずむ道で京都を目指したのだった。