【夏合宿沢班】奥利根源流西部継続遡行

山行名:奥利根源流西部継続遡行
日時:2020年8月10日(月) ~ 2020年8月14日(金)
メンバー:K川 Sモア 他1
ルート:
10日 08:40白毛門登山口駐車場-09:20ハナゲノ滝-12:00丸山乗越-13:00広河原-15:00大石沢出合C1
11日 05:30C1-06:501450m二股07:00-08:50大烏帽子山09:10-12:001300m地点-13:50赤羽沢出合14:00-15:50ジロウジ沢出合C2
12日 05:500C1-7:30ジロウジ沢四の沢出合-08:1025mスラブ滝09:10-10:30刃物ヶ崎山岩稜帯10:50-11:30刃物ヶ崎山11:50-13:20シバ沢1300m二股-15:00シバ沢30mの滝15:30-16:30コツナギ沢出合C3
12日 06:00C3-08:00コツナギ沢支流のっこし地点08:20-09:10下ゴトウジ沢出合09:30-10:30上ゴトウジ沢出合11:30-下トンボ沢出合C4
13日 05:50C4-07:00魚止めの滝07:30-08:10ブサノ裏沢出合-09:3020mの滝09:40-10:5060m大滝11:10-12:301750m二股13:30-縦走路-13:40牛ヶ岳13:50-14:20巻機山14:30-14:50巻機山避難小屋-15:10ニセ巻機山-17:10桜坂駐車場

ルート図はこちら

就職が決まって、プラプラしてたころに大学の部活のOBに連れられ遡行した谷川の万太郎沢。思えば上越国境の山々に足を踏み込んだのはその時が初めてだった。

一昨年に、楢俣川の遡下降万太郎を基軸に湯桧曽川本流詰める沢継続をして以来、この山域の魅力にはまり、その冬には大源太山谷川東尾根を訪れた。

昨年の夏になんとなしに繋げるのではと思った奥利根源流西部の沢。
台風であえなく流れたアイデアを今年もう一度練り直し、4泊5日での継続計画を立てた。
アプローチの悪さから記録も少なく、エスケープの悪さからもテンションが高い感じで緊張も高まる久々の長期沢継続、一昨年知り合って以降、そこそこ無茶な山行にも付き合ってくれる悪友となりつつあるTHさんを加えて挑む。果たしてどうなることやら・・・。

9日 長距離ドライブも慣れたもん
谷川方面に向かうのは久方ぶりだが、先日東北遠征した身には6時間のドライブは余裕。
THさんとの待ち合わせ場所である水上の道の駅に未明に到着し仮眠。

10日 上々な滑り出し
翌朝、寝ているTHさんを発見し叩き起して朝ご飯。
貰い物の鯖の棒寿司やおはぎをかき込む。ラストコンビニでの買い出しも済まして白毛門の登山口へ。

駐車場は多くの車で賑わっている。人気のナルミズ沢も何パーティーか入っているだろう。適当に準備していざ出発。ザックの重みが肩にずしりと来るのも久方ぶりの感触だ。

登山道に入ってすぐの分岐を右手にとり、堰堤を超えるまで林道を歩いて入渓。
ほどなく明るいナメが始まりいきなりテンションが上がる。
しばらく歩いていると、目の前が開けて大きな滝が迎えてくれる。
ハナゲの滝だ。なんでハナゲなんだろうか・・・
難しくなさそうなので右岸水流際を適当に登る。しっかりとした巻き道の入口もあた。
ふと振り返ると谷川を望むことができる。

滝上からも明るいナメが続き、気持ちのいい遡行が続く。
時折、小さい滝も出てくるがどれも簡単に登ることができる。
湯桧曽川ではないが、つちのこポットホールもあった。
キャニオニングのツアーパーティが引き返してきたが、どこまでいったのだろうか。

あっという間に上部の二股。ケルンが積んであって詰める方を指し示している。
詰めていくととくに藪漕ぎもなく薄いササの中をあるいてのっこし。
適当に下ろしていき1パーティを追い越してウツボギ沢へでて、ほどなくナルミズ沢へ。

大石沢のテント場を目指していく。
右岸には踏跡がついており、大石沢まで歩いて行けるのだろう。
最初は使っていたが、美渓部分をスルーしそうになったので慌てて水線に戻る。
釜と滝が連続してこちらも明るくていい感じだ。

途中、魚影が見えたので竿をだして進むが釣果はなし。
大石沢手前の2段の滝の手前左岸の草地に増水可のテント場を発見し今日の泊地とする。
設営をして薪を集めて上流に釣りに出かけると、すぐ上流側で1パーティがテントを設営していた。
挨拶をすると、「最近はみんな釣りするから魚がすれちゃったなぁ」とのこと。
地元の山岳会だろうか。よく入っているという感じだ。
大石沢出合の滝を右岸から越えて少しいった淵でいいサイズのイワナを釣り上げる。
空も暗くなり、雷の音もするのでそそくさとテント場に戻ると夕立がしっかり降ってきた。
タープの下で晩ご飯を食べる。今日はアルファ米にフリーズドライ。長期山行初日のおいしいけど物足りない感じだ。

6時半くらいに雨が止んだので焚き火をつけてほっと一息。
明日は長いのと昨日の長時間ドライブでうとうと、釣ったイワナも燻り途上のまま、焚き火の横で眠りに落ちた。

11日 天国のつめから懸垂祭り
3時起床。長時間の遠赤外線にさらされたことでイワナはいい仕上がりとなった。
うとうとしながらイワナをかじりながらラーメンを啜る。
おおむね準備ができたがまだ暗くてやる気が起きなかったので一眠りしてから出発。

昨日越えた滝を再度越えてさらに奥へ入っていく。
相変わらず、美しいナメ時々小滝といった感じで進んでいく。
S字の函は腰までつかりながら越える。朝ではあるが水はそんなに冷たくない。

8m魚止めの滝も左岸から簡単に越える。
この上に出ると大烏帽子がバーンっと迎えてくれて気持ちがいい。

その後もいくつか滝をこなしながら高度を上げていく。
1420m二股から先になると両岸が下がり、気持ちがいい感じとなる。
日差しも入り、お花もちらほら増えてきて天国感が増してきた。

朝日が差しこむところもあり、明るくて本当に癒される。
沢の規模は小さくなるものの相変わらずナメや小滝が連続する。
1600mから上は爽やかで明るい草原が広がり本当に天国のようなところだ。
ゆっくり休憩もとって思い思いに堪能する。

 

稜線はそれなりに密だが背丈は肩くらいのササをかき分ける程度で大烏帽子岳の山頂へ。
山頂からはとなりの朝日やこれから目指す巻機山へと続く国境稜線、大源田山や谷川、苗場、反対には尾瀬や平ヶ岳、越後駒と上信越の山々を一望できる。
ここ数年、足繁くこのあたりへ通ったおかげか山行の記憶がよみがえる。
よく見ると富士山まで見えた。

ここで天気予報を確認。ここから先は足を踏み入れると容易には抜け出すことは難しいので少し緊張する。
明日は崩れるものの増水して遡行に影響がでるほどでもなさそうで、その先は良さそうということで、のっこし決定。

大烏帽子岳から先の稜線上は踏跡はなく、シャクナゲの嵐だったことから稜線を外して東側の草地へ。
ここは、ナルミズ沢源頭と同じくらい天国みたいなところで、先の続く稜線を望みながら悠々と歩けて気持ちがいい。

そんなところ一瞬で過ぎ去り、コルに差し掛かるあたりからブッシュがひどそうだったので、稜線を避け沢を下ろすことにする。

のっけからとても急なので、灌木やササを繋ぎながら沢に下ろしていく。
沢は岩盤質で少し斜度がでると滝チックになる。
おしりズリズリや後ろ向きを多用し、それが難しい場合は斜面のササや灌木を掴みながら下ろしていく。

地図で見ていた時から等高線が詰まっているので大変だろうとは思っていたが、なかなか下降に時間がかかる。結局斜度が落ち着く1300m付近に500m下ろすのに2時間半くらいかかってしまった。途中、つかみどころのない眺めの斜滝で1回懸垂した。

ここから先は沢自体の斜度は緩くなるものの時折、3~8mくらいの滝が出てくる。
いくつかクライムダウンや巻き降りるのが厳しいものがあり、灌木を支点に懸垂下降。
赤羽沢出合直前に2つ続く10mくらいの滝を含め懸垂を4回くらいしてやっとこさ赤羽沢本流にたどり着いた。
赤羽沢出合はどちらも滝となっていていい雰囲気だ。


ここから先も白~赤っぽい色のナメや函地形が続くが、ハードな下降でへとへとになってきた。
ジロウジ沢出合手前のゴルジュは左岸から簡単に巻き降りて、出合の少し手前テント場を発見。増水は○。

タープを張ってほどなく夕立が降り始める。降ったり止んだり時には強くと、ほっこりしたい時間だけにちょっとうっとしいが、タープの下から時折日差しを受けながら降り注ぐ雨は少し美しくもあった。
今日も晩ご飯はタープの下。長期山行のごちそうペミカンカレー。油が疲れた体に染み渡る。

雨も一段落し、暗くなりかけたくらいから焚火を囲む。
ふと気がつくと、先ほどまで河原だったところに水が入り込んできている。
よくよく見ると水位が20cmくらい上がり濁りも出てきた。先ほどの雨の増水がワンテンポ遅くきたようだ。
雨も止み水位の上昇もたいしたこともないので、焚火もほどほどにタープの下で沈。

12日 悶絶の刃物ヶ崎山のっこし
朝起きると雨は降っておらず濁った流れも元通りとなっていた。
さて、今日は今山行一番の山場である刃物ヶ崎山のっこしである。
果たして無事に「奥利根の展望台」と呼ばれるマイナーピークに立つことができるだろうか。

棒ラーメンを啜り、出発の準備をすることには雨がしとしと降り出した。
予報通りとはいえ、ちょっとテンションは下がる。

ジロウジ沢四の沢出合までは、昨日と同じくずっと岩盤質で時折ナメや小滝が現れる。
ちなみに左岸にある支沢だけを数えて四の沢となっているようだが、一の沢だけ確認できなかった。

雨は降ったり止んだりの中、四の沢出合へ。テント場があるという話だったが、どこのことやら。

四の沢に入ってほどなく8mほどのハングの滝が現れる。
滝本体はとりつく島もなく、灌木の生えている右岸も取り付きが急すぎて灌木まで届かず。
左岸も急だったが中段くらいまで登って無理矢理ブッシュを掴んで這い上がる。
後続も無理矢理上がってきたが、ザイルを出してゴボウしてもいいくらい無理矢理だった。

 

この滝を越えると、四の沢の核心ともいえる25mスラブ大滝が現れる。
水量は少ないものの幅も大きくなかなかの迫力だ。
右岸水流際を登って灌木につっこむというルートもありそうだが、逆層のスラブに真正面から挑む勇気が出ず。

右岸に広がる草付の微沢を詰め上がり、灌木帯に入って滝上へトラバースするルートを選択。
微沢は多少、浮石に注意が必要なものの草自体も掴むことができ、順調に高度を稼げる。
スラブにぶち当たるので左の灌木の中に突っ込みさらに登り、滝の落ち口より少し高くまできたかなというところでスラブを横切る。
横切るところは斜度は緩く、薄いながらスタンスもあるが落ちたらアウトなので緊張した。

横切った先の灌木帯に意を決してつっこむが10mほど進んだら踏跡(獣道)っぽくなり、そんなブッシュをこぐこともなく滝上のほうへ進んでいけた。最後は軽くブッシュをこいで本流に復帰。
この滝の処理に緊張していただけにうまいこと巻くことができて一安心。
肝は滝の高さを見ながら思い切ってスラブをトラバースしたことだろう。

大滝を超えてからはこれといったこともなく、高度を稼ぐだけだが、重荷での沢歩きに若干の疲れも見え始めた。
本来であれば刃物ヶ崎のピークも望めるのだろうが、上部はどっぷりガスの中、雨も時折強く降る感じだ。

地図読みをしながら沢型で詰められるところまで登り、いよいよ沢型が消えてからはブッシュこぎというか、足下がずるずる滑る中を灌木を漕ぎ、掴みながら登るという感じ。
久々にシビアな詰め。ぜぇぜぇいいながら登るが全然稜線にたどり着かない。
一カ所、足もかからない段差があって空身にして越える。100m弱をあげるのに1時間弱くらいかかってやっとこさ稜線の岩稜に出て岩峰の手前で一休み。

距離で見ればあと少しなのになかなかピークが遠い。
2つある岩峰の一つ目は左手からスラブと灌木帯の境を歩いて大きく巻いて稜線に復帰する。復帰するところは藪漕ぎ。

少し尾根を進んで現れる2つ目の岩峰は1段登って右手にあるルンゼを登り灌木につっこんでブッシュを漕ぐ。
ほどなく斜度が緩くなり、埋もれかけの三角点に到達。
なんとか刃物ヶ崎山のピークに立つことができた。

しかも、雲が上がり青空もちらほら見え、国境稜線も少し見え始めた。
へとへとになったので、のんびり休憩しているとみるみるガスが少なくなり、目指す巻機や奥利根湖も見え始めた。まさに展望台だ。
今山行で立ちたかったピークなだけにうれしいご褒美となった。

巻機山の雪渓も明後日の遡行に大きな支障がでるようなものはなさそうだ。
なんとびっくり、ここでは携帯が入り明日以降の天気が確認できた。
夕立はありそうだが、基本的には天気もよく完走が見えてきた。

パウチのミカンなんかもだしてひとしきり休憩。写真を撮って出発。
次来るのはいつかな、これるのかな、残雪期かなと少し後ろ髪引かれるような気持ちでピークをあとにする。

そんなこんなでシバ沢へ。こちらも記録が少ない中での下降となるため、まだまだ気を緩められない。
右俣めがけてコンパスを切って降りていく。
大したブッシュこぎもなく、沢型へ入っていく。

相変わらず岩盤質で昨日の赤羽沢ほど斜度はきつくないものの、小滝が連続する。
基本的にはずるずるしたり、ササや灌木を頼りに降りたり巻いたりできる。
1カ所微妙に降りづらく、倒木を支点に懸垂した。

沢が大きく屈曲する1200m付近から斜度が出始める。遡行図ではこの先に40mと30mの大滝が続く。
今日の行程の終盤に差し掛かってテンションの高い箇所が続く。

40mの滝は確かにでかい。
左岸の斜面にいくつか立木があり、できるだけ低いところにあるところから、30mロープを2本つなげて懸垂。
斜度はわりと緩く安心して下せる。途中、灌木があるところからロープを投げなおして、下まで届いたのを確認して一安心。最後の数mは急だった。

2つくらい滝をこなすと今度は30mの大滝にぶち当たる。
また懸垂かなと思ってみるとなんと右岸から巻き降りれそう。
斜度もそんなでもなく軽く灌木を掴みながら簡単に降りれてほっと一息。
水量は少ないものの大きな滝を見物。

ここまでくれば今日の行程はあと少し。
少し並走したりもしてじらされたが、ほどなくコツナギ沢出合にでた。出合から少し上流にいった左岸に適地を見つけて幕営。ほどなく雨も降りだす。
今日もくたくたで薪を集めに出る気にもならない。
今日もタープの下でぺミカンを食べて、体と心を癒す。
濡れそぼった服を脱ぎ、毛下着を着て雨具を羽織るとぽかぽか。乾いた服のありがたみをひしひしと感じ、シュラフカバーにもぐりこんだ。

13日 緊張から安息日へ
昨日とは打って変わって今日は天気がよい。
飽きもせず棒ラーメンをすすって1日がスタートする。

今日は、記録が全く見つけられなかった小さい沢を遡下降して、尾根を越えてコツナギ沢から下ゴトウジ沢へ抜ける。
地図で見る限りは問題なさそうだが、実際に行くとなると多少の不安はある。

という訳で朝一で出発。テント場からほどなく詰める沢と出合う。
出合付近は草ブッシュがうっとうしく棘なんかもあったりして、ブタ沢臭がしたが、少し進むとナメときれいな滝が現れる。
ヌメりには注意が必要だが容易に越えられる。
越えたと思ったらそこからナメと滝が断続的に続く。朝のせいか沢から靄が上がっていて幻想的ですらある。

この山域はどの沢もこんな感じだが、小さな無名沢まで美しいとは。
途中、後ろを振り返ると昨日苦労して越えた刃物ヶ崎山を望むことができいい感じだ。

ふと足下を見るとヒラタケが倒木からにょきにょき生えている。昨日の雨のおかげだろうか。思わぬ収穫に小躍りする。

そんなこんなで上部の三股へ。地図で見るよりもいくつも小沢が入ってくるが、基本的にコンパスどおりでまっすぐ進む。
上部は少しあれていて倒木などが多くなってくる。ほどなく水も少なくなり早くも詰めの様相。
稜線直下まで沢型は続いていてブッシュもこぐというほどではなく稜線へでられた。

一息ついて反対側の沢へ。コンパスを切ってササをかき分けて沢型を目指す。
ほどなく沢にあたり、水も出てくる。
地図で見ても斜度があまりないので、予想はしていたが特になにかが出てくるということもなく高度を下ろしていく。
下部は多少ナメもありきれいな部分もありつつ、問題なく下ゴトウジ沢へ出ることができた。

未知の部分があっさり終わり一安心。沢に体を浸してすっきりもした。
さて今日の予定の行程はブサノ裏沢出合までと思っていたが、連日10時間を越える行動で疲弊していることや、今日が最後の宿泊なこともあるので、早めに行動を切り上げ下トンボ沢出合を泊地とすることとする。

規模の大きい下ゴトウジ沢を下降していく。ただの河原歩きだが、側壁が切り立っていたりして迫力がある。
上ゴトウジ沢出合には超快適そうなテント場があったが、下トンボにもいい場所があるという情報を信じて進む。

上ゴトウジ沢に入ると岩盤質となり釜持ちの小滝なんかが続く。
いい渓相の中を進んで行きほどなく下トンボ沢出合(出合だと思っていたがここは中洲で、本当の二股は少し上)に適地を見つけてお昼前に到着。
明日で下山できる見込みなので停滞食のラーメンに途中で見つけたヒラタケをぶち込んで食べたり、物を乾かしたりする。
時折雨もぱらつくこともあるが、タープもあるのでのんびり過ごす。

 

釣りに出掛けたが釣果は0。しかし、深い釜には記録にもあった鯉とも見紛う大きな尺イワナ、もはやアメマスではないだろうか。ルアーには見向きもしない王者の風格があった。
今日の晩御飯は行動も短かったのでアルファ米とフリーズドライの丼もの。
明日はブサノ裏沢を遡行して下山の予定、なんだか寂しくなってきた。

14日 2度目のハイライト ブサノ裏沢
今日も今日とて棒ラーメンを啜って1日が始まるが、そんなのも今日でおしまいか。

昨日、尺イワナを目撃したあたりからいくつか美しい釜をこなしながら進んで行く。
朝陽に照らされキラキラと輝く淵には時折、昨日と同じく巨大なイワナの魚影が過ぎる。

すると15mほどの魚止めの滝にぶち当たる。
右岸のリッジから登る。残置のハーケンも見えるが、出足が逆層で少し怖そう。
samoaが空身リードでハーケンを打ちながら登る。
斜度のきつい前半が終われば、あとは楽勝。後続は全荷で登る。

滝の上に出ると、燦燦と日の光が降り注ぎ、明るく開けたナメが始まりテンションが上がる。
7~8mほどの滝とナメが連続しため息のでる美しさだ。
おあつらえ向きの滑り台もあったのでウォーターシュートしたりして遊ぶ。

ブサノ裏沢出合から少し進むと大岩チョックストーンの滝。右手の隙間から空身で越える。
そこからもいくつか滝を越えていくと、これから遡行するブサノ裏沢の全景を含めて巻機山を望むことができる。ここを突き上げるのかと思うと爽快だ。

ほどなく20mの滝に行き当たる。なかなか大きくて迫力がある。
この滝は左岸の草付きを使って巻く。灌木はないが、草は割としっかりしていた。

滝上に二股があり、右股をとると滝が続く。
前段は快適に登攀できたが、後半はチョックストーンの滝が現れ、巻きを強いられる。
右岸のルンぜ地形に入って登っていくが、なかなかトラバースできるところがなく、上へ上へと押し上げられる。なんとか、灌木を使って右手に進み、尾根をのっこして、沢身に降りることができた。

またまた、快適に登れる滝をいくつかこなすと、ドドーンと開けて奥にこれまでよりもひと際大きい滝が懸かる。60mの大滝だ。
手前にはこれまで見えていなかった雪渓があったが、横をするっと抜けられる程度。
60mの滝の直下まで行き、その迫力を身で感じる。

さて、ルートはというと、なんと左岸の岩壁をフリーで登っていける。
少し滑るがずっと3級程度の快適な登り。こんな大滝を簡単に直登できるなんて儲けもんだ。青空を目指して思い思いに登った。

少し進むと薄いブリッジ雪渓が現れ、その先に登れなさそうな10mの滝がある。
雪渓て前からササ帯に突っ込んで巻くが、このササ帯が剛毛かつ急でなかなか厳しい。
ササを頼りに進むが足がずるずる滑るので腕が疲弊してきて、かなりしんどい巻きとなった。

滝上からも、今にも壊れそうな雪渓が続き沢もV字谷状になってくる。
ここも左岸の草付きを登っていきかなり大きく高巻く。登攀的な要素は無く、難しいわけではないが、かなりの高さのトラバースで高度感は満点だ。岩がちょいちょい出ている弱点を見つけて沢に降りる。

その先も崩壊した雪渓の間を駆け足で抜けたりしていく。
これまで雪渓を判断したことがないため、なかなか怖いがことはほとんど残っていないため、苦労しないほうなのだろう。

いくつか滝を越えると、だんだんと源頭らしい穏やかさが出てくる。
振り返れば尾瀬のたおやかな山々を望むことができて気持ちいい。

水が枯れる直前にまた雪渓が出てきたが、沢も広くて高さもなさそうだったので、雪渓の上を乗って通過。セオリー通り、ブリッジの足となっているであろう端から2mくらいのところを歩く。
歩ききって振り返るとまさしくそこが脚となっていて一安心。

あとは、枯れ沢から草地に入って稜線を目指すのみ。意外と斜度があり草地でずるずる滑ったりもするが、目指す空の青さがそんなだるさも打ち消してくれる。
平地になって笹原をザクザクザクと歩いていくとほどなく、牛ヶ岳と巻機の間の登山道へ出た。
入山から5日、烏帽子から利根川側に入って4日、ようやくここまでたどり着けて感動はひとしおだ。

広がる草原に木道が続くたおやかな山は、ここまでたどり着いた我々の心を癒すのには十分。
山頂からは奥利根湖やこれまで越えてきた、奥利根西部の沢と山を望むことができる。ここまでこれて本当に良かった。

鞍部に戻って、荷物をしょって巻機を目指す。ところどころに池塘がありこちらもいい雰囲気だ。花が少ないのは残念だが、計画通り目指す巻機のピークについた。
お盆中とはいえ平日だし、午後なのもあって人は誰もいない静かなピーク。
牛ヶ岳もここからみると、なかなか大きくて迫力があった。

名残惜しいがあとは下山するのみ。きれいに会談で整備された登山道を下っていく。
避難小屋を横目にニセ巻機に登り返すと山頂では全く分からない大きな山体として巻機を望むことができる。
また季節を変えて訪れてみたい。

あとは6合何尺などと、謎にポイントを刻んでくる標識に惑わされたりしながら最後の力を振り絞って下っていき桜坂の駐車場まで。
駐車場には見回りに来ていた地元の山岳会の方がいて、奥利根側に入るのは熊撃ちくらい、よう来たなぁと労ってくれた。

あとはタクシーで駅まで行って土合のあのだるい階段を登るのかと思っていたが、すでに土合に行ける電車はなくなってしまっており、そのまま関越トンネルを越えてもらって白毛門の駐車場へ。5日ぶりに愛車が迎えてくれた。

思い描いたルートで奥利根源流部をのたうちまわって歩きぬけた5日間。
こんなに充実した山行はいつ以来だろうか。
得も言われぬ充実と疲労の心地よさを感じながら、水上の街を後にしたのだった。

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