GW山行@上越 白砂山~苗場山縦走

GW山行@上越 白砂山~苗場山縦走
日時:2019年5月2日(木)~5月4日(土)
メンバー:K川
ルート概要
5/2 野反峠12:15~13:45八間山~16:00堂岩山分岐~18:00白砂山C1
5/3 C1 5:00~9:30佐武流山~13:30ナラズ山~15:45赤倉山下コルC2
5/4 C2 4:30~5:50苗場山台地上~8:30苗場山Peak~11:45神楽ヶ峰~14:30田代ロープウェイ

ルート注意点等
積雪は例年より多め。積雪量次第でコースタイムは大きく変わる。
アイゼンは使わず。しかし、雪の状況によっては必要。
地図読みは難しいところもある。特に佐武流山からの下り、赤倉山からの下りは視界がなければ厳しいだろう。

前々から大はりきりで計画していた朝日連峰縦走は仕事で行けなくなってしまった。失意のうちに実家に帰るが、連休の実家は大酒飲みの親戚連中がひっきりなしに出入りしており、連日浴びるように酒を飲む。このままじゃイカンと思い直し、以前から考えていた白砂山~苗場山の縦走に行くことにした。

5/2
朝7時に高速バスで東京に着く。上越新幹線で高崎へ。高崎からはJR吾妻線で長野原草津口を目指す。長野原草津口からはバスに揺られて、野反湖まで。バスは5月1日から運行開始。白砂川の渓谷沿いの道を小さなバスでゴトゴト登ってゆく。山里は桜の盛りが過ぎ、花吹雪が舞っていた。
野反湖はまだ結氷していて真っ白である。野反峠でバスを降りると、観光客やハイカーの姿はまばらだが、小さなドライブインが営業していた。なんとなく下界を離れがたく、ドライブインでそばを食べたりしていると12時を過ぎてしまう。覚悟を決めて出発する。
まずは八間山の山頂を目指す。登山口で数名のハイカーとすれ違った以外は誰とも会わない静かな山だ。ところどころ雪が出てくるが、広々とした笹原の尾根を気持ちよく登っていく。振り返ると榛名山、浅間山が屏風のようにそびえる。雪はない。しかし行く手の山々はいまだ真白に雪をまとっている。春から冬に季節を巻き戻すように歩いて行く。ピーク手前から雪べったりになり、踏み抜きながら登る。山頂では白砂山がどかんと姿を現す。見渡す限りの原生林と白い稜線に囲まれ、大きな山体にすっとのびた真っ白な頂上、なかなか秀麗な山である。いい山域に来られた、と自分の選択に満足する。山頂から先の稜線は雪庇も出て、本格的に残雪期の山となる。暖かく天気の良い日で、雪庇の根元(雪堤)をのんびり歩いて行く。歩きながら地図を見て、今日の幕営地を考える。進むも、泊まるも自由だと思うと、非常に気分が良い。登山道が合流した地点から稜線上の雪が途切れ途切れになったので、夏道を使いながら登ってゆく。日が傾き始めるが、なかなかいいテン場がない。あと少し、あと少しと思いながら歩くと頂上に着いてしまった。せっかくなのでピークテン場とし、整地をし、テントを張り、ごそごそテントに潜り込む。ご飯を食べ、酒も飲まず、シュラフにくるまり、ヘッデンの光で地図を眺める。風がテントをたたく音を心細く聞きながら寝る。

5/3
寒い夜だった。山ではいつも明るくなる前にテントを畳んで歩き出すが、今回は暗い中歩くのが怖くて、明るくなってから出発する。単独だからといって、こんなに弱気になるとはね。太陽には薄い雲がかかっているが、風はなく、暑くなりそうな日である。次なる山頂は佐武流山。白砂山から佐武流山までは道がなく、雪の時期にのみルートが開かれるのだ。(もちろん夏は藪尾根になり、一部の好事家だけが辿る)しかし南から望む佐武流山は上の方まで木が生え、イマイチ冴えない印象。
北へ続く稜線は雪をたっぷりまとい、東側にりっぱな雪庇、西側はタンネの疎林になっている。今日も気分良く雪堤を歩いて行く。しかし、気分が良かったのは、白砂山からの稜線を下りきるまで。以降は稜線が痩せ、雪堤が崩壊し、稜線上に雪はなく、西側はブッシュの急斜面になる。稜線が東西方向になると雪が少なくなるのだ。雪堤が使えないので、稜線の東側に入るが、細いタンネがバシバシに生えた雪の急斜面を延々とトラバースする事態に陥る。雪を踏み抜くと足を抜くのに一苦労。こりゃたまらんと稜線上に飛び出すと、雪堤の崩壊したブロックや、ブッシュや岩稜に阻まれる。稜線上には靴幅一つ分ほどの踏み跡があり、それを丁寧に探して辿る。ブッシュを漕ぐが、それでも一番マシである。2パーティーに追いつかれ、抜きつ抜かれつ行く。道連れがいて心強い。沖ノ西沢ノ頭から赤土居山の間は岩稜帯になり、雪が残る岩の上をヒヤヒヤしながら通る。大難渋して、佐武流に到着。目的地の苗場山が眼前に広がる。広大な森林の中にぽっかりと白い台地が浮かんでいる様は、海に浮かぶ大きなクジラの背のようだ。他のパーティーとはここでお別れ。以降はトレースもなく、いよいよ一人きりだ。佐武流山からの下りは、尾根が枝分かれし、ブッシュで見通しも悪く分かりにくい。とくにワルサ峰との分岐が分かりづらく、ワルサ峰方面に引っぱられそうになる。視界がないと厳しいでしょう。ナラズ山、赤倉山の登りも、ところどころ雪堤が使えずに苦労する。ふと振り返ると、佐武流山。北から見ると、山体は広々と大きく、北斜面は切れ落ち、みごとな崖になっている。崖には雪がたっぷりついてギラギラと太陽を反射していた。なんて雄々しい山なのだ。冴えないなんて思ってごめんよ。ブッシュを漕ぎ、雪にはまりつつも赤倉山まで。赤倉山からの下り口は非常に分かりにくい。地図を片手に右往左往しながら下る。下る途中でトレースを見つけ安心するが、よく見るとクマの足あと。なんとかコルまで下り、力尽きてテントを張る。一瞬、先ほどの足あとが頭をよぎるが気にしないことにする。見渡す限りの原生林である。どこにだってクマくらいいるだろう。テントを張って、苗場山を見ながらビールと焼酎を空け、クマになった気分でシュラフの中で丸まって沈。

5/4
今日は早起き。白々と明けゆく空を見ながらデッパ。タンネがぽつぽつ生えるゆるやかな尾根を、苗場山を目指して登っていく。最後のひと登りは少し急だが、ツボで十分。今回、アイゼンは使わずじまいだった。台地上に上がると、立派なタンネの森が広がる。タンネはまだ半分以上雪に埋まり、じっと雪解けを待っている。歩きつづけると、広大な雪原になった。こんなに広い雪原、はじめてだ。周りはぐるりと岩菅山、鳥甲山、谷川連峰と上越の山に囲まれている。ひと一人、ケモノ一匹いない。鳥のさえずりとウサギの足跡だけが、生き物の気配を感じさせる。適当に高いところを目指して歩く。遙か遠くに、屋根のようなものが見え、近づいてみるとやはり頂上直下の小屋だ。標識もない頂上でしばしぼんやりとする。
またてくてく雪原を歩いて、赤湯温泉への下り口に来るが、10mはあるかという巨大な雪庇に阻まれる。懸垂下降が必要でしょう。地形図を見て気づくべきだった。まだまだだなあ。しょうがないので、神楽ヶ峰からスキー場へ下りることにする。しかし、苗場山からの下りも雪庇こそなかったものの、めっちゃ急なのである。固いところはバックステップ、雪の緩んだところは胸まで埋まって下りる。なるほど、人のいないわけだ。神楽ヶ峰でようやく人に会う。あとは、スキー場のご好意でスキーコースの端を歩かせてもらい、田代ロープウェイから下界へ。真っ白な雪の世界から、一息に早春の麓へと下る。

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