夏合宿沢班B@ 谷川岳周辺 万太郎谷本谷~谷川岳~湯檜曽川本谷~朝日岳
夏合宿沢班B@ 谷川岳周辺 万太郎谷本谷~谷川岳~湯檜曽川本谷~朝日岳
日時:2018年8月12日~15日
メンバー:K川 Sモア
ルート:
12日 04:46土樽駅 ー05:30駐車スペースー06:30魚止めの滝ー06:45関越トンネル換気口ー08:50一ノ滝
ー10:30三ノ滝12:00ー14:00源頭部ー16:20谷川岳ー18:02一ノ倉岳ー18:35茂倉岳避難小屋C1
13日 08:14 C1ー08:33茂倉岳ー09:31笹平ー10:04武能岳ー10:45蓬峠ー10:51蓬ヒュッテC2
14日 02:59 C1ー03:01蓬峠ー03:57白樺避難小屋ー05:00入渓点05:30ー06:30十字峡ー08:00七ツ小屋沢出合
ー10:10大滝10:50ー11:00峠沢出合ー12:00 1390m二股C3
15日 C3 05:05ー06:00奥二股ー08:04朝日岳08:25ー09:27笠ヶ岳09:36ー10:22白毛門10:39
ー13:17白毛門登山口駐車場ー13:30土合駅13:50ー14:00土樽駅ー14:40駐車スペース
装備 沢足袋(フェルト) ヘルメット ハーネス ザイル30m カラビナ シュリンゲ ハーケン ハンマー カム(使用サイズ #1,#0.3)
レベル 中級 登攀Ⅳ
ルート図はこちらを参照→ヤマレコへ
今年の沢合宿は、 谷川岳周辺の沢を周遊するプランを立てる。万太郎を遡行し、稜線を歩いて湯檜曽川に入り朝日岳からさらにナルミズの方に行くプランた。
1日かけて京都から越後湯沢まで移動し、天気が悪かったのでさらに1日野沢などを観光し、出発して3日目にようやく入山となった。
12日 楽しい溯行のち激極ブッシュ漕ぎ
土樽の駅から万太郎谷沿いに車を走らせ、適当な駐車スペースに車を駐車。
準備をしてに林道を歩いていく。いくつか堰堤を越え万太郎の登山口お見送り、門のような堰堤が出てきたところから入渓する。
背後に見える稜線を眺めながら、堰堤からしばらくゴーロ歩いていくと、美しいナメが出てくる。
すると川幅いっぱいのナメが現れ早速良い渓相となってくる。
さらに進むと大きな釜を持った魚止めの滝が現れる。適当に釜を泳いで右岸に取り付き越えていく。
その後もいい雰囲気の釜や小滝をこなしていくと突然巨大な人工物が。この沢の真下を走る関越トンネルの換気口だ。
これを見送って少し先に進むと、序盤のハイライトであるオキドキョウの入口だ。
狭まったゴルジュの中にオキドキョウ沢が滝となって流れこみ、その奥に淵が続いており、その出口は滝となっている。以前来た時は10月なのでサクッと巻いたのだが、今回は中を突破することとする。
淵の中の流れに負けじと進んでいくが、出口の滝の水量が物凄く、とてもシャワーで越えるという感じではないため、最後の滝は左岸バンド状を伝って越える。
オキドキョウからすぐの釜持ち二条は右岸から巻き気味に越える。
そこからしばらくは、いい形の滝とナメ床が連続する。
特に困難なところもなく楽しい溯行。日も差してきて美しい。
そんな中を進んでいくとこれまでとは規模の違う大滝が現れる。
25m一ノ滝だ。なかなかの迫力に圧倒される。直登もできるようだが、難しそうなので左岸のルンゼから灌木帯に入って巻く。
さらに進むと一ノ滝ほどではないが10mを超すであろう二ノ滝が現れる。
これは左岸からわりと簡単に登ることができる。
その先にも小滝がいくつか続く。
開けていた沢が狭まりおどろおどろしい感じとなると右岸から滝が二本合流し、その先の沢が斜度をましガスの中の稜線に向かって高度を上げている。ここが三ノ滝沢出合。
本流に懸かる三ノ滝は右岸から合流する一本目で、逆くの字に曲がった二段目は末広がりの美しい滝となっている。
本日核心部分でザイルを出して登はんにかかる。
一段目は水流右側の少し立ち気味のルンゼを一段上がり、バンド状を左に進んでスラブ状の上部へ出る。
残置ハーケンもありルートは分かりやすい。確保支点はカムで取った。
リード、セカンドとも空身。ルンゼの上から上手いことザックは吊り上げた。
なかなか緊張。
二段目は水流右側を少し上がったあとに右の枝沢に入って登っていき灌木帯に入って後続ビレイ。
そこからは灌木帯の中に入って滝上へ巻き出る。
三ノ滝を越えると規模も大分小さくなり滝も少なくなる。
さらに進んでいくと斜度が増し源頭の雰囲気となり、時折出てくるスラブ状の滝をこなしながら高度を稼ぎ、眼下に溯行してきた沢を見下ろすことができる。
途中で、肩の避難小屋ではなく、トマノ耳とオキノ耳の間に詰め上がる沢に入っていることに気づくが、こちらも肩方向同様、軽いササブッシュ漕ぎで稜線に出れるかと思っていたが甘かった。
だんだんと沢に覆い被さるササが増えて行くとともに斜度が増していき詰めるのが難しくなったため、ササが繁る急な微尾根をササを掴みながら登っていく。
このまま稜線まで出れるかと思いきや、最後の100mくらいが灌木とハイマツのブッシュ帯。
久々に絶望しながらも、無理矢理漕いで進んでいき、命からがら稜線へ飛び出す。
最後の標高差200mで2時間かかった。
久方ぶりの激極ブッシュで心身ともにボロボロとなり、フラフラとトマノ耳を往復し、オキノ耳の先を目指して進んでいく。
詰め上がりのときにかかっていたガスがちぎれちぎれとなり、美しい稜線と迫力の谷川東面を望むことができたのは不幸中の幸いか。
溯行する予定の湯檜曽川を挟んで向かい側には目指している朝日岳も見えた。幻想的なガスと夕陽に照らされながら日没直前にヘロヘロになりながら、立派な茂倉岳避難小屋へ。
綺麗な山小屋でスープを飲んだり、ペミを食べたりしてボロボロになった体を癒す。
明日以降の天気予報は弱い前線と湿った空気の影響で読みにくい感じだ。明後日明々後日のほうが天気が悪そうなので、明日は白樺避難小屋にでも行って天気の様子を見てみることにして沈。
13日 救いの蓬ヒュッテ
今日はナチュゲ。外は晴れていて気持ちのいい青空が広がっている。
ラーメンをかき込んでのんびり出発。
茂倉岳に登り返すと谷川の雄大な稜線で長く続く稜線を見渡すことができる。縦走できても十分楽しめそう。
続く無能岳への稜線もいい感じだ。
トリカブトやリンドウ、ミヤマアキノキリンソウなどすっかり秋めいてしまった花たちを眺めながら稜線歩きを楽しむ。
しかし、2時間ほどで無能岳にたどり着くころには青空はすっかり消え遠雷まで鳴り出す。
無能岳から下り始めでポツリポツリと降りだした雨があっという間に本降りになってしまう。
びしょびしょになりながら蓬ヒュッテに転がりこむ。
最初は休憩のつもりで入ったが、みるみる外の雨が強まり雷もどんどん近くなる。しまいには光った一秒後には雷音がする始末。
小屋から下ろうとした管理人が近すぎるといって戻ってきたくらいだ。
びしょびしょで身も心も萎えてしまったので再度作戦会議。
携帯は入るものの天気は依然変わらず。
天気の読みにくい中、増水が怖い湯檜曽に入れるのかという疑問に結論が出せないまま、体が冷えていき、もう下山かもという弱々しい考えまで出てくる。
もう考えるのもいやになりステイ食のラーメンを食べて外の雨音を聞きながら小屋の毛布にくるまりふて寝する。
13時過ぎくらいに小屋に人がやってきて目を覚ます。
窓から外を見ると雨は止み日も少し差している。
ガスは多いものの小屋の回りの気持ちのいい笹原を眺めているうちに服も乾き気力も回復してくる。
再度、作戦会議。今日は携帯も入りこの快適な小屋で停滞し、明日未明から行動、日の出とともに入渓すれば、増水しても問題ない安全地帯までは5時間なので今日、雨の降りだした時間までには抜けれるであろうと判断し、明日湯檜曽川に入渓しようと腹をくくる。
さっき小屋にやって来たひとは早稲田生物同好会OBで蓬ヒュッテとのゆかりや、同好会の活動や谷川周辺の山の話、その人が四国にいた頃の沢登りの話などいろいろ聞けて楽しかった。
酒とつまみを消費していると15時過ぎくらいにもう一人やってきた。聞けば白毛門からやって来たとのこと。
かなりの健脚だ。明日は主脈を越えて最後は三国峠まで抜けるらしい。確かにそんな長い縦走プランを立てて歩きたい稜線だ。
明日は今日よりも天気は持ちそう。そんなに動いてもいないのにペミを食べて鋭気を養い沈。
14日 湯檜曽川溯行と夕暮れの増水
気合の2時起き3時デッパ。
湯檜曽目指して夏道を下ろしていく。白樺避難小屋を見送り、無能沢沿いに入渓点を目指していると自分達の少し先で木の上からなにかがガサガサガサっと下りて、奥の藪へと消えていく。
先を歩いていたtentyo曰く明らかにサルのサイズではなかったそうで、どうやらツキノワグマという結論に達する。本州でクマと出会うのは初めてだ。
そーっとすばやくそこを抜けて、魚止めの滝ゴルジュの上にでる踏み跡に入る。
無能沢に下る屈曲のところが入口でケルンもある。少し進むとテープもところどころ付けてある。
踏み跡辿っていくと大きな河原へ出て入渓となる。
少し河原歩きをして、小滝ながらも迫力のある滝をいくつか越えていくと、両岸が狭まりなが長い淵が出てくる。
ウナギの寝床とはよく行ったものだ。深いながらも流れは緩く、朝イチ泳ぎの悲鳴を上げながら進んでいく。
沢が直角に曲がると8mの滝が豪快に飛沫を上げている。
右岸をわりと簡単に直登できる。
その先には大きなナメ滝が三段続きとても美しい。
そのおくには抱返り沢が50mはあろうかという滝を抱えて注ぎ込む。
右手からは大倉沢も滝で合流し本流は再度直角に曲がる。
いわゆる十字峡。なかなか筆舌しがたい雰囲気だ。
本流を進むと再び長い淵となる。こっちはアナゴの寝床。
出口は2段8mの滝となっている。
右岸のバンド状を上手いこと通り抜けて突破。
さらにその先には2段20mの抱返りの滝が待ち構えている。なかなかの水流と迫力だ。
一段目は適当に上がりの左のルンゼを登っていき滝の高さを見ながら灌木をこぎならがら微尾根を越えて沢におりる。
ルンゼを登りすぎると沢身に降りられないので注意が必要だ。
抱返りの滝上からは釜とナメ滝が連続して美しさのハイライトととなる。
テンション上がりながら思い思いに歩いていく。
三条10mの滝を右岸のチムニー状から越えると七ツ小屋沢出合。本流は右から滝で入ってくる方だ。
出合からも小滝や小ナメ、釜が続いていい感じだ。ツチノコポットホールも見つけることができた。
釜持ち8mの滝は右岸巻き。
さらにその先にやや幅広の10mの滝が現れる。今日の核心一つ目。
左岸に残置支点のあるルートがある。一段上がったところにある外傾気味のバンド状をトラバースしていき、水流右を直上する。
3つ目の支点のスタンスが不安定でなかなか緊張した。
確保支点は残置ハーケン2枚にカムでバックアップ。
核心を一つ越えて一安心。
その上も滝がポンポンポンと出てきる。快適に登っていけるかと思いきや、曲がり滝の上段で少しつまる。
ホールドを見つけ空身にしてハイステップで突破。ザックを受け渡しというときにデジカメを流すトラブル発生。
すぐ下の釜をゴーグル着けて潜ってなんとか発見して事なきを得る。
滝で合流する支流を見送ると一転して礫質の岩質となり、少し進むと2段15mの滝が出てくる。
一段目は登れそうだが、二段目はどこを登るかもよく分からないので左岸の草付の踏跡を巻く。
沢に復帰してV字谷を進んでいくと2段40mの大滝へと辿り着く。素晴らしい迫力だ。
下段は階段状で簡単に登れる。
上段は左の側壁にルートがあり残置支点もある。
バンドからチムニーを直登するところはスタンスがなく残置のアブミを使いながら登る。チムニー出口のホールドも少な目なのでカムを使ってセカンドのためにシュリンゲをかける。
そこから上は灌木を目指して登り、灌木を支点にセカンド確保。
その先は灌木と草付きの間のバンドを滝上目指して歩いていく。念のためここもザイルで確保した。
大滝を越えるとほどなく峠沢出合。核心二つ目を越えて一安心。
再び開けて明るくなった沢を歩いていく。10mの滝は巻き道もあったが、左岸の滝身横が登れた。
その後もナメや小滝を小気味良くこなしていって二股まで。少し探すと素晴らしいテントサイトが。
高台ではないが草木もわりかししっかりしていて大増水に耐えられそうな感じだ。
安全地帯まで抜けたので今日はここで行動終了。
適当に設営をして一息付きがてらラーメンを作って食べる。
やはり午後になると雲がモクモクと湧いて時折ぱらついたりもするが大きく崩れることはなく、酒を飲んだりうとうとしたりしながらのんびり過ごす。
夕方にはペミを食べて、そろそろ床に付こうかというころにわか雨が降り始める。
みるみる雨脚は強くなり激しい雨へ。雷も激しくなり、近くの稜線に落ちたりもしている。
少し水の滴るタープの下でやり過ごしていたが、沢もみるみる30cmほど増水し川幅一杯の流れとなってしまった。
軽く荷物をまとめて沢足袋を履いて少しだけ様子見。
1時間超くらい雨は降りしきり弱まっていった。
改めて増水した沢を見たが溯行できないというほどは増水していない。
まあ、まだ多少降っても問題ないということで改めてシュラフを広げて潜りんで眠りに落ちた。
15日 朝日岳に詰め上がり稜線で土合へ
3時起きで相も変わらず棒ラーを食して出発。
昨日の増水が嘘のように引き穏やかな流れに戻っていた。
二股から先は大きな滝もなくちょい小滝をこなしながらゴーロを歩いていくといつしか沢はV字谷となる。両岸は草付明るくいい感じ。
斜度も増してきて時折小滝を超える度に振り向く無能岳や大源太山なんかを望むことができる。
最後はササブッシュを掻き分けながらになるが、今回は沢型、踏跡をしっかりた辿れ、灌木もさほど出てこない。万太郎の源頭に比べれば敵ではない。
ハリギリにだけ気をつけて登っていくと山頂直下の湿原に飛び出した。
振り返ればポツポツと池溏を湛えた広々とした稜線が広がりとても気持ちがいい中を歩いて朝日岳ピークへ。
となりのジャンクションピークの奥には巻機山がちらっと見えている。
苗場の向こうには妙高火打のような山も見えている。
谷川や尾瀬方面はガスで少しがっかりだが、それでも十分最高のピークだ。
これから降りる笠ヶ岳、白毛門が連なる稜線もなかなかの迫力だ。
一緒になった富山の老岳人としばし談笑してピークをあとにする。
お盆だというのに稜線ではあまり人に会わなかったが、出会った人たちは渋い雰囲気の人たちばかりだった。必ずまた訪れよう。
見た感じで分かっていたことだが、大天狗、小天狗、笠とアップダウンがしっかりとある。
標高を下ろしていくうちに暑くもなってきた。
白毛門からは赤城山の向こうに関東平野まで見ることができる。
谷川東面も稜線部はガスガスながら、おどろおどろしい一ノ倉沢を初めとする大岩壁を望むことができていい感じだ。
この稜線は不思議なことに上から見るとたおやかなピークでも、越えてから振り返ると荒々しい感じとなる。
白毛門から少し下るとほどなく樹林帯に突入する。
ブナ林帯になると少し涼しくなるから不思議なものだ。
下のほうまで美しいブナ林を下ろしていき土合橋の駐車場へ。
そこからさらにもうひと踏ん張りし、三角屋根の可愛い土合駅へ辿り着いた。
3泊4日、沢の継続がきちんとできたのは西表以来かもしれない。
疲労感と充実感に満ちた良い山行となった。
と思ったのも束の間、土合駅のもぐらホームまでの長い下り階段にやられたり、土樽駅から間一髪、スコールに捕まる前に車を回収したりして、沢合宿は幕を閉じた。