縦走@九州中央山地・扇山、霧立越えから三方山、国見岳、白鳥山へ

ルート概念図椎葉ルート図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椎葉村は九州のど真ん中に位置し、九州の中央山地の真中心だ。

松木登山口より南の山々

松木登山口より南の山々

焼畑農業が最後まで残っている地域で、山村文化にも興味が尽きない。

学生時代からこの村の存在だけは知っていた。

いつかこの界隈の山を巡りたいと思っていた。

だが、今まで実行できないでいた。

西日本は植林や林道が隅々まで巡らせてある。

山奥の深い自然が少なく、どうも面白みに欠ける。

主稜を何箇所か道路が越えており興醒め感は否めない。

 

それでも、一応、九州の中央部の恐らく一番山深い地だと思われる。

横に枝を張るブナ

横に枝を張るブナ

広島に転勤になり近くになったことでようやく出掛けることにした。

今回の計画にあたり、広大な椎葉村の西側を占める耳川流域を囲む形で縦走

することとした。霧立越えの古道はその響きや位置にも感慨深いものがある。

起点を扇山松木登山口、終点を白鳥山の西の唐谷登山口とした。

起点には上椎葉から民宿の車を利用、終点から上椎葉間は自転車利用とした。

民宿は知り合いが2泊するので、宿の車で送ってもらえることとなった。

広島を早朝3:00に出発、山陽道、九州道で一路椎葉村に向う。

扇山山小屋

扇山山小屋

自転車回送のため先に下山予定の唐谷登山口へ向かう。

二本杉峠、五木村廻りで峰越を越え、ようやく辿り着く。あいにく雨模様だ。

御船ICから2時間以上掛かった。狭い道が続き運転に疲れた。

その後上椎葉の民宿で2人を降ろし、宿の車で松木登山口へ。

 

【行程1日目】 行動時間 2時間00分 天気 小雨のち曇り

松木登山口13:10?14:15扇山山小屋16:05?16:25扇山16:45?17:00扇山山小屋

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松木登山口から扇山山小屋へ

上椎葉の中心部から登山口までの車道は思ったより長い登りが続いた。

扇山山頂より江代山方面

扇山山頂より江代山方面

尾根の突端にある登山口はだだっ広い。

南の展望が開け、椎葉村の南の山々が見渡せる。

幸い雨は降っていない。

すぐにブナの木が続くようになり、急な勾配を詰めて行く。

概ね尾根の西側に道が続く。

1,518m峰から先は勾配が緩やかで楽になったが雨が降り出した。

灰色の雲が垂れ込め、寒い。

1,553m峰手前より朝の扇山

1,553m峰手前より朝の扇山

いろんな形のブナの木を愛でながら登山口から1時間あまりで扇山の山小屋へ。

立派な小屋のすぐ手前に水が少し出ている。

今日は夜中からの夜行の運転に疲れた。

なので早速小屋の中で寝袋を出し仮眠。

 

 

扇山山小屋から扇山へ往復

2時間ほどして雨は止んだので扇山山頂へ往復。

森に続く霧立古道

森に続く霧立古道

夕暮れの中、墨絵のような山々の重なりが続く。

遠くの江代山にはガスがなびいている。

小屋は他に誰もいなく、しばらくラジオを聴いてから就寝。

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【行程2日目】 行動時間 8時間45 天気 曇りのち濃霧、風雪

扇山山小屋6:40?7:45馬つなぎ場7:55?9:15白岩山9:20?9:35日肥峠(白岩峠)9:35?10:00坂山10:05?12:30三方山12:45?13:05椎矢峠13:10?13:35高岳?15:25山池湿原

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扇山山小屋から日肥峠(白岩峠)、向坂山へ

今日は山行の中日。

ブナの曲がりくねった枝

ブナの曲がりくねった枝

朝からどんよりしている。

緩やかに下り、鞍部から西側を巻く。

草原状になっていてアセビの疎らに生えたところを通る。

尾根には岩が露出していて変わった風景。

1,553m峰手前で尾根の東側に移り、幅の広いゆったりした道を進む。

7:15に西から今日最初のお日さまが射してきた。

尾根の西、東を交互に、古道は勾配がきつくならないように続く。

向坂山からの下りで

向坂山からの下りで

朝日はつかの間、いつの間にか雲の底が低くなってきた。

1,443m三角点手前が馬つなぎ場で、ここでしばらく休憩。

いつのまにか小雨模様に。

地形図にある白岩山は「九州脊梁登山地図」によると水呑の頭であるらしい。

天気が良くないので山頂には寄らない。

その手前で西側を巻く。

次のピークが白岩山で、希少植物を鹿から守るため柵がしてある。

風雪舞う三方山山頂

風雪舞う三方山山頂

少し展望を楽しむが、次第に風が強くなってきている。

だらだらと下って日肥峠(白岩峠)へ。

カラフルで新しい霧立越関所という看板が建っていていい休憩場だ。

ここから先はやや急な登りとなり次第に濃いガスに包まれる。

日肥峠(白岩峠)から30分で向坂山に着いた。

黒岩、小川岳方面からの道が北東から合わさる。

風が抜け、濃いガスで何も見えない。

濃霧、風雪の椎矢越

濃霧、風雪の椎矢越

いつしか雨は霙になっている。

 

向坂山から三方山、椎矢峠へ

ここからは進路を西に変え、下っていく。

ガスはますます濃くなり、気温も低下してきた。

長い長い単調な歩きを続けるが霧の中に現れるブナの美林に和む。

霙は雪に変わり、地面も少し白くなってきた。

天女ヶ岩を通過し、三方山へ

1,509m峰の東にある道標

1,509m峰の東にある道標

寒々しい山頂で昼ご飯とするが、寒くて落ち着かない。

乳白色の中、南西に下降して20分ほどで荒れた林道へ。

わずかで椎矢峠に着いた。

寒風と雪が北から吹き上がっていて寒くて留まれない。

 

椎矢峠から山池湿原へ

林道から先の道を探すが何故か見当たらない。

少し林道を南に歩き、適当なところから上部を目指す。

藪の無い広い尾根を進み、だだっ広くなった高岳に着く。

山池湿原

山池湿原

 

風が吹き抜ける特徴の無い山頂だ。

ガスが濃いのでここから慎重に進路を決める。

時々赤の目印があり、南に向け下る。

尾根が細くなる手前で使い込まれた古道と交わった。

しかしこの道は潅木にところどころで塞がれていて歩き難い。

緩やかで勾配が緩いが時に遠回りになっている。

進む尾根が明確になったので古道を利用する。

時に古道を外れ、歩き易い場所を選んで進む。

湿原の西端で

湿原の西端で

風は一向に止まず、雪で地面は白くなってきている。

1,509m峰のすぐ東側にはルートを示す道標があった。

ここでルートは右に直角に折れる。

濃いガスの中、黙々と歩き、1,575m峰の北に辿り着く。

ルートは峰の東側を巻くように付いている。

西への踏み跡や分岐が見つからない。

道を東に巻くとやがて怪しくなって自然消滅。

戻って1,575m峰の北側をかすめて東に進路を採る。

踏み跡は判然としない。

そのまま緩やかに広い尾根を下ると、平坦地に着いた。

ブナやミズナラ、トチらしい大木の林になっている。

ここが山池湿原であるらしい。

晴れていればきっと美しい光景だろうと想像できる。

今日は濃いガスでぼんやりと大きな木々が見えている。

かなり寒く、疲れもあり、先に進むのは止めよう。

風が当たらない湿原西端の大木の袂でテントを張る。

斑な湿雪をどけて落ち葉を敷き詰めた。

水は小屋から持ち歩いた。

これで快適な一夜が過ごせる。

11月半ばの九州で雪になるとは思わなかった。

 

【行程3日目】 行動時間 7時間30 天気 晴れ時々曇り

山池湿原6:55?7:50国見岳8:20?五勇山9:35?10:50烏帽子岳11:05?12:25椎葉越12:30?12:45峰越12:50?13:30御池13:35?13:50白鳥山13:55?14:25唐谷登山口

(自転車移動 唐谷登山口14:30?16:00上椎葉)

 

山池湿原から国見岳へ

夜明けの山池湿原

夜明けの山池湿原

風の収まった静かな夜が明けた。

山行最終日にようやく晴れてくれた。

まずは九州中央山地の盟主国見岳を目指す。

緩やかな疎林の続く尾根は藪が無く、薄い踏み跡が続く。

背後から朝の光が森に射し込み美しい。

昨日とはうってかわって素晴らしい天気だ。

杉の木谷の登山道合流は気付かないまま。

国見岳への登り

国見岳への登り

やがて左に斜面をトラバース気味に進み、国見岳の北東の肩へ。

支尾根の乗越のすぐ先に水場がある。

水場は氷が張っていて、ほんの僅かしか流れていない。

ここで行動水を汲む。それにしても汲むのに時間が掛かる。

ここから短い笹原の尾根を上がる。

水場から10分足らずで待望の国見岳山頂へ。

快晴で祖母山や昨年縦走した傾山から大崩山、阿蘇、九重も見える。

国見岳山頂

国見岳山頂

それに昨日歩いた霧立越の山稜が向い側に長く連なって見える。

山頂は朝が早く、まだ誰もいない。

30分あまり展望を楽しむ。

 

国見岳から烏帽子岳へ

山頂の立派な社で無事を祈って出発。

気持ちのいい笹原とブナの疎林の中を歩く。

阿蘇・九重方面を望む

阿蘇・九重方面を望む

概ね尾根の東側を巻いて進む。

昨日の雪で道が薄っすら白く染められルートは明瞭。

分岐に荷を置き、小国見岳に寄り道。

あまり景色は見えないが静かな山頂。

緩やかに長く下り、短めに登り返す。

左にトラバースして萱野からの登山道に合する。

この分岐で右に鋭角に戻るような方向に進む。

五勇山への道

五勇山への道

このすぐの高みが五勇山かと思っていたが看板が無い。

進路は西に向う。

1,654m峰の先で南側の展望が開ける。

ここから登りで15分、烏帽子岳山頂へ。

休憩しているとひとりの登山者と出会う。

五勇谷登山口から烏帽子岳、国見岳へと周回するという。

しばし回りの山の話をして過ごす。

烏帽子岳手前より国見岳を望む

烏帽子岳手前より国見岳を望む

今回の山行で初めて出会った登山者だ。

 

烏帽子岳から椎葉越、峰越へ

烏帽子岳からは真南に進路を採る。

細かなコブを幾つも越えながら緩やかに下っていく。

途中、椎葉村側の斜面が明るい薄茶色になったところが見える。

あれが焼畑の場所だろうか?

烏帽子岳より南を望む

烏帽子岳より南を望む

下るにつれ、進行左側に山深い椎葉村の山村が散在するのが見える。

奈良の十津川村や徳島の祖谷山村などとよく似ている。

いわゆる外帯と呼ばれる急峻な地形でここは中央構造線の西端だ。

山頂から1時間ほどで外国人を連れたグループとそれ違う。

その後20分ほどで椎葉越に到着。

「追手納へ60分」の標識や「ぼんさん道」と書かれた道標が建っている。

杉の木の下でしばし休憩。

登山道脇のブナの大木

登山道脇のブナの大木

いにしえの峠越えの風情を想像する。

椎葉越からはひとつピークを越えて車道に出る。

ここが2日前に車で越えた峰越の峠だ。

 

峰越から白鳥山へ

峰越では休憩なしでそのまま車道を横切りすぐまた山道へ。

空はいつしか薄曇になってきた。

椎葉村の谷あいを望む

椎葉村の谷あいを望む

しっかりした広幅のハイキング道を進む。

細かなピークが4つほど連なり、意外とアップダウンがある。

やがて広々した微高地に囲まれた御池という場所に来た。

石灰岩のカルスト地形になっている。

苔で覆われた独特の庭園のような風景が広がる。

柵で囲まれ、保護されている。

その奥に湿原化した池があり、大きな木で囲まれてる。

カルスト地形

カルスト地形

雲が広がってきて森の中が薄暗くなり、寂しい雰囲気になってきた。

道標に導かれ、10分あまり。

ブナの大木の間を登りつめると白鳥山だ。

今回の縦走の最終地点。

すっかり空は曇り空。

山頂は展望があまり利かないが短い草の広場になっている。

 

白鳥山から唐谷登山口へ下山

御池先のブナ林

御池先のブナ林

あまり長いはせず、下山にかかる。

すぐ下の鞍部で、民宿に携帯で到着予想時刻を連絡。

植林の中となった急な谷道を一気に下る。

鞍部から20分ほどで自転車を停めた唐谷登山口へ降り着いた。

 

下山後の自転車移動は大変

縦走終了もつかの間、自転車で上椎葉中心部の民宿へ移動だ。

縦走の終わり 白鳥山

縦走の終わり 白鳥山

途中、焼畑の村を抜け、日向椎葉湖までは下り一方

風が冷たいが疲れた体には爽快だ。

さて不土野橋を過ぎて、上福良橋から先が問題だ。

県道はダム湖に沿って微妙にアップダウンを繰り返す。

荷を背負って登り坂を時には押して歩く。

上椎葉ダムの手前は急坂が続き特にきつい。

ここを過ぎると一気に上椎葉の町へ滑り込む。

椎葉の山村を自転車で下る

椎葉の山村を自転車で下る

後で分ったが距離33kmほど、1時間半を費やした。

今までで一番長い回送だった。

民宿森の宿三越で3日間お世話になった2人と合流。

登山口まで送っていただいたり、1日目朝から3日目夕方まで

長期滞在させていただいたり、村の観光につれてもらったりと

親切な宿の方々に大変お世話になった。

30分あまりお話して、宿で教えていただいた道を通り九州道へ。

深夜に広島着。

 

 

今回、九州中央山地は初めて縦走した。

天候には最初恵まれなかったが、充実した山行となった。

稜線はブナを主体とした雰囲気のいい森が続いており、意外と山深く感じた。

上福根山や白鳥山以南の縦走、京丈山からの縦走も面白そうだ。

北の九重、阿蘇や南の霧島とは全く違った縦走ができる貴重な山地だ。

九州の秘境、椎葉村にまたいつか来よう!

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