縦走@北ア・北鎌尾根から槍ヶ岳

槍ヶ岳へは過去4回登っており、西鎌尾根、東鎌尾根、穂高からの縦走など各方向から登頂した。
残された北鎌尾根は憧れでもあり、今回登ってみることにする。
地形図と雑誌などの情報からピークの位置合わせを行い、2,3のホームページも参考に調べた。
初日の泊地を北鎌沢出合とすれば2泊3日で余裕を持って行けそうだ。
平湯を起点に上高地から水俣乗越経由で北鎌沢出合に降り、槍ヶ岳からは槍平経由で新穂高温泉へ下山しバスで平湯へ戻る計画とした。

【行程1日目】行動時間 8時間30分 天気 晴れ
上高地バスターミナル6:30?9:10横尾9:30?10:40槍沢ロッジ10:55?11:50大曲12:00?12:50水俣乗越13:10?15:00北鎌沢出合

上高地から水俣乗越へ

北鎌沢出合で泊まる


6時が始発バスだと思っていて、その時間にバス停に行くと空いている。
もう何台か先に出発して行ったようだ。
6時半上高地を出発。
さすがに3連休なので登山客、観光客で大賑わい。
明神、徳沢でそれぞれ10分休憩をして横尾まで2時間40分掛かった。
天気が良く、陽が当たる場所では暑くて休憩できない。
山道になり、梓川の流れが直ぐ側になる。
今日は水の色がすごく美しい。
槍沢ロッジで15分休憩して大曲に12時前に到着。
少し沢を上がった木陰で休憩。
ここからの急登で大汗を掻く。

北鎌沢のコルより鷲羽岳

ゆっくりゆっくり背後の風景を楽しみながら高度を稼ぐ。
今日は意外にも登山者の姿が多い。
乗越に着くと、4人パーティと2人パーティの方々が休憩しており、北鎌を目指しておられた。
さすがに北鎌はメジャーな場所だ。
木陰が無く風も無く暑い厚い!

水俣乗越から北鎌沢出合へ
暑くてバテ気味だが目の前に広がる天上沢への急下降に入る。
踏跡はしっかりしているがザレていてスピードは出せない。
潅木などに掴まりながら100m弱下ったところで雪渓が出てきてその上に降り立つ。
スプーンカットの縁を踏みながらスリップに注意しながら下る。

北鎌尾根末端と燕岳、針ノ木岳

やがて雪渓が終わり河原状の礫の中を歩きやすい場所を選びながら下降するが、風が無く日陰も無いので暑くて歩行が捗らない。
標高2,100mで左岸から水流が現れ、一息付く。
前後のパーティと一緒になり休憩。
水は冷たくないので、どうも雪解け水では無さそうだ。
午後の気だるい中、単調に河原歩きを続け、標高1,930mで左岸の大きな流れに合流した。
続いて右岸に西岳から下ってくる流れを合わせる。
さらに10分余りで北鎌沢出合に着く。
前後して他のパーティも到着。皆でテン場を定める。
こちらは一人なので下流左岸の狭いスペースの整地された台地にテントを張った。
午後3時に着いたがその頃から稜線はガスが掛かり始め、夕方にはすっかり高い場所はガス

で覆われ山は見えない。
風も無く穏やかで暖かい快適な夜を過ごし、明日の長丁場に備える。
夜中目を覚ますと河原がすごく明るい。見上げるといい月夜だった。
ガスは晴れ、快晴のようだ。明日は期待できそう。

【行程2日目】行動時間 12時間00分 天気 午前快晴 午後晴れ時々曇り
北鎌沢出合4:40?6:25北鎌沢のコル6:40?天狗の腰掛?7:55左俣のコル8:05?8:40独標9:00?9:25 P11 9:30 ?P12 9:40?P13 10:00?10:40 P14 10:50?11:10 P15 西尾根巻き11:25 ?11:45北鎌平12:00?13:20槍ヶ岳13:45?14:20槍ヶ岳山荘14:30?15:30千丈分岐15:40?16:40槍平
 
北鎌沢出合より北鎌沢のコルへ

独標が見えた


午前3時過ぎに起床。月夜で外は明るい。
朝食を食べ、4時40分出発。
ちょうど4人パーティも出発準備をしておられ挨拶して先に沢に入る。
早朝で涼しいが朝から雲ひとつ無い快晴だ。
沢は歩きやすい。
左俣を左に分けると、水流が無くなり、単調なゴーロをひたすら登る。
時々水量が現れるが伏流になる箇所もあり水はどの高さまであるのだろうか。
1時間半ほど単調に登り詰めると先のパーティの姿が見えた。
最後の詰めで真っ直ぐ入っている。こちらは右の沢に入る。

硫黄尾根

2つのパーティはやがてこちらの沢へとトラバースしている。
うち一人がこちらに来た。私はこの沢が正解だろうと答えた。
登りを続ける。
水は伏流になっていたがまだ上にあるかと思いそのまま上がるが草付まで登って水が出てこない。
仕方なく15分ほど水を取りのために下流に往復しロスした。
コルに着き、先ほどの2パーティに出会う。
コルからは樹林越しに三俣蓮華岳、鷲羽岳、水晶岳などが見え爽快だ。
だが、纏わりつく虫が異常に多くて不快だ。

北鎌沢のコルから独標へ

独標北面(右に巻く)


尾根には一般登山道と変らない明瞭な道が続いている。
最初は樹林帯の登りだが、陽が当たり出し、風が弱く朝から暑い。
ハルゼミの声が時々聞こえてくる。
道脇に小さなテント地がある。
一旦傾斜が落ち着き、急になる手前で休憩。
猿の集団がいて、こちらの方を観察している。
ロープの張られた樹林の急登りを終え、右手を見ると、硫黄尾根の赤茶けた荒々しい尾根が見渡せる。
天狗の腰掛といわれる場所まで来ると展望が大きく開け、登ってきたコルの背後には遠く針ノ木岳、鹿島槍ヶ岳、燕岳などの展望が雄大だ。

ミヤマオダマキ

前方には独標の大きな山体が迫る。
右側は鋭角に落ちていてさてどこを通るのか関心が湧く。
一旦下り、ひとつコブを越えると左俣のコルに着く。
天上沢側にはすぐ稜線まで残雪が残り、いいテント場だ。
ここから少し登って独標の基部に着く。
基部で直角に右に曲がって山腹をトラバース。
道は非常に明瞭で、遠くから見るよりも実際通ってみると案外傾斜は強くない。何の問題もなくすんなり巻き進み、進路が左に旋回すると正面に槍の姿が格好良く見えてきた。
「独標の山頂に直接登るには左に直登する」と記録にあったので観察していると左手にシュリンゲがぶら下がっている岩場に出た。

独標トラバース

ここで巻き道を離れ、このフィックスロープを越える。ここは高度感があり爽快。
フックスロープを登るとルートがやや不明瞭だがなんとなく踏跡が続き、浮石に注意しながらぐいぐい登ると山頂に飛び出した。
独標の山頂には大きな岩が2つ並んでいて、北側に登ると眼下に辿ってきた尾根が見渡せて爽快だ。
昨日から時々一緒になったパーティの姿が小さく見えている。
手を振ったが気付いてくれただろうか?
南側の岩の上からは正面に槍ヶ岳の姿が青空に映えて美しく、しばらく見惚れる。
槍の左には奥穂高岳、前穂高岳も望める。
特に前穂北尾根のギザギザがはっきり見とれ、格好良い。

独標の登りより槍ヶ岳

いつか登ってみたい!
P13あたりだろうか、私の前には1パーティ2人(夫婦連れ)がいる。
他の人から聞いたところによると早朝3時に出発して行ったとのこと。
それ以外のパーティは無く、コルで一緒だったパーティは1時間は開いてしまったようだ。
静かな北鎌尾根を快晴の日に満喫できるとは運がいい。

独標から槍ヶ岳へ
独標からは道は明瞭で、迷うことなく進むが一般道とたいして変らない。
潅木など木は殆ど無い。

独標からの槍、穂高

シオガマやミヤマオダマキ、ミヤマクワガタなど高山植物は色とりどり結構咲いていて、目を楽しませてくれる。
時々立ち止まっては花の写真を撮る。
小刻みなアップダウンを繰り返し、P11の先にはいいテント場がありこういう場所で泊まれば楽しいだろうと思う。
P12は千丈沢側から登り、ピーク毎に景色を見るのに小休止。
P13の登りでは乾性お花畑があり、ザレた斜面に青いミヤマオダマキが群生していて、青い空と遠くの山並みを借景に爽やか感いっぱい。
ヨツバシオガマ、シナノキンバイ、ハクサンイチゲなどの赤や黄、白が混ざって鮮やか。
ここで雷鳥の親子に出会う。

ヨツバシオガマ

快晴の見晴らしのいい場所で、すぐ近くにいても逃げない。
おかげでいい写真を撮らせていただいた。
P13から下って、白っぽい明るいザレの中をP14に登る。
P14 山頂では槍が大きくなって、左手には天上沢を挟み常念岳や大天井岳、西岳ヒュッテの赤も良く見える。
右には西鎌尾根がぐっと近くになってきた。
P14から少し下る。
鞍部からは千丈沢側にトラバースし、あまり高度を上げないで長くP15 の山腹を巻き進む。
やがて槍と小槍が正面に迫ってきた。
一番稜線から離れた屈曲点にはよく整地されたテント地を兼ねた小広場があり、槍の展望台だ。

P13より槍ヶ岳

ここでしばらく休憩する。
時間は11時過ぎで槍には13時台にほぼ着くものと思われる。
この快晴では急いで歩いてはもったいない。
十分景色を楽しもう!
しかし、槍の最後はどこを登るのだろうか?
ここからいくら観察しても累々とした岩の塊が重なって分らない。
20分ほど休憩。相変わらず暑い。
ここから左に90度折れ、急になった道を登る。
やがて岩が大粒になってきてルートが判然としなくなった。
ただ、どこでも歩ける状態なので北鎌平と思われる広い稜線に向って適当に進む。

雷鳥

暑くて時々岩の張り出した陰で休む。風が当たればまぁまぁ涼しいがあまりいい場所はない。
さすがに3,000mを超えているので涼しく筈だが、体が火照っているのだろうか?
平坦な北鎌平の少し上部に達し、累々とした岩塊を踏みながらさらに登る。
いよいよ最後の急登が迫ってきた。
計画時に心配していたが、思ったより高度感はない。
岩はひとつひとつしっかりしており、ホールドも豊富で、快適に登る。
時々後ろを振り返って北鎌尾根の風景を楽しむ。
やがて岩に固定したレリーフが現れた。
「穂先は近い、気を抜かず頑張れ」

P15巻き道より槍と小槍

この先で右上に登りしばらくして有名らしいチムニーの前に出た。
短いロープがフィックスされていてる。
両足を突っ張って登り越える。
その上も傾斜は急だが岩のホールドは多くあって楽に上がれる。
その終わりは小広くなっていて、休憩する。
すると上の方から掛け声があった。
見るとどうも山頂にいる人のようだ。
頑張れと言って手を振ってくれる。
こちらも手を振って答える。
この小広場で左右にルートが分かれるらしい。
右に少し進んでみると、またチムニーが現れる。
ここにはシュリンゲが2?3本ぶら下がっている。

チムニーより独標を振り返る

最初の出だしが高く、下方に良い足場が少ない。
さらに凹角の中に尖った岩が出っ張っていて力が要りそう。
荷物が重いので後ろに引かれ厄介だ。
上部と右手にしっかりしたホールドがあり、無事越えた。
さらに続く上部はホールドがあり楽だが高度感はある。
下から見ると3本の岩が立っているように見える場所があり、その真横に辿り着くと、ちょうど祠を前に3人組みが記念撮影している最中だった。
「わぁーー」っていう驚きの声をあげられ、大勢写真待ちしていた人たちからも少し間をおいてから一斉に拍手で迎えられた。
どうして来たのか、など数人から声を掛けられ、皆さん興味ありげな顔をされていた。

山頂直下

展望の槍ヶ岳山頂で20分余り休憩し、北鎌尾根を再度見ようとしたが、祠前は撮影場所と化し、近づけない。
北鎌沢出合から8時間40分で槍ヶ岳に登れ、天気も良く充実した濃い時間を過ごせた。
賑わう山頂でしばし北鎌尾根を登れた余韻に浸る。

槍ヶ岳から槍平へ
槍の下りは渋滞で40分近く掛かって山荘へ。
山頂は3連休の中日でごった返している。
テントを申し込むとまだ午後2時半前なのに既にいっぱいでダメとのこと。
殺生のテント場は上から眺めて空きがある。
しかし明日の高速の渋滞を考慮して槍平まで降りることにする。

槍ヶ岳山頂で

ガスが時々掛かるようになり幾分涼しくなった。
2時間ほどで槍平小屋へ着いた。
テント場は結構いっぱいで、サイトの真ん中に張った。
こんなに混んだサイトは久し振りの体験だ。
普段の山行ではこのような賑やかなテント場で過ごすことがあまり無いので逆に新鮮だ。
この夜は雲っていて気温が高く、寝袋に半身だけ入って寝た。

【行程3日目】行動時間 3時間05分 天気 曇り時々晴れ
槍平5:30?6:10滝谷出合6:20?7:10白出沢出合7:20?8:35新穂高温泉バス停

槍平から新穂高温泉へ

槍ヶ岳から穂高連峰


今日の朝は曇りで気温が高い。
計画では槍の肩に泊まる予定だったので、3時間早い行程となった。
小屋でもらったバス時刻表により8:55発に乗ることとして5時半に出発。
何度かこの道は辿っているので様子は分っている。
滝谷出合の川のすぐ脇の冷気で汗を引かせ、白出沢出合でも休憩を入れて、穂高平から近道の山道を通り新穂高温泉へ。
予定していたバスに乗った。
意外にもだんだんと途中のバス停からの乗客が増えてくる。
平湯バスターミナルに着く頃にはほぼ満席となっていた。
20分余り待ってアカンダナ駐車場行きバスに乗り換え、マイカーに戻り山行を終えた。

槍平の下りからジャンダルム方面

「平湯の森」で汗を流し、槍ヶ岳山荘でテント泊が出来なかったことが功を奏したのか渋滞なしの高速でスムーズに帰宅の途につくことができた。

北アルプスのバリエーションルートで有名な北鎌尾根に以前から憧れていた。
北鎌尾根に一人で登ったN村君からも幾度かルートのことを聞いていた。N村君もきっとどこかから私の行動を見ていてくれたのだろうか・・・・・・。
今回、快晴の天気に恵まれ、非常に充実した山行が出来て大いに満足できた。
N村君、登れたよ!

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