ハイキング@台高 鰔谷高(ウグイ谷高)から台高主稜、大杉国見山へ縦走
台高南部の大台ケ原山頂部から池木屋山のかけての三重県側、即ち西に向け、大きな支稜が二本、父ヶ谷の流域を取り囲むように伸びている。
それぞれの支稜上には主稜よりやや標高の高い顕著なピークがあり、南は鰔谷高、北は大杉国見山という大きな山容が目を引く。
台高主稜を縦走する折々でこられの山々を眺めつつ、いつかは登ってみようかと考えていた。Y浅さんリーダーの山行が延期となったため、今回これらの山々を結んで縦走しようと急遽計画した。二山を結ぶ縦走を稜線通しで行うため、起点は宮川ダムとし、新大杉橋の南からまずは鰔谷高に登って支稜を西進し、父ヶ谷高で主稜に出て北上し、地池越分岐より再び支稜を東進して大杉国見山に登り、大和谷橋たもとに降りる計画とした。入山口、下山口間の移動は自転車を活用することにする。
【行程1日目】行動時間 4時間20分 天気 快晴
新大杉橋の南(長ユウズ谷を渡った地点)11:15?第13鉄塔12:05?1,153m峰の南のピーク14:45?15:35鰔谷高
大和谷橋を渡った鉄塔No.7への巡視路登り口に自転車をデポし、車で引き返しダムを渡って県道を走り、鰔谷高への尾根を偵察する。長ユウズ谷の橋を渡った先に鉄塔No.13の登り口を示す黄色いプレートがあり、橋の袂に駐車し、この巡視路を登ることとする。
植林の山腹を巻きながら登り、電光形に登るようになると、鉄塔の西の支尾根へと着く。南に仙千代ヶ峰が望める。ここから西に進路を変え、すぐに鉄塔下を通過し、やがて急な尾根を真っ直ぐ登るようになると、落ち葉の上に薄く積もった新雪で、非常に滑りやすく歩き難い道となってくる。全員簡易アイゼンを着けるが、これは意外とよく効く。
尾根は常緑樹が多く、南の暖かい地域の特徴がよく分かる。標高850mからは穏やかでアップダウンの少ない自然林の尾根をゆく。標高860m地点にはまだ使えそうな四角い小屋が建っている。
幾らか小さなコブを越え、鰔谷高から1,153m峰に続く尾根へ出るべく標高差250mの登りに掛かると、出だしはかなり急で汗が出る。途中から落葉樹が勝ってきて、展望が木の間越しに開けてくると同時に、少し積雪量が多くなった。次第に傾斜が緩くなり、今日泊まる予定の山頂が望めるようになる。明るく良く陽が当たっている。
1,153m峰への稜線はかなり広く、ブナの木が多い。風が北西から吹いてきて寒くなる。ここまでテープがこまめにあるので進路は明瞭だ。葉の落ちた一面ブナなどの生えた綺麗な尾根だ。
広い尾根を緩やかに下り、鞍部から登りになると、進行右手が開けて(伐採跡のようだ)背後に大杉国見山の全体が望める。
稜線上は風が強いためか、雪は無く地肌が見えており、東側の風下側は一部吹き溜まっている。
ブナ主体の明るく広い尾根を登り、右から支尾根を合して20分ほどで山頂へ。テントを張るのにちょうど良い平坦地があるため、山頂の三角点のすぐ脇に泊まることにした。みんなで雪を踏み固めるが今日は気温が低く、なかなか固められない。山頂は意外にも鞍部よりも風当りが少なくて快適だ。
テントからの眺めは良く、太平洋の小島まで望まれる。冬に山頂で泊まるなんて贅沢だ。16時52分、テントに居ながらにして日の入りが綺麗に眺められた。
夜はY本さんの鍋料理。お酒とともに美味しくいただく。夜はテントから海岸線の夜景や満点の星空が見られて美しい。夜中多少風が出たが快適に一夜を過ごせた。K田さんは風上側だったので、時々風で押されて少し寝難かったらしいが・・・・・運が悪かったね。
?【行程2日目】行動時間 8時間10分 天気 晴れ午前10時より曇り、風強し 夜雪
鰔谷高7:05?8:10中井高8:25?9:10 1,282m手前の岩場(大台ケ原の展望地)9:20?父ヶ谷高9:55?10:25ブナ平10:55?13:00山ノ神ノ頭13:15?地池越分岐14:00?林道交差15:00?15:15 1,112m峰南東の鞍部(標高1,080地点)
7時ちょうど、水平線の上には少し雲があったものの、海からの綺麗な日の出をみんなで眺めることができた。山頂泊まりで夕日、朝日ともに綺麗に見られることは案外少ない。幸運だった。
今日は風がある。北西の季節風だ。自然林の明るい尾根を辿る。行く手には三角形の加茂助谷ノ頭が見えている。仙千代ヶ峰の背後の太平洋が円く水平線を描いて眩しく輝いている。
1,215m峰を越え、1,233m峰の手前で東南東からの支尾根を合すると、進行左側は植林帯となった。1,233m峰には中井高というプレートがある。ここからアップダウンを繰り返す。部分的に石楠花の大きな群落があり、春の花の季節には見事なトンネルになっていることだろう。
今日は次第に冬型の気圧配置で風が強くなってきて、大峰方面は黒い雪雲に包まれているが大台ケ原は明るい。1,282m峰の直ぐ手間には南面が大きく開けた岩場があり、大台ケ原方面の展望が綺麗に望める。急遽ここで休憩とする。陽がたっぷり当たり気持ちが良い。進行左は植林、右手は自然林の中、35分で台高主稜の父ヶ谷高に到着。尾根の一端で山頂にはなっていない。主稜とあって分岐点には標識やテープがあり賑やかだ。
ここからは何度か辿った登山道だ。標高差150mを下り、ブナの木の綺麗な2、3のコブを越えると稜線右側の浅い谷間の水場だ。ここはいつも十分な流れがある。水場の下流側は植林があり暗い。今日の炊事用に3人で4Lの水を確保し、不足は雪で補うことにする。
昼食も兼ねて30分休憩。雨量観測用の施設が新しく出来ている。
さて出発。斜面状の尾根を登り、進路をやや左に振ると次第に尾根が痩せてくる。ちょっとした岩場もあるが、たいしたことも無く進む。何度もアップダウンを繰り返し、湯谷ノ頭を越え、山ノ神ノ頭へ。風がさらに強くなりかなり寒い。陽が射さなくなり、直ぐ北の方角を見ると、べったり黒い雪雲に覆われている。我々はちょうど境目を歩いているようだ。池木屋山から迷岳への稜線や三角形の白鬚山が黒い空を背後にして重苦しく見えている。
雪の積もった広い山頂で休憩するが寒いので早々に切り上げ。今日泊まるところは上手く風が避けられるか少し心配になってくる。地形図より何箇所か風の当たらない地点の見当をつけておく。
このペースでは大杉国見山までは無理である。山頂から広い尾根を北に下り、鞍部からやや東寄りになって尾根を上がり、勾配が緩くなると主稜は北に急下降している。主稜縦走の時は要注意だ。以前縦走した時は鞍部から北側斜面を地池越へ向けトラバースしたが、トラバースせずに登ってきてもよいようで、この分岐点も標識やテープが多く付けられていて明瞭だ。
我々はそのまま主稜を離れ真っ直ぐ1,179m峰へ辿る。ここで10分ほど休憩。
1,179m峰からの下りでは北東に向う尾根のほうがはっきりしているので注意して右の尾根に乗り、父ヶ谷林道に降り立つ。
ここでテントを張ることも考えたが面白くないので、先に進む。すぐの1,112m峰は南面が伐採跡で展望が開ける。今日歩いてきたルートが南にぐるりとよく見えているが曇天で冴えない寒々しい色をしている。テントを張るのに良い展望つきの場所であるが、風当たりが強く残念する。その先の鞍部は地形図から予想していた通り季節風から遮られていて、良い場所となっている。風が無いので雪が深く積もっており、ふかふかの雪を踏み固めるのに一苦労。
夜はK田さんのカレー。具材がたっぷり入ってボリューム満天で美味しかった。暗くなるころ小雪になり、夜遅くからは降り続いた。午後6時半就寝。風は当たらず快適な夜となった。
【行程3日目】行動時間 5時間30分 天気 晴時々曇り
1,112m峰南東の鞍部7:15?9:05大杉国見山9:30?10:45 1,019m峰11:00?12:40大和谷橋
朝起きると、曇り空だが所々雲の切れ間から青空がのぞく。昨夜の雪は10cm位積もったようで地肌はもう見えない。アップダウンを続けて登っていくが次第に進行右側(南側)は傾斜が強くなってくる。雪も今回のルートで一番多い。K田さんが先頭で踏み跡を付けてもらう。所々岩の露頭があり迂回する。
山頂近くになると南面一帯がスカッと開ける。昭和59年に山火事があった箇所らしい。今回辿ってきたルートが見事に一望できて爽快だ。鰔谷高の東には太平洋が朝の光に輝いていている。刻一刻と光の加減が変幻し、幻想的な光景を見せている。仙千代ヶ峰の存在が大きい。古ヶ丸山から池木屋山方面の尾根には雲が多く、雪が降っているようだ。この山稜が雪雲の境目のようで、北に暗く南に明るい。陽が当たったり小雪が舞ったりの繰り返し。
大杉国見山の山頂部は南北に長く、荷を置いて北にある山頂へ往復する。山頂は西側が植林で面白くない。山頂の岩の上からは北に池木屋方面が見えるが山頂部は雪雲で霞んでいる。
山頂を辞して、1,019m峰先の鉄塔を目指す。単調な下りで半分雪の上を滑りながら早足で下りる。1,070m付近で尾根は急に右に続くので注意。山頂から1時間15分で1,019m峰へ。ここでK田さん愛用のストックがザックから無くなっているのに気付く。少し戻って枝を掻き分けた時に落ちていないか探しに行くが見つからなかった。残念。すぐにNo.7の鉄塔に出る。巡視路は南北にあるそれぞれ次の鉄塔に向っているらしく、我々はそのまま尾根を下降する。植林下の歩き難い斜面を標高差150m下り、上手く大和谷橋に続く尾根に乗る。傾斜が緩んで右手から巡視路を合わせる。
ここからは巡視路の良い道を辿るだけだ。前方には高くなった古ヶ丸山を望みながら植林の中の面白味のない道を早足で下りて橋の少し西の林道に降り着いた。
K田さん、Y本さんはダムまで歩いてもらうこととし、自転車で登山口まで移動する。ダムからは向かい風に苦しめられたが35分で車に辿り着いた。
ダムで10分待たせた2人を乗せ、帰路についた。伊勢道からは南アルプスの白い山脈や御岳方面までも見渡せ、冬晴れの快晴だ。台高山脈は雪雲に覆われているのに何故だろう。
台高でもこのあたりはかなり南に位置し、雪は明神平辺りよりかなり少ないようだ。
鰔谷高はまだ自然林が多く残っており、石楠花の大木もありいい稜線だが、大杉国見山は途中父ヶ谷林道が横切っており、植林が多い反面自然林が少なく、また山頂部にまで達する植林のため面白味は少ない。
非常に地味な地域だが、台高南部の三重県側の様子が分ってそれなりには面白かった。