夏合宿沢「何かまあ本当ね」隊@奥利根
ルート・メンバーが最終決まったのは7月になってからだった。利根川本流を遡行したい!というリーダーA木君の強い想いがあった。利根川本流のみだと2泊3日+予備日で遡行できる、せっかくの長期休暇(4泊5日)ということで継続遡下降を検討した。メンバーで集まって地図をみながら話し合った結果、平ケ岳沢遡行から剣ケ倉沢下降をして利根川本流に入渓することにした。メインの利根川までに2日間。剣ケ倉沢の記録を調べるがあまりヒットしなかった。たまたま持っていた童人トマの風の年報から遡行(01年10月)してる記録をみつけた。記録から下降できないことはないだろうと判断した。もし、雪渓状況等で下降が困難であれば水長沢下降か水長尾根下降することにした。なんといっても核心は利根川本流に残る雪渓だ。雪渓状況の情報収集の為に、童人トマの風の方に問い合わせさせていただいた。合宿直前で忙しい中、貴重な情報をたくさんいただいた。ありがとうございました。直前に台風や低気圧が発生し南アに転進かどうかとお天気に振り回されたが、出発日前日に最終判断をして予定通り奥利根に行く事にした。2度目の奥利根夏合宿が始まった。
8/11 京都駅23:00→京都東→小出→雨池橋6:00
色々あってけっきょく出発したのは23時。車を走らせ続けて翌朝の6時頃雨池橋に着いた。いつも思うが関西からは遠い。
8/12 出発7:05→林道終点10:50→入渓→二俣の滝12:20→1955地点の二俣18:20→泊地18:30
雨池橋につくやいなや朝食をとって出発準備。長い林道歩きの始まりだ。左岸沿いの林道を行く。お天気は良くて青い空に緑の木々、沢はキラキラと光と気分爽快。苦痛な林道歩きも足が進む。途中からアブが増えだし、黒い服を着た私とK下さんのズボンにたくさんまとわりつく。1時間毎に休憩をとり約4時間で林道終点に着いた。今回の様な継続遡行じゃなかったら、関西からわざわざ行って長い林道を歩いて取付く気になれない谷だ。終了点から登山道に入るとすぐに平ケ岳沢に出合う(1260地点、ちょうど中洲になってる地点)。暑い林道歩きから解放され、綺麗なナメや小滝が続く谷を歩く。キラキラ光る谷は本当に綺麗で気持ちが良い。1450地点から次第に両岸が切り立ちゴルジュの雰囲気となり、1550地点の二俣は左右から大きな滝となって出合っていた。二俣の滝である。上信越の谷105ルートによると雪渓が残っていたので高巻をしてるが我々は水線通しに行く事にした。ワンピッチ目をリードした。残置ハーケン1枚使って右岸の壁を3メートルほど登り小テラスへ、そこから4、5mほどトラバース。ハーケン1枚打ち込み、ナッツ1箇所ランナーをとってテラスへ。終了点はハーケン2枚打ち込んだ。ピッチを切って荷揚げをした。2ピッチ目はT嶋さんがリード。左俣の滝までトラバースして右岸へ渡り右俣の滝へ。荷物はザイルでチロリアン。3ピッチ目、右俣の滝を左から登れそうかと思っていたが逆層で悪く右側のリッジから巻いた。2時間弱かかってしまった。その後も滝は続き、右岸の草付を登って巻こうとするが追い上げられそうになる。谷に戻れそうなところで草付をつかみながらなんとか戻る。高度をどんどんあげていくと30m3段大滝に出合う。トポどおり左岸から巻いた。谷は少し穏やかになり源頭の雰囲気になりつつ小滝は続く。ようやく小滝も終わりナメが広がり沢幅は狭まった。やれやれ。もう少し楽に行けるかと思ったら意外にも苦戦した。泊地をさがしながら1955地点の二俣に出合い、18時半にやっと二俣の少し上に適地を見つけた(11時間半行動)。なんて素晴らしいところだろう。こんな源頭で一夜を過ごすことができるなんて。ただ、虫が多いのがいただけない。防虫ネットをかぶってないとえらいことに。暗くなる前にツェルトを張り、焚き火ができないのでツェルトの中で晩御飯を食べた。夜はけっこう冷え込み、シュラフをもってきてよかった。
8/13 出発6:30→木道出合6:45→平ケ岳7:15→水長沢・水長尾根分岐点→剣ケ倉沢下降開始8:20→1660地点二俣9:40→オキノ日向沢12:10→天狗沢16:15→利根川本流17:25→越後沢出合18:00 泊
天気予報によると夕方から雨。なんとか天気はもちそうだ。下降にどれだけ時間がかかるか判らない為、朝早く出発した。出発してから50分ほどで木道に出合う。荷物をデポして玉子石へ行こうと思ったが途中の看板(あと700m)を見てモチが下がり引き返した。快晴の中の平ケ岳を期待したがガスが多い。晴れていれば綺麗な湿原がひろがってるんだろうなぁ・・・残念。恋の岐川へきっとくるはずだからその時に期待しよう。さぁいよいよ剣ケ倉沢の下降開始である。木道がきれるまで歩き、立ち入り禁止場所に入りつつ西方向に進む。水長沢のコルと水長尾根を確認して更に西へ進む。ここから藪が濃くなり始めた。(背丈ほどの笹薮。大白沢池手前の藪と比べると楽。)何度も地図とコンパスを確認しながら藪をこぎ、2072ピーク手前(ふたつぐらい手前のコル)から下降開始した。なんとか谷にのり傾斜がきつくなる。笹をつかみながら滑り下り、懸垂下降をして1660地点の二俣に出合った。オキノ?沢に無事のったようだ。ようやく水も流れ始め沢らしくなる。この先も数回懸垂下降をして昼頃にオキノ日向沢に出合った。オキノ日向沢からは大滝が多く天狗沢出合まで時間を要した。雪渓は残っていたが悪くなく、SBを2回くぐったぐらいである。(天狗沢出合手前の大滝は、左岸から巻いて懸垂下降でルンゼに下りた。)大滝あたりから雨が降り始め先を急いだ。天狗沢からも悪い雪渓はなく1時間で利根川本流に出合った。遡行を終えて数えてみると、十数回懸垂下降をしたことになる。(ほとんどブッシュが支点、一度だけナッツ。)
快適な泊地が越後沢出合にあるということで本流を下ることにした。右岸へ渡り巻き道を探すが上手く見つからず本流に下りて下降した。18時に越後沢出合に着いた。(11時間半行動)出合いは広く快適な場所だった。一番良い場所で先行P釣り師5,6名が既に宴会をしていた。雨がきつく降る中タープを張り、タープ下で晩御飯を食べた。この日も焚き火をすることができず濡れた身体は寒かった。夜は虫(蚊)が多く、とても暑くて寝苦しかった。
8/14 出発6:30→剣ケ倉沢出合7:25→オイックイ→定吉沢14:00 泊
小雨が降る中出発。釣り師達はまだのんびりしていた。彼らに剣ケ倉沢までの巻き道を教えてもらう。踏み跡をたどれば良いということだが、判りにくく早々と谷におりることにした。剣ケ倉沢に1時間ほどで出合う。出合いから先は剣ケ倉土合と呼ばれるゴルジュ帯となる。水線通しに行こうかと思ったが水量が多いため、我々は左岸から巻くことにした。しばらく藪を漕ぎながらのトラバースとなった。谷へ戻ろうかと見に行くがもう少し藪をこぐことになり、「ヒトマタギ」がどこにあったのか判らずじまいとなった。滝ケ倉沢出合で休憩をとり、利根川本流核心の「オイックイ」となる。雪渓は少なさそうだがSBはあるのだろうか・・・と思っていたらついにあらわれた。やっぱりあったか。ひとりづつ急ぎ足でくぐる。次なるSBは出口の光が見えない。はたして出口はあるのだろうか・・・不安でいっぱいだ。ヘッドランをだして、トップT嶋さんがいく。姿がすぐに見えなくなりSBの中に消えていった。神様と祈りながら通過した。緊張のあまりすぐに息がきれてしまう。いくつかSBを越え、最後のSBは今にも壊れそうだった。最後のT嶋さんが通過してるときにゴゴゴと大きな音をたててブロックが落ちてきた。もう少し遅ければどうなっていたことだろう・・・。
全員が無事通過しオイックイを抜けると定吉沢に出合った。当初はハト平まで行く予定だったが時間的に厳しく、この日はここで泊まることにした。珍しく14時遡行終了(7時間半行動)、天気も良いのでザックから濡れた荷物をだして店開きとなった。時間もあるので使う間もなく藪こぎ中におってしまい竿を出すことにした。2日間目一杯の行動で竿をふる暇なんてなかった。壊れた竿を捨て枝に糸をつけてふるが、釣り上げることはできなかった。夜は久々に焚き火をおこし、ゆっくりと長い夜を過ごした。満天の星空で天の川も綺麗だった。A木君がもってきてくれた花火でしめくくり床についた。
8/15 出発6:30→魚止めの滝7:20→丹後沢9:10→大利根滝10:20→深沢→佐市平→ニンジンの滝15:00→深山の滝15:40→赤沢の滝16:30→水上の滝17:00→三角雪田18:00→丹後山→避難小屋19:00 泊
出発してそうそうの滝を左岸から登り4mほど懸垂下降。朝から泳いだりへつったりと長い廊下を通過する。水が冷たくて寒い。喜代志沢を過ぎると魚止めの滝が出合う。滝の左側からのぼり、更にリッジを登って越える。しばらく草付をトラバースして谷へ戻った。いったん谷は穏やかになり8m滝に出合う。記録によると左側からと書いてあったが水量が多く、A木君が泳いで右側から取付いた。ザイルを張って後続は左側から登った。もう雪渓は残ってないかと思ったらこの日もSBがあらわれた。水線通しにいけるかと思いSBをくぐるが、ヒョングリ滝を登ることが出来ずいったん引き返して滝の左側から登って越えた。SBの中の行き来は緊張した。そして、ようやく丹後沢に出合った。丹後沢を過ぎると5mほどの2段の滝に出合う。釜を泳いで取付くかと思ったが水量が多くて巻くことにした。丹後沢出合あたりまでもどり左岸のリッジを登る。草付で滑りやすくバイルをだした。いったん稜線まで出てしまい降り口を捜す。谷に戻り小滝をすぎると大利根大滝に出合う。A木君が空身で右側の壁を登る。一見登りやすそうにみえるが取付くと意外に悪い。全員が越えるのに1時間かかった。谷は穏やかになり深沢が出合い、佐市平で休憩をとった。ここからが長かった。大利根滝が終わればあとは詰めるのみとおもっていたが、小滝、大滝が連続しすんなり進むことが出来ない。最初の小滝は難なく越えることができるが、次第にザイルをだすことになる。4,5mの滝は右側からバンドをトラバースしてホールドを探しながらいけば問題ない。続いて釜をもった10mほどの滝は、N村君が泳いで取り付きハーケンを1枚打ち込んだ。抜け口は滑りやすく水量も多くリードであれば緊張させられる。まだまだ20mほどの大滝が続く。ニンジン滝は左岸のリッジから巻いて懸垂下降で谷に戻り、深山の滝は右側の岩壁を登り、赤沢の滝はシャワークライミング、水上の滝は右側の壁を登り越えた。大滝が終わり小滝越えると、谷は穏やかになって次第に源頭の雰囲気となる。沢は最後の最後まできれることはなく源頭にある三角雪田を目指すのみとなる。ようやく遠くに三角雪田が見え始め、感動の瞬間だった。稜線まで藪を漕ぐことなく草付、笹原を登り飛び出た。振り返れば平ケ岳、遡行してきた谷が見え、よくここまで来たと心の中で自分を褒めた。利根川水源碑で記念撮影をして、丹後山を経由して避難小屋に19時頃着いた。避難小屋にはたくさんの人でいっぱいで入れず、外で晩御飯を食べてから空けていただいてスペースで寝ることにした。疲労困憊、疲れすぎて寝れないというのはこういうことか。小屋で快適なはずなのに全く寝れなかった。
8/16 出発6:30→十字峡小屋9:40→六日町駅→小出駅→雨池橋→小出駅→京都2:00
4時過ぎぐらいからかバタバタとうるさくて4時半起床。小屋の外で朝食をとり出発。次第に陽が登り暑くなる。3時間で十字峡に着き、タクシーをよんで六日町駅に出た。車回収組は小出駅まで電車で出て、タクシーに乗り継いで雨池橋まで戻った。途中富山ICで高速を下りて寿司を食べ、敦賀あたりから渋滞に巻き込まれてけっきょく京都に帰ってきたのが2時頃だった。長い長いドライブとなった。
大好きな奥利根を5日間満喫することが出来た。お天気は思っていた以上に良くて恵まれた。また雪渓状況もよかったのではないだろうか。一番の印象はなんといっても三角雪田を見た瞬間だ。唯一心残りは「ヒトマタギ」が出来なかったことかな。また、何かの機会で訪れたい。5日間の長い沢旅、メンバーに感謝 したい。