大雪 ポンカウンナイ川遡行

8月9日 天人峡?ポンカウンナイ川Co1300付近
駐車地6:45→ポンカウンナイ川入渓7:05→2段の滝12:05→865m2股12:55→20m大滝下13:50→Co1280下10m滝16:35→Co1280付近C1 17:40

今回はTさんが車で上陸しているので車利用のアプローチとなった。前晩は入山口たる天人峡への途中にある遊水公園なるところで鋭気を養った。屋根がありトイレも完備されているので、天人峡の駐車場よりは快適だろう。
アプローチは地形図にない林道より尾根を越えてポンカウンナイ川砂防ダムの上右岸より入渓となる。カウンナイのアプローチも共通である。今日の釣りは不調でばらすことが多く、サイズもなかなか出なかったので時間を要した。尺前後のイワナを2尾のみキープした。
865m2股手前にある2段の滝下段は右手の大きなクラックから楽々登れる。2段目が厄介。左手の垂壁にピトンが連打されている。出だしはそいつを利用してA1空身でよじ登り、後半はぬめった外傾スタンスをフリーで越える。確保支点は巨大倒木よりとり荷上げ。後続も空身でA1となる。この沢は中級クラスだがここを自らルート工作するとなるとなかなか渋いと思う。よいところにピトンが打ってある。NPはよいところには効かなかった。未だボルトも含めたピトン技術では先達に遠く及ばない。巻くなら1段目下からとなるだろう。
すぐ上で左から大きい支流が直瀑をなして合流する。これが865m2股。まもなく10mほどの滝が現れ右からへつる。一手がやや微妙。上に大滝がある。これも2段となっており、一段目は5mもないが2段目は20mはありそう。先ほど登った10m滝の落ち口近くの右岸まで戻り出尾根より大きく高巻く。100mばかり登り、岸壁上の長いトラバースをこなして滝上へ。
ハングの滝は10年ほど前に崩れて簡単に登れるようになったという。おそらく足元に岩塊の転がっていた3mほどの滝がそうだったのだろう。少し上に10mほどの滝があり、右側落ち口の一手が微妙だが、明瞭な踏跡があり簡単に低く巻いた。
Co1280下で厄介な10m滝が現れた。巻くのはたいへんそうなので左手の凹角よりロープなしで取り付くが意地悪な傾斜でスタンスも甘い。傾斜はゆるいがいわゆる落ちたら大根おろしというやつである。どこから供給されるのか岩盤に小石が多く乗っており気持ち悪いのでロープを出して仕切りなおし。ピトン2枚にトライカム2枚使用。ちょっとやりすぎたか。ビレイ中スズメバチほどの大きさのアブにかじられた。このアブは巨大だが臆病でなかなか食いつかないので見た目ほど厄介ではない。
釣りに時間を使いすぎて源流までは行けず、Co1280付近右岸台地のテント場でC1とした。上流を10分ほど偵察したがよい場所は他にないのでここで幕とした。周囲はナメとなっており平坦で快適なキャンプ地。ナメ地帯なので薪が少ないがよく乾いていたのでよく燃えた。

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右クラックの滝

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20m大滝

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C1付近のナメ床

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8月10日 ポンカウンナイ川Co1280付近?小化雲岳?カウン沢970m2股
C1 5:25 →1480m2股7:00→1550m2股7:20→小化雲岳9:30→カウン沢1550m2股10:30→F3下11:50→F2下13:00→雪渓ジャンプ14:20→F1下16:15→970m2股17:30

1480m2股までは2,3の滝があるが容易。左に入る。1550m2股は右をとるが、沢はすぐに斜面に吸収された。薮の中の水流を行くが、上部では距離は短いものの猛烈なハイマツをこがされた。右に寄りすぎたのかもしれない。まもなく頂上直下の草原に導かれ、快晴の小化雲岳頂上へ。あたり一帯はコマクサの群落となっている。源頭に泊まれないことはないが、キャンプ地としては我々が使った地点がもっとも快適だと思う。上から見下ろしたかぎりでは1480m2股を右に入って頂上南西コルから乗越した方が薮こぎは少ないかもしれない。
頂上よりカウン沢へ直接下降開始。薮こぎはなく快適。ポンカウンより川幅が広く大規模な感じがする。雪渓を過ぎ1550m2股あたりまで随所にキャンプ適地があるが使われた形跡はない。
この沢は地形図の滝マークのところに3つの大滝がある。F3、25m放物線滝は上に小さな滑滝があり滑りやすいので確保して落ち口へ。これは地形図からも分かるように左岸の傾斜がゆるくなっており、ルンゼから簡単に巻き降りることができる。滝はきれいな釜を持っている。
まもなくF2、30m末広がり。ラッペル支点選定に迷って左岸右岸をうろうろした末、右岸の草付きを登って立ち木まで行き40m近いラッペル。ハング下に薮が張り出しているのでロープの処理に手間取った。思い切って遠くに投げたらロープが薮にかからずよかっただろう。ここはバックアップを取って降りた方がよい。滝はハングしていないがビンの底のような場所。
この滝下に下りたあたりから右足人差し指の靴擦れが気になり、歩行が極端に遅くなった。今回で5回目の使用となるキャラバンの沢足袋は今まで足に合っており気に入っていたのであるが、今回突然靴擦れを起こした。これがなければ1時間は時間短縮できた。これには翌週の日高でも苦しめられることになる。F2の少し下に10mほどの函滝があり右岸よりラッペル。
F1までが長い。1箇所ずたずたの雪渓がありジャンプ一番で越えた。F1、40m放物線滝は左岸の立ち木より長大な空中ラッペルとなるが、釜の上の岩盤に降りられるので下降距離は30mほどで済む。これはブッシュもなくすっきりとしており気持ちよかです。あとは左岸壁基部を巻いて滝下へ。F1とF2は登るとなると大変な大高巻きとなりそうだ。
970m2股上で竿を出すと面白いようにかかるが、サイズは15cm以下なのですべてリリース。2股のテント場利用者に釣られ尽されているのだろうが、それでも小物がすぐかかるのは驚きだ。
970m2股下流左岸に広いキャンプ地があり、先行者6人pがすでに焚き火を起こしていた。ティッシュの散乱するキジ場があり不衛生な感じがする。入渓者が多いためかテント場周辺は薪が少なく、鋸目が目立つ。本流でも竿を出してみたかったが時間がない。どうせ小物ばかりだろう。

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カウン沢源頭

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F3

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F2ラッペル

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F1

8月11日 カウンナイ川970m2股?化雲岳?天人峡
C2 5:25→魚止めの滝5:55→滝の瀬十三丁入り口6:05→放物線の滝7:00→2股の滝7:40→幅広の滝8:30→カール状地形9:40→登山道合流11:00→化雲岳12:20→滝見台16:40→天人峡17:20

カウンナイ本流は渇水していると思われるが、それでもそれなりの水量がある。河畔林が水流脇まで発達していて河原が狭いので、増水時は藪こぎを強いられると思われる。
魚止めの滝は左岸のキャンプ地奥の踏跡より簡単に越えられる。テント場は970m2股より断然快適である。すぐに同規模の無名滝が現れるが左より簡単に巻ける。ここからが滝の瀬十三丁。入り口で6人pを抜いた。豊田山岳会の50周年記念山行とのこと。北海道行きにこれだけ人数が集まるのがうらやましい。
巨大な滑床は1時間ほど続いた。岩の露出した部分は滑りやすく止まりがたいので、ふかふかの苔が生えている部分を選ぶと歩きやすい。途中左岸より黄金ヶ原から流下する白糸をひいた滝が出合うが壮観だ。わずかの差で先行し続けるのも豊田pに申し訳ないので大ナメの中間で大休止した。
滑終了点の顕著な滝を越えると河原が始まるが長く続くことはない。放物線の滝は左手の顕著な踏跡をたどるが、上部にロープがフィクスされた岩壁がありフリーではそれなりに渋い。沢への出口には立派なテント場がある。この上で豊田pを抜き返した。
1360m2股の滝は左右とも滝となっているが、いずれに入るにせよ中間尾根を大きく巻く。今回は天人峡に下るので左股に入った。こちらの沢出口にもテント場がある。
すぐに階段状の滑床が始まる。規模こそ小さいものの周囲の明るい草原と相まって滝の瀬十三丁に劣らない快適なものだ。この沢のよさは滝の瀬十三丁だけではない。途中にある幅広の滝も赴きがある。
そして細くなった水流をたどった果てのカール状の広い草原は神遊びの庭と呼ぶに相応しいものだった。登りながら口元が緩んでくるのが自覚できる。この感覚は日高ヌピナイ右、朝日荒川についで3回目だが、今回こそ最高と断言できる。1360m2股の右股も行かねばならない。右股を抜けた後は未だ歩いていないオプタテシケ方面に縦走するもよし、ユウトムラウシ川を下るもよし、いずれにしても期待を裏切られることがなさそうなのは幸せなことだ。
最後は沢から外れて右手の斜面に上がってからトラバースするように踏跡がついている。登山道との合流は天沼より少しトムラウシ寄りの地点、だだっ広く合流したことにしばし気が付かなかった。視界不良時は要注意。天沼はきれいなところだ。登山道から見られるのは幸運というべきだろう。昔縦走中に通過したときは信じられないほど青くもっときれいだった印象があるが時間帯の違いか?
長い登山道を5時間かけて下り天人峡へ。この道はぬかるみが酷いと聞いていたが、木道が整備され快適であった。天人峡の敷島荘で風呂を浴びたが、内風呂は暑くて滞在できず、露天に出るとアブにやられるので早々に退散した。

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黄金ヶ原からの支流の滝

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滝の瀬十三丁

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神遊びの庭?

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幅広の滝

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源頭

ポンカウンとカウン沢は悪くないが前奏曲にすぎなかった。魚止めの滝から稜線まで延々とクライマックスが続くカウンナイに尽きる。ひと気のなさと技術的困難を求めないのであれば、この沢こそ本邦随一といわれても異論はない。2,3ポイントよいところがある沢はあまたあるが、この沢は全行程がよい(今回下部の長大な河原はカットしたが)。この手の沢のよさは写真では表現できない。行くしかない。特に源流部ではすごいすごいの連発で言葉にもならなかった。
カウンナイ一本をやる場合天人峡に下れば2日行程となる。一日目に釣りを楽しみたいなら魚止めの滝下のキャンプ地がお勧め。釣りに興味がなければ、放物線の滝上のキャンプ地をC1とすれば翌日の行程が楽だ。足の速い人なら源頭のカール状に泊まれば最高だろう。ここに泊まれるのであれば再訪してみたいし、黄金ヶ原に抜ける右股も行ってみたい。遠方にありながら複数回行く価値のある数少ない沢のひとつである。
興味のある人がいたら計画するのでぜひ声をかけてもらいたい。沢をかじってみたい縦走志向の人に推薦したい一本である。