芦生 岩谷、大谷

岩谷の原生林
【所感 H内】
緑濃い芦生の森の中を穏やかに流れる岩谷(いわたん)を下降し、由良川の本流を大谷(おおたん)出合までさらに下り、ここから大谷の原生林を鑑賞しながら遡行して三国岳(さんごくたけ)へ直接登ろうと計画した。
 ミーティングでK下さんから参加表明がり、2名で出掛けることにした。
 入下山を容易にするため、岩谷へは下壺谷を詰め、帰りは三国岳から登山道利用とする。
三国岳の登山口に最寄りである針畑川と下壺谷出合近くの県道上で、大きくカーブする地点を出発地とする。K下さんは初の沢登り体験で、しかも入会最初の山行である。大谷遡行の安全を期してザイル等一式も持参する。(結果的には使用しなかった)

【行程】行動時間 8時間10分
県道駐車地7:40→下壺谷林道終点8:05→8:45県境稜線8:55→9:30岩谷出合9:45→10:35ツボ谷出合10:50→11:20大谷出合11:45→最初の滝12:35→13:45ロロノ谷出合13:55→14:35三国岳14:45→15:50県道駐車地

K下さんと仰木雄琴IC近くで6時30分合流し、高島市朽木桑原の駐車地に7時20分到着。直に支度し7時40分行動開始。
まずは植林地を抜け、針畑川を徒渉し、下壺谷を少し辿ると林道に出る。ここが三国岳の登山口だ。そのまま林道を終点まで歩き、ここから下壺谷を溯る。標高650mで二俣を分ける真ん中の尾根を急登して県境稜線標高790m地点に駐車地から約1時間で着く。
この登りではナツエビネが数株可憐な蕾をつけていた。夏の日差しが強く汗だくになりながら県境に着くと、渡る風は少し涼しく、ほっとする。北の方角は雲が多く、山にガスが掛かっている。
県境からは日本海側流域の研究林になり、そのまま乗越し、すぐ下降して岩谷源流を下る。直に河床は広くなり、大きな栃や桂の生えた伸びやかな緑一色の空間となり、穏やかな流れの音が気持ちよい。岩谷出合へは県境からわずか30分余りで到着し、大きな由良川の風景を見ながら休憩とする。
本流の下降は最初川の中を進んだが左岸の登山道を途中から使う。しかし大きく高度を上げ、しかもあまり歩きやすい道ではない。トコ迫をショートカットした先からは登山道を行くのは止めて川の中を下降する。
由良川を泳ぐ(ツボ谷出合)イワタバコ
水と戯れながら下降し、ツボ谷出合に着く。この出合には本流、支流ともに滝がある。滝の下の流れをK下さんが流れに逆らって泳ぐ。戻されて上流には進めないことを身を以って体験。見た目では簡単そうだが実際には流れのエネルギーは相当なものがある。
ここで少し泳いで遊んだ後、坦々と本流を下降し、大谷出合へ。予定では12時を想定していたが40分早く着いた。由良川本流は何度か歩いているが、原生林の中を穏やかに流れる落ち着きのある風景はいつ見ても安心感と安らぎがありまさしく癒し系だ。
桂の大木
大谷の遡行は最初、大木の茂る広く緩い傾斜の中を辿る。一ボケを左岸に見る。小さな滝が掛かっている。二ボケも同じように左岸から滝を掛けて出会う。北に向きを変える標高600地点に最初の滝が現れる。左岸を容易に巻き、再び穏やかな流れの中をひたひたと辿る。
小さな滝を越えるとやや大きめの滝があり、右岸側の流れのすぐ横から取り付き登る。
少し右に旋回した標高660地点では河床の黒い逆くの字型の滝に出会う。落ち口の水流をたっぷり浴びて越える。K下さんは沢登りが初めてだとは思えない登りっぷりを見せている。さらに進むともう少し大きめの滝が現れた。斜めに大きな倒木が掛かっている。右岸の草付きのドロ壁を斜上し滝横の石楠花らしき枝を掴んで強引に登った。
一番大きな滝滝を登る
さらに進むと一番大きな滝が現れる。ここは左岸を斜めに巻き登り、次の小さな滝も一緒に巻いてから河床に戻る。その先では黒い岩肌の両岸が迫りちょっとしたミニゴルジュ状の場所があり、ツッパリを楽しんで越える。この先は再び静かな流れとなる。直にロロノ谷出合だ。しばらく休憩し雑談する。それにしても今日はセミの声も無く森は静かで流れの音しかしない。時折鹿が慌てて前を横切って走り去る音がする位だ。
 ロロノ谷出合は右折して三ボケを目指す。下草もない歩きやすい谷を進むと標高750mの広い平坦地に着く。テント泊まりに良さそうだ。細かな支流が周囲から合わさっていてムードが良い。いかにも森の中といった感じだ。この平坦地からは左に入り、さらに細くなった流れを追う。右に左に旋回しながら標高870m地点の二俣でついに流れが消えた。水を確保し、右に進む。浅く広い窪地状を進み、稜線に出る手前で右の斜面に取り付きぴったりと三国岳山頂に出た。
三国岳から武奈ヶ岳を望む
 山頂からは比良の武奈ヶ岳方面が綺麗に眺められた。今日は気温が高く、先ほどまでの水辺がもう恋しい。暑くて虫も纏わり付き始めたので登山道を途中休憩なしで降りる。約1時間で県道の駐車地へ辿り着いた。
 K下さんにとっては初の沢登りとなり、天気に恵まれた充実した1日となった。
 秋か新緑の季節に訪れてまた違った美しい光景に出会いたい。

【所感 K下】
入会後初山行。初の沢登りは、初の北山・三国岳周辺・芦生原生林となった。H内さんとも初めてご一緒させて頂いた。
地図を見ると、実線も破線もないルートの登り下りがあったが、大丈夫だろうか?
参加決定が二日前、その翌日急遽沢靴・スパッツを購入、そして夜に防水用ごみ袋が切れていたのに気づき当日朝コンビニに買いに走ったり、緊張と寝不足気味で山行に突入。
 県道・麻生-古屋-梅ノ木線の桑原橋を渡らず少し北上し、植林地が左にあるカーブの側地にH内号が駐車、準備開始。沢靴をはき、履いてきたスニーカーをザックへ。
植林地を抜け、水の澄んだ穏やかな針畑川を初の沢靴で徒渉。初のフェルト底のすべり具合を探りながら進む。濡れを気にせず水に入るのは予想どおりとても楽しい。ソールが堅い靴しか履いたことがなく、沢靴のソールの柔らかさは不安だが、その分足裏の接地感覚はよく靴も軽いので足首が動かしやすい。でも長時間いけるだろうか?
下壺林道終点からは沢登り開始。H内さんの後に続く。暑いので足元に水が入るととても気持ち良い。
沢稜線手前の尾根は、それまでの沢とは打ってかわって急登で暑かった。
その後岩谷を下り由良川本流出合いへ。途中で沢水に入り始めるとまた楽しくなってくる。原生林も素晴らしい。由良川本流は、原生林の中をゆるやかに蛇行しながら穏やかに流れており、時間が止まっているかのようだ。
ツボ谷付近の滝の下では、流れに逆らって泳いでみたが、押し返される程の強い水流の力を思い知る。今度は頑張ってそのまま静止状態で釣り合いがとれるように泳いだが、体が急速に冷たくなりあまりの冷たさに逃げ出してしまった。今日は暑い日でしかも低山なのであるが。水底が深くなっているところは水温が急に低くなっていることが身をもって体感できた。それなりの服装か、休憩せず体が温かいうちに一気に行った方がよいのかもしれない。
大谷からの沢の登り返しは、滝登りがいくつかあり、とても面白く、また、立派な大樹が数多く見られ癒される風景だった。
三国岳山頂でスニーカーに履き替え下山。スニーカーも底がグニャグニャのもので下山後、足裏がいつもより少しだるい感じはしたが、特に困ったことはなかった。
H内さんは、こまめに地図を出し、地図と現場周辺の地形を見比べ現在位置を特定し、次の目標地の予想地形を地図で想定してから歩き出す、といったサイクルを確実に繰り返されていて、正確だった。私も、今後、自分のペースがとりやすい単独行で時間をかけて意識的に練習してみたい。
静かな山域で結局私たちの他には誰にも会わなかった。すべてが大きな癒しの空間だった。シカは見たが、ヒルには一度も会わなかったので、初沢は良い印象で一杯となった。栃の木など広葉樹の占める割合が非常に高く、今度は、紅葉の時期に泊まりで一日この付近でのんびり過ごしてみたい。
H内さん、色々教えて頂きありがとうございました。

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