縦走@九州・傾山から大崩山

前回は1993年の秋に夜行寝台列車を利用して祖母山から傾山へと縦走した。
今回、この山系では久し振りの山行となる。
前回の続きとして、今回は傾山から大崩山へと縦走することにした。
便利だった夜行列車は現在無いため、新幹線を利用することにする。
平日のお昼に豊肥本線緒方駅へ特急列車から降り立ったのは私だけ。
駅長さんがホームから見えている山の名前を教えてくださる。
駅前は昼下がりでガランとしている。
緒方駅から乗ったバスは途中から地元のじいさんばあさんがいっぱい乗ってきた。
車内はローカル色豊かな和やか雰囲気で、車での山行では味わえない面白味がある。

 

【行程1日目】行動時間 3時間25 天気 快晴 

上畑(傾山登山口バス停)14:00?14:50登山口(休憩所)15:00?16:30上部の林道16:40?17:25九折越(九折越小屋泊)

緒方駅に降り立つ

バス停から登山口へ

バス停からは前回下山時に歩いた車道を登山口に向う。

登山口まで小1時間だが後ろから車は現れなかった。

?登山口から九折越へ

熊を見かけたという情報が複数あるらしく、情報提供を呼びかけている掲示を多く見かける。

上畑より傾山を望む

確か九州ではツキノワグマは絶滅したと思うが、もし生き残っていたら大発見だろう。

谷間の左岸山腹を縫いながら次第に高度を稼ぐ。

最近道迷いが多いらしく、新しそうな蛍光ピンク色の布がやたらに木に付けてある。

カンカケ谷を渡り、その先の支流を少し詰めて急な小尾根を登ると林道に出る。

林道を渡って、ブナなどの自然林の尾根で高度を稼ぐ。

鹿の群れに多く出くわし、九州でも鹿は大幅に増加していることを実感。

熊、生きててほしいな

夕闇迫る九折越の広場へ到着。

さすが平日なのでテントも無く、小屋も無人だ。

テントを張るか迷ったが今夜は放射冷却が強そうなので小屋泊に。

夜9時頃小屋の前に出ると、満点の星が輝いていた。

 

【行程2日目】行動時間 10時間05 天気 快晴 午後時々曇り

九折越6:55?8:10傾山8:30?11:35杉ヶ越(水汲み往復25分)12:10?13:40新百姓山13:55?14:50犬流れ分岐15:00?17:00夏木山

?

早朝の九折越

九折越から傾山へ

快晴の朝を迎え、快調によく整備された道を辿る。

右手にこれから辿る山並みがあるが逆行で霞んでよく見えない。

ブナの枝を通して青空とのコントラストが綺麗。

次第に正面に傾山の岩稜が迫ってきて迫力ある。

1時間程度で杉ヶ越への分岐。ここで荷を置き、空身で傾山へ。

傾山を仰ぐ

快晴で祖母山がくっきり見える。

九重連山、阿蘇、由布などの広大な風景を楽しむ。

 

傾山から杉ヶ越へ

山頂で20分ほど過ごし、分岐に戻る。

分岐からは踏み跡が薄くなり、多少木の枝を分けながら下降していく。

朝の霜

1,198m標高点を越えると、思ったよりもアップダウンが大きい。

しかも梯子やロープが多く、急に下ってまた急に登ることを何度も繰り返し、かなり疲れる。

針葉樹が多くなり、暗い感じがする。地図で想像するより遅々として進まない。

やっと1,088m峰の尾根分岐点に着いた。

先には新百姓山が大きく、杉ヶ越までまだ結構距離がある。

傾山頂から祖母山

この下りからやっと穏やかな道となり、スピードアップ。

934m峰を越えてしばらくして、右下に県道が見えてきた。

やがて尾根から一段右下の山道に折れる。

ここからは緩い上りの旧道を植林の中、巻き進み社のある杉ヶ越へ。

明日のりんどうの丘までの水を確保するため、峠から県道に下ってトンネルを抜け大分県側の沢に水を汲みに往復した。

桑原山と日向灘

水は新しい堰堤の中から汲むことになり興醒めだ。

 

杉ヶ越から夏木山へ

峠の社で残りの山行の安全を祈って出発。4.5Lの水の重みが堪える。

最初は少し急だがやがて同じような勾配の続く長い尾根歩きとなる。

落葉樹が多くなり明るい道だ。

傾山より大崩山を望む

途中、立派な苔むしたブナの大木が風格ある。

登山地図のコースタイムより1.5倍掛かって新百姓山へ。

樹林で包まれた山頂だが、葉が落ちているので背後の傾山が良く見える。

新百姓山からは緩く下り、桧山に上るが、新百姓山よりも高く、思ったより疲れる。

風が出てきて、休むと汗が冷えて寒い。

桧山からは30分程で犬流れ越えに着く。

ブナの大木

どうということもない平凡な鞍部だ。

これから先の道は危険な個所が多いという表示が木に巻きつけてある。

小鋸へはあっさり登る。さてこの下降からは一気に険しくなる。

梯子やロープが掛けてあり、木の根を掴んで一気に鞍部へ下りる。

地図に現れないアップダウンが続き、やがて大鋸への上りへ。

やはり梯子、ロープに頼って高度を稼ぐ。

大鋸より傾山を振り返る

大鋸で終わりかと思っていたが間違いだった。

ここからはさらに岩壁を低く巻いたり、立った岩稜をトラバースしたり。

両側がすっぱり切れ落ちた岩の稜を掴んで抜けたりとめまぐるしく変化する。

激しい上り下りに汗だくになってやっとの思いで夏木林道から登ってくる道に合流。

陽が西の山並みに沈み、薄暗くなって夏木山に辿り着いた。

稜線では結構風が強くなってきている。

両側切れ落ちた岩稜をゆく

でも広い山頂部はそれほど風が当たらない。

湿気った地面に落ち葉を掻き集めテントを張る。

夕刻、上空には一面薄雲が張っている。

今夜は星がまばらだ。

 

【行程3日目】行動時間 8時間50 天気 曇り 

夏木山6:50?8:25五葉岳8:40?9:05お姫山9:15?10:10鹿納の野10:20?11:10鹿納山11:30?上鹿川コース分岐13:55?14:20大崩山14:40?15:40りんどうの丘

 

夜明けの木山内岳と桑原山

夏木山から五葉岳へ

夜中、寒くならないので天気は思わしくないと思われた。

案の定、朝は曇り空だ。しかし風は弱くなっている。

桑原山の方角から明るくなってきた。

まずは夏木山南峰へと進む。

木山内岳、桑原山方面の大きな尾根を分ける。

明るい樹林をゆく

西に進路を変え、緩く広い尾根を下りる。

鞍部辺りは大きな木が多く、瀬戸口谷に向って緩い斜面が広がっている。

なかなかいい感じの明るい森が続く。

浅い踏み跡を探しながら倒木を避けたりしてゆったり広い尾根を進む。

このあたりは大峰山系に似た雰囲気だ。

しかし、標高が高くてもアセビの林があり、さすが南国九州の山を実感する。

遥か傾山と桧山を望む

どんどん高度を稼いで、やがて北西の上見立からの道を合する。

分岐に道標は無く、踏み跡も薄い。

五葉岳への広い鞍部は苔が一面広がり、道は見当たらない。

適当に進み、上りに転じると、地面は落ち葉と苔でふかふかしている。

道が分らないので鹿道などを辿って登る。

東側の稜線に登り着き、稜線の南側を西に辿って山頂へ。

お姫山より鹿納山を望む

三角点と標識があり、展望は360度。

雲っていて色は冴えないが、傾山や祖母山、大崩山など四周が見渡せる。

特に鹿納山のドームが目立つ。

 

五葉岳から鹿納山へ

五葉岳から北に広い鞍部に下る。

南国系のブナ

鞍部からは自然林に包まれた瀬戸口谷の流域が見渡せ、この谷に降りる道標もある。

鞍部からの上りも五葉岳同様、踏み跡が薄い。

上り切るとお姫山の肩だ。右に曲がって直ぐに山頂。ここも展望が良い。

前方に鹿納山が迫ってきて山頂が天を突いている。

お姫山からは緩やかで明瞭となった道を進む。

五葉登山口への分岐点には四方に枝を張った大きなブナの木がある。

三里河原方面を見下ろす

絶好の休憩地になっている。

この先鞍部まで下ると、金山谷への道を分ける。

一度行ってみたい三里河原へと続く道だ。

登り返して鹿納の野という山頂へ。

樹林に覆われ特徴は無い。

緩く下り気味に進むと鹿納山の岩壁が迫ってきた。

険しい道の先の鹿納山

進むにつれ、道は険しくなってくる。

アップダウンが激しくなり、やがて岩壁を西に低くトラバースしたり、ロープを頼っての進行が続く。

最後はザレた急斜面の登りで山頂へ。

鹿納山は鹿納坊主ともいうらしい。

崖に囲まれていて高度感抜群。

狭い山頂からは展望雄大で遮るものは何も無い。

鹿納山頂から祝子川源流

特に足元に広がる三里河原などの祝子川源流を覆う原生林の広がりが素晴らしい。

この山頂で初めて単独行の人に出会った。(今山行でこのときだけ)

展望は良いが雲行きが怪しくなってきている。

大崩山にはガスが掛かり始めている。

 

鹿納山から大崩山へ

スズタケの中に

山頂から南に進むと絶壁に取り囲まれ、道を間違ったことに気付いた。

山頂から北に来た道を戻ると、この山頂部の岩壁を鹿納谷側に巻く道が分かれていた。

行きには気付かなかった。

巻き終えるとそこは権七小屋谷への分岐点だ。

さてこの辺りから道の様子が一変した。

大崩方面の道も権七小屋谷へも両方深い笹に覆われている。

最低鞍部から大崩山への登り

背丈を没する深い笹の中に踏み跡が続く。

次の小ピークで鹿納谷へのコースを分けるが道標は無い。

その先も全く視界が閉ざされ、ひたすら笹を漕ぐ。

日帰り装備なら大したことも無いだろうが、大きなザックでは引っ掛かり苦労する。

昔の鈴鹿山地の猛烈な笹薮漕ぎが思い浮かび何故だか懐かしい気もする。

ひょっとしたら大崩山手前まで続くのだろうか?

 

何だろうか?

もしそうだとしたら日暮れまでにテント場には着かないかも知れない。

しかし心配するまでも無かった。

1,457m峰の次のピークから左折して下降に転じると急に笹の勢力が衰えた。

鞍部に着く頃には完全に笹は枯れてしまった。

今度は殺風景な笹枯れの明るい尾根と変った。

笹枯れはどうも西日本では全体的に進んでいるのだろうか。

笹の枯れた小ピーク

歩き易いのはいいが自然界に悪い影響が無いか心配だ。

上鹿川コースを合わせると道は格段に良くなった。

また笹が出てきたが広く刈ってあり問題はない。

石塚からの道の分岐に着いた。

あたりはガスに包まれている。

ここに荷を置いて7分で大崩山山頂へ。

りんどうの丘でテント

ガスで展望は無いが、もともと樹林が邪魔して晴れていても展望はあまりよく無さそうだ。

特徴の無い山頂で少し休憩し元来た道を戻る。

 

大崩山からりんどうの丘へ

分岐でザックを背負い、濃くなったガスの中、道を進む。

モチダ谷コースの分岐は見逃して気付かなかった。

湧塚岩峰と木山内岳

1,571m峰辺りで湧塚コースを分ける。

そのまま真っ直ぐ尾根を進む。

この辺りは笹が元気だ。

やがて下りが続くようになると、りんどうの丘への分岐に着いた。

しっかりした道標がある。

ここを左折して斜面を巻き進む。

夕闇迫る小積ダキと桑原山

涸谷を1,2度渡り、平坦な道から少し登りになって沢を渡る。

水を汲んで対岸を少し登るとりんどうの丘だ。

昨日よりは早い時間に着いたがガスで何も見えないのが残念。

テントを張ってゆっくり過ごす。

1時間ほどしてガスが晴れ、向いに湧塚の威容が望まれた。

谷を隔てて木山内岳や桑原山も見え出した。小積ダキの威容も迫る。

岩壁からは垂直に谷に切れ落ちており、胸のすく展望。

夜、星が煌き、明日の天気が何とか持ってほしいと願う。

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【行程4日目】行動時間 4時間00 天気 雨とガス 

りんどうの丘7:35?(坊主尾根)?象岩基部トラバース8:10?9:50大崩山荘10:10?10:35大崩山登山口10:40?11:35祝子川温泉

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象岩基部をトラバース

りんどうの丘から坊主尾根を経て大崩山登山口へ

残念ながら夜明け前から雨の音がする。

明け方に掛けて次第に強まる。

テントから出てみると、深いガスに包まれ薄暗い。

ゆっくり朝飯を食べ、雨具を着てテント撤収。

幸い撤収時は雨が止んでくれた。

梯子、ロープの続く坊主尾根

変化ある坊主尾根コースは晴れた時に歩きたかったが仕方が無い。

昨日の分岐から下降するが、なかなか急な下降にならない。

ガスの中から前方に白っぽい大きな岩が現れるようになる。

小積ダキ分岐で戻るようにして右下に急下降する。

どんどん梯子やロープが出てきて面白い。

そして有名な象岩の基部をトラバース。

祝子川を渡る

その後、展望が無く惜しいが巨岩を乗越したり、隙間を抜けたり、垂直の梯子を辿ったり息つく暇が無い。

かなり高度を下げてもガスはとれない。

やがて傾斜が少し緩くなって二枚ダキへの林道への分岐点へ。

真っ直ぐ進み、しばらくは緩い尾根を進むが、また急下降になる。

左右から沢音がしてきて尾根を終え、下小積谷左岸の不明瞭な道を進む。

前方が明るく開けると祝子川を飛び石で渡る。

立派な大崩山荘

すぐに大崩山荘に着く。

相変わらずガスで、今日は下界までガスのようだ。

20分休憩し、出発。もう楽な道だと思っていたが意外にも歩きにくい。

大きな段差があったり、崩れた個所を巻いたりして登山口の車道に出た。

登山道入口には賑やかにいろんな案内看板が建っている。

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上祝子へ

大崩山登山口から祝子川温泉へ

雨が止んだので雨具を脱ぐ。

単調なアスファルト舗装の道を辿って行く。

僅かな家しかない集落を抜け、祝子川温泉に辿り着いた。

バス停はもっと下の集落だと思っていたら、温泉前にバス停がある。

平日の悪天で温泉はガラガラ。

上祝子温泉「美人の湯」

貸切状態で広い浴場でのんびり出来た。

3泊4日の山旅の汗を流し、充実感に浸る。

滋賀県西浅井町で林業をしていたという気さくな温泉の方と少し雑談。

 

バスで延岡駅経由帰路につく

13:15発の宮崎交通バスの乗客は自分だけ。

上祝子温泉バス亭

バスは平日のみの運行だ。

運転手から「この時間に乗る客は久し振り」だと教えてもらう。

少し前まではがけ崩れで途中折り返し運転だったとか。

よくがけ崩れがありそのたびに運休になるらしい。

大きなバスに乗客は自分だけ。

運転手には気の毒だが、祝子川の美しい風景を眺めながらローカルバスの旅は楽しい。

日豊本線 延岡駅

川の淀みには鮮やかな色をしたオシドリの群れがよく見かけられる。

こんなに多くのオシドリを見るのは初めてだ。

ここでは珍しくはないのだろうか。

山深い流れを辿る狭く曲がりくねった道が長く続く。

1時間以上かかり延岡駅へ。

乗客まばらな延岡駅から「にちりん16号」で帰路についた。

 

 

山行を振り返って

2日目の行程が思ったより捗らず、梯子、ロープによる小刻みなアップダウンが多くて歩調が狂い、体調維持に気を遣う。夏木山山頂に着く頃にはかなりバテ気味だった。
傾山の下降を終えた1,198m標高点あたりから1,088m峰までの間と、小鋸から夏木山手前までの間が距離の割には進まない。
祖母山?傾山?大崩山と縦走すれば九州で第一級の縦走になるだろう。
大崩山は天気が悪く残念だったが、次回来る機会があれば今回利用しなかったコースで巡ってみよう。
そうそう、三里河原には是非行ってみたい。

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