沢&ハイキング@北ア・高瀬川東沢から燕岳

二ノ沢に掛かる滝

以前、餓鬼岳、唐沢岳への山行は白沢登山口から入山し、東沢乗越から中房川沿いに一般道を下山した。
その東沢乗越へ、今回は反対側の高瀬川東沢を詰めて燕岳へと辿る計画とした。
入山、下山口間が離れているので、夜行バスと列車を利用して行くことにする。
松本駅からは運よくムーンライト信州81号に乗車でき、計画より早く信濃大町駅に着いた。

 

【行程1日目】行動時間 5時間00 天気 晴れ 夕方から曇り 夜中から晴れ

高瀬ダム7:00?7:55東沢取水堰堤(一ノ沢出合)8:20?8:45二ノ沢出合8:50?9:55標高1,680mの5m滝10:05?10:20標高1,730mの4m滝10:25?10:35二俣(東沢岳からの出合、1,760m地点)?11:35標高1,940mの7m滝11:40?12:00東沢乗越からの支流出合(標高2,040m地点)

?高瀬ダムから東沢取水堰堤(一ノ沢出合)へ

下流部の穏やかな流れ

茨城県からの単独行の方と相乗りし、タクシーで高瀬ダムへ。
なんと、タクシーの運転手Sさんは相当山に詳しい。
白馬方面の面白いマイナーなルートなど色々教えていただけた。
いつか実行しようと思いが募る。
今回の東沢も何度か入渓しているとのこと。
それにしても山をやるタクシー運転手とは初めての出会いで面白かった。
また機会があればどこかでお会いしたいものだ。

高瀬ダムに着くと青空が清々しい。
ここ数日は雷もなく安定しているとのことだ。
長いトンネルを抜け、ダム湖沿いの舗装道路を単調に歩く。
山葡萄の実がよく実っているがまだほとんどが青く秋はまだ先のよう。

1つ目の5m滝  左の水流の中を登る

東沢に架かる橋の少し手前で左の砂利の林道へと入る。
しばらく樹林の中を坦々と進むと、流れが見えてきた。
左岸に渡ってザクザクの砂地の林道を、勾配を増して登っていく。
高瀬ダムから1時間弱と意外に早く東沢取水堰堤に着いた。
背後を見ると烏帽子岳方面の稜線に雲が湧いている光景がいかにも夏山らしい。
そう今日は気温が高く、まだ秋の気配は遠い。

?東沢を遡行し東沢乗越からの支流出合へ

堰堤の前の広場で朝食。日陰で気持ちよい。
水は透き通っていて、カワガラスが獲物を狙って何度も水の中に突っ込んでいる。

2つ目の滝 一番形がいい

堰堤は林道の終点の先からそのまま左岸に道があり簡単に越す。
林を抜けて直ぐ一ノ沢出合。
ここから水の中を進む。冷たくて気分爽快。
広く明るい川原を緩く辿ること25分で右岸から二ノ沢が出合う。
この二ノ沢は本流出合の手前に10m程度の滝がある。
綺麗なエメラルド色の釜を持っている。
さらに本流を辿っていくがしばらくは単調。
ところどころ斜面がザレていて、崩壊したザレが水流まで達している個所もある。
広く伸びやかで明るい水流を辿るのは気分がいいが、時々両岸の木の枝が進路を邪魔する。
やがて両岸がザレているところに出た。

3つ目の滝 右側を登る

よく見るとその奥に滝が見えている。
遠くから眺めても何だか厄介そうだ。
両岸はとても巻けそうにない。
その滝の下まで来てじっくり観察する。
まず、両岸とも非常に脆い壁で触るとボロボロ崩壊する。
灰色かかった斜面だ。
この滝は5m位でそう高くはない。
水流の直ぐ左脇が何とか越えられそうだ。
意を決して岩に取り付く。
手でホールドを強く引くと簡単に落ちた。
何度もホールドを確認しながら2m程登ったら左足を置いていた岩が抜け落ちた。

滝上から烏帽子岳方面

体勢を崩しそうになったが踏ん張り、さらに登る。
今度は左手を掛けていた岩が剥れ落ちた。
緊張が高まり、冷静に!と何度も自分に言い聞かせる。
上まであと1m弱というところでホールドが水流の中にしか見当たらない。
登り始めてからずっと水を浴び続けていて体が相当冷えている。
冷たくて痺れる手を耐えてやっと滝の上に出た。
この滝が東沢で唯一厄介だった。
滝の上から下を眺め達成感が湧いてきた。
滝の上はいたって穏やかな平流。 
また穏やかな流れを楽しみながら辿っていく。
この沢はほとんど蛇行しておらずほぼ真っ直ぐ東沢乗越へと向っている。

標高2,030m左岸で泊まる

稜線の凹みが乗越だろうか、夏雲が湧いている。
木の緑、空の青、雲の白とコントラストが実に美しい。
10時10分、左岸からそこそこの水量の枝沢が分岐。
この分岐から本流はやや左に回る。
するとすぐに綺麗な滝が姿を現した。
ここは右岸の岩場の上部を巻くが易しい。
うまい具合に程よい距離をおいて潅木が生えており、いいホールドになっている。
この滝を越えると本流はやや右に曲がってまた同じ方角に戻る。
そこから10分弱で東沢岳から垂下する明確な二俣に着いた。
というよりか、そのすぐ手前にも左岸から支流が合わさり三俣の状態。
ここは真ん中の本流に進路を取る。

泊地より朝の唐沢岳

しばらく進むとやや両岸がザレで開けて明るい渓相になる。
地形図通り緩やかに登り詰めていくと、また滝が現れた。
この滝は大まかに2段に分かれている。
ホールドが多く、楽しくシャワークライムができて爽快だった。
右側の流れの中を登る。
今日は日差しが強いので、水を浴びて汗が引き心地いい。
さて、先ほどからテン場を探しながら歩いているがいい場所が見つからない。
まだ時間も早いので、このペースではそのまま登れば午後1時には乗越に行けそうだ。
しかし一般道で泊まるには面白くない。また一般道でのテントは禁止だ。

東沢乗越からの出合

その後、水量の減った本流を詰めて12時ちょうどに東沢乗越から下りてくる枝沢出合に着いた。
本流側はこの二俣からやや向きが右に振り、少し上部に滝を掛けているのが伺える。
テン場を探すため荷を置いて東沢乗越への枝沢を少し詰めてみると・・・・・。
・・・・・やはり両岸傾斜のある場所ばかりでテントはとても張る余地は無い。
二俣の少し手前の左岸にやっとひとりなら体が横たわれるスペースを見つける。
ちょっとした土木工事を行って土で均し、葉っぱを敷き詰めた
しかしすぐ下流側の斜面はザレ場となっており条件は良くない。
雨が降った場合の落石が怖いが、今日、明日と天気は良さそうなのでここに決める。

12時半、テントを張った。

東沢乗越への原生林をゆく

さて、沢の定番、焚き火。
よく乾いた木ですぐに火がつく。
時には沢の中、一人で焚き火をするのもいいものだ。
沢の下流側を眺めると、唐沢岳山頂部の白い岩が日光に映えており、美しい。
3時半頃からご飯を作り、お酒をちびちびとたしなめながら食べる。
おだやかな時間をボーと過ごすことは何と贅沢なことか。見渡すと全て山の中。
沢でのいつものありふれたことだがこれは何度繰り返しても楽しいものだ!
テントで寝てみると、思ったより寝心地は快適そのもの。
寒くも暑くもなく、風も無く、水の音だけの心地良さに明るいうちからいつの間にか眠ってしまった。
気付くと夜になっていた。
夜中12時頃一度目を覚ますと、外は月夜で明るかった。

?【行程2日目】行動時間 7時間00 天気 晴れ 午後時々ガス

テント地6:10?7:00東沢乗越7:10?8:10 2,723m峰8:20?8:55北燕岳9:00?9:10燕岳9:40?10:00燕山荘10:35?11:15合戦小屋11:25?13:10中房温泉

?東沢乗越へ

東沢乗越

5時5分起床し、朝飯の準備。
沢の下流側はよく晴れていて唐沢岳が今日も良く見える。
しかし登って行く側は厚い雲に覆われている。
水量が少ない枝沢を詰めていくが邪魔な枝などが無くすっきりしている。出合から標高差で50?60mほどで、流れはやや左に向きを変える。
左に向きが変わって少し行くと進行右側が浅く開けた斜面になっている。
水流は無いが方向から推測するとその方向が正しいので、右に進路を変更。
下草や藪も無く、見通しも効く。
どんどん詰めていくとやがて上部が明るくなってきた。
傾斜が落ち着いてくると、明らかに稜線状となった一角が見えてきた。

餓鬼岳と唐沢岳

最後は背の低い笹原になってほんの少し笹を漕ぐと登山道に出た。
一番低い地点だ。読図はぴったり当り満足。
いつもこう行けばいいのだが・・・・・。
東沢乗越の標識はほんの10m先で、道に出た場所から見えている。
テン場から50分で時間もほぼ推測どおり。
安曇野側からガスが流れていて、吹き上がる風が気持ち良い。
東沢乗越で少し休憩。

?東沢乗越から燕岳、燕山荘へ

?沢登りは終了。ここからはハイキングだ。
中房川沿いに中房温泉へと向う登山道を分け、樹林の尾根道をゆく。
少し紅葉が始まっているが、まだ夏の色が濃い。

槍、穂高、燕岳方面

標高差で200mくらい上がるとガスの外に出た。
背後を見ると餓鬼岳や唐沢岳が見える。
安曇野側は一面の雲海だ。
日差しが強く肌が焼けるが、日焼け止めを忘れた。
2,327m峰へ近づく頃には4回登山者とそれ違う。
「どこから?」と聞かれ「沢から」と答える。
皆、興味ありげで説明するのに時間が掛かる。
東沢乗越をまさしく東から雲が乗越して東沢へと流れ落ちている。
2,327m峰の北で本稜線に上がると、槍ヶ岳がぱっと視界に飛び込んだ。
西側は快晴で北アルプス中央の山々が見渡せて思わず歓声をあげてしまった。

岩、草地、空

2,327m峰の山頂に立ち寄ると、北に剱岳や針ノ木岳が格好いい。
7月に登った北鎌尾根も正面に見える。
ここから見る北鎌は真正面になり、尾根の凹凸も重なって分らず、いまいち冴えない。
進路を南に変えていよいよ稜線漫歩だ。
明るい花崗岩の登山道は風化した岩の形が面白く、変化があり楽しい道だ。
ここからはさらに何人かの登山者と行き交い、北燕岳山頂へ
景色を楽しむ。もう燕岳はすぐそこだが、山頂には大勢の登山者の姿が見える。
燕岳山頂は花崗岩で明るく展望雄大。30分余り展望を楽しむ。
今回の山行は静寂から喧騒、沢から尾根と変化に富んだものとなった。
大勢の登山者とそれ違って燕山荘のテラスへ。

岩に張り付くダケカンバ

暑さについビールを買ってしまう。
たまには大勢の登山者の中に混じってゆっくり過ごすのも面白いかと、真ん中のテーブルに陣取った。
歩いたコースを地形図に書き込んでいるとそれを見ていた何人かの人たちが尋ねられる。
出会った人たちと色々山の話をしていつもと違う雰囲気を大いに楽しめた。

?燕山荘から中房温泉へ下山

10時半過ぎ、下山開始。多くの登山者を追い越して颯爽と降りる。
・・・・・と言いたいが日差しの暑さに少々参り気味。

少し秋の気配・・・

幸い、下のほうはガスが掛かっている。
しかし降りるにしたがいガスも下がっているようでなかなかガスの中に入らない。
合戦小屋でも真ん中で休憩。
このコースは何度か歩いているがいつも人が多い。
黙々と下り中房温泉に辿り着いた。
登山道入口の直ぐ横の温泉でバスの時間までゆっくり温泉に浸かる。
14時過ぎのバスで帰路についた。松本から乗り継いだしなの20号は満員。20分遅れで名古屋に着いたが、自宅には計画書どおりぴったり着いて今回の山旅を終えた。

?東沢の遡行について

燕岳山頂より北燕岳への稜線

東沢は概ね穏やかな流れで、最初の滝だけはすこし登り難い。
東沢乗越からの支流の出合も本流が方向を変えているので分りやすい。
取水堰堤から東沢乗越まで5時間もあれば達するだろう。
滝は3箇所ある。
1つ目は標高1,680mあたり。高さは5m程。
両岸高く脆い壁で、巻くならかなりの高巻になりそう。
滝の水流の直ぐ左横を直登するが、岩がボロボロで非常に脆く、支点をしっかり確認する必要がある。水をいっぱい浴びるので長く留まると寒くてたまらない。
最後のホールドは水流の中に求めた。
2つ目は標高1,730mあたり。高さは4m程。
右岸の岩を巻きながら登るが適当な間隔で潅木があり、容易に越えられる。
3つ目は標高1,940mあたり。高さは7m程。

燕山荘より燕岳を眺める

傾斜はきつくなく、ホールドが豊富にあるので楽しく水を浴びながら登れる。
滝の水流のすぐ右が楽。
泊地については標高1,800mあたりから注意していたがあまり適した場所は見当たらなかった。
今回はひとり分にはちょうどいい場所があった。
水は標高2,100mで消える。東沢乗越まで標高差150m程度。
全体としては沢登りとして簡単なので燕岳や餓鬼岳への変則ルートとしては面白いだろう。

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