残雪期登山@奥美濃・笹ヶ峰、金草岳★
奥美濃に通い始めて25年ほど経過するが、今回は初めて山中停滞を見込んでの出発となる。というのも3連休の真ん中に前線が通過し、山海とも大荒れの予想だが、その前後はまずまずの予報のためだ。
安全を期して高倉峠南方の尾根の凹地を地形図でチェックしておいた。
ここで前線をやり過ごし、そこから笹ヶ峰を初日に、金草岳を3日目にそれぞれ往復するという計画を立てた。
【行程1日目】行動時間 10時間00分 天気 晴れのち曇りと強風、夜雷雨と強風
瀬戸集落7:10→8:15沢(標高320m地点)8:30→ 735m標高点10:15→11:05高倉峠
11:15→11:45テント地(高倉峠の約600m南、標高1,000mの県境凹地)
テント地12:15→1,169m峰14:10→15:00笹ヶ峰15:10→1,169m峰15:45→17:10テント地
野洲駅を22時に集合し、予定通り瀬戸集落に夜中の0時半着。集落のはずれでテントを張り仮眠。普段の山行よりも長い5時間の睡眠時間を確保することが出来た。
集落のすぐ先から林道は残雪で埋まり車は入れない。植林主体の単調な林道を進む。45分ほどで地形図にある破線路の分岐に来るが、川が渡れない。少し戻り緑色の鉄製の細い橋で右岸に渡って、石垣作りの堰堤の上で丸木橋が渡してあるところがあり、ここから左岸の斜面を這い上がって尾根に出ることにする。
尾根は登るに従い広がる。道形は分からない。潅木を掴んでの急登をこなすと、一旦左が植林になった平坦地に出る。この後尾根がややはっきりしてきて、道形も次第に分かり易くなってくる。ここまでほとんど雪が無い。
735m標高点で右からの支尾根を合わせ、ここからは概ね残雪の上の歩行となる。
高倉峠に近づくほど尾根は広まり、快適な雪上の登りとなる。出発から4時間で車道が残雪に埋まった高倉峠に着いた。
風は強いが、気温が高いので寒さはたいしたことは無い。
高倉峠からは東に釈迦嶺の大きな山体が見える。コブを1つ越え、その先の1,000mの等高線が複雑に閉塞している南側の凹地に40分で到着。ここは予想通り風が当たらなく泊るは快適そうだ。ここでテントを張り、不要な荷物をデポする。
さて、風は相当強いが夕方までは天気は持ちそうなので笹ヶ峰に向け出発。生暖かい強風にこれからの天気の悪化が予想される。晴れているが所々黒い雲が流れている。
幾度となく細かなアップダウンを繰り返す。途中2ヶ所は笹薮が出ていたが僅か5m程度で進行には全く問題ない。1,169m峰まで2時間を要した。
ここでK山さんが足の付け根のところが少し痛むらしく、K山さんを残し、H内、Y本さんで笹ヶ峰へ往復する。
1,169m峰からは100m下り、200m登り返しだ。疲れているが100m下った勢いでそのまま200mを頑張ってだだっ広い笹ヶ峰山頂へ。南からの踏み跡が複数付いている。
さすが笹ヶ峰からの展望は雄大で、金草岳、千回沢山、美濃俣丸などぐるりと奥美濃の山々が見渡せる。しかし風が強く長居は出来ない。
帰りは200mをあっという間に下る。東に赤谷の流域が広く眺められ、いつか遡行したい沢のひとつだ。
1,169m峰でK山さんと合流し、17時過ぎテントに戻る。
今日は計画通り進んだがK山さん、Y本さんも10時間余りの行動に少々疲れ気味の様子。広い風景を楽しめたし、久し振りの泊まり山行にみんな満足できた。
今回の食事担当は全部Y本さんだ。フキノトウの香りがいい肉団子汁やら、野菜たっぷりの料理にお酒で楽しく過ごす。夜8時過ぎ就寝。
夜になって風はさらに唸りを挙げて荒れ狂う様相となり、やがて激しい雷雨がやって来た。その後、夜10時過ぎにはいつの間にか吹雪に変わっていた。前線が通過したらしい。風の音はすごいが、このテント地は別天地で風は殆ど当たらないので快適だ。ラジオからは「今庄で3月としては記録的な雨量を記録した」と聞こえている。
【行程2日目】行動時間 なし(停滞) 天気 雪と強風、ガス
今日は一日停滞日となった。Y本さんにとっては初めての経験とのこと。
「うまく行けば登れるかも」という淡い期待は当然見事に裏切られ、朝から強風、ガス、吹雪と全く行動できる状況に無い。
もともと停滞と決め込んでいたので、遅めに8時頃朝食を食べる。「暇で暇で仕方ない」と思っている人もいたが、先の山の計画の話や、登山地図を見てのあれこれや、私の奥美濃談義や町や芸能人(私には分からないが)の話題やら山岳会の話しその他いろんな雑談をする。停滞を見込んで他の山域の登山地図や本などもいっぱい持ってきている。
また、気が向いたらいつでも飲み物を作ったり、合間に居眠りしたりで意外とあっという間に時間が過ぎ去っていった。夜はY本さんご自慢の美味しい柳川鍋をみんなでつつく。
外は1日雪が降り続き、時々テントを揺らして積もった雪を落とすのが唯一の仕事だ。
明日に期待し夜8時就寝。この頃風はかなり収まっているが雪は降り続いている。
【行程3日目】行動時間 8時間45分 天気 快晴のち時々曇り
テント地6:05→6:35高倉峠6:50→8:00 1,056m西方の峰8:15→9:35金草岳10:00→12:00高倉峠12:20→14:50瀬戸集落
前夜10時にテントの外に出るといつの間にか満点の星空だ。
今朝は快晴の空となった。新雪が20cm程積もっていて真っ白な稜線の木々には樹氷がびっしり。黄砂で黄ばんだ雪面も真っ白に覆い隠されている。歩くとワカンが要るほどには沈まない。快適な一日が始まることが約束されたようで皆嬉しそうだ。
テントを撤収し、朝の赤く染まった斜光を浴びて30分で高倉峠へ。途中緩やかな尾根の大きなブナの樹氷の美しさに見とれる。能郷白山まで奥美濃の山々が美しい。
峠で不要な荷物を残置し、いよいよ金草岳への稜線に入る。10m程笹薮を漕いで尾根の芯に出ると、そこからは広い雪面がずっと緩やかにうねりながら続いている。
綺麗な雪面に我々だけの踏み跡を付けていくのはいつもながら楽しい。1,143m峰の北からは今から向う金草岳が大きく望め、手前のブナ林の台地越しに美しい風景を作り出している。
1,143m峰の先の鞍部からの広い登りでは、斜面のブナ林の樹氷が特に美しい。
1,056m標高点のすぐ東のピークで休憩。笹ヶ峰が南に大きく、釈迦嶺を手前に雄大な風景だ。
今日は爽やかな風が少し吹くだけで日差しが暖かく快適そのもの。
少し尾根が痩せ、時々吹き溜まりを崩しながら前進し、金草岳の西肩への急登の地点に着く。Y本さんはスリップに心配していたが、見た目ほど急ではなく、笹薮や露岩を東側に避けながら慎重に登る。
稜線直下は雪面がクラストしているので、K山さん、Y本さんには笹薮側に迂回してもらう。
少し東進して広い山頂に着く。風は穏やかで、能郷白山、白山本峰、荒島岳、部子山、徳山ダム湖など雄大な展望に感動。
山頂へは他からの踏み跡もない。1日停滞した価値が十分にあった。
帰路は風景を堪能しながら稜線満歩だ。K山さん、Y本さんに遅れをとりながら、樹氷や風景写真を楽しむ。
峠で再び重い荷を担ぎ、下る。途中尾根が広い箇所はH内が進路をよく確認しながら進行し、難なく沢に降り着く。この少し下部からは単調な林道を歩き、瀬戸集落へ戻った。Y本さんは先行してフキノトウを摘んでいる。収穫には目がなく全く元気だ。
山行中日の一日を停滞と決めた変則な山行だったが、展望に恵まれ、奥美濃の山々の雰囲気を十分堪能できたい良い山行のひとつとなった。